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カンヌ映画祭開幕!ロシア映画の扱いは?ゼレンスキー大統領の中継と審査員会見【カンヌ映画祭レポート】

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ライター:#まつかわゆま
カンヌ映画祭開幕!ロシア映画の扱いは?ゼレンスキー大統領の中継と審査員会見【カンヌ映画祭レポート】

コロナ禍、3年ぶりの5月開催

第75回のカンヌ国際映画祭が始まった。

covit19を乗り越え、というよりスルーして、3年ぶりの5月開催に持ち込んだはいいが、そこに起こったのがロシアによるウクライナへの侵攻である。

元々、ファシズム陣営のプロパガンダの場として始まったヴェネチア映画祭に対抗するために生まれたのがカンヌ映画祭だ。21世紀に入ってまもなく「映画は社会にコミットすべき」というアニエス・ヴァルダの提言から社会の動きを反映し直すようになったこともあり、どのようにこの世界を写し取り、立場を表明するのかが今年の映画祭のテーマのひとつになるのではないかと考えていた。それと関係あるのかどうかはわからないが、上映劇場のひとつの名前が“アニエス・ヴァルダ劇場”に名前を変えていた。

戦争に焦点

ゼレンスキー大統領の中継、ごく一部がスタンディングオベーション

しかし、まさか開会式に、戦争中のウクライナからゼレンスキー大統領自身が中継で登場するとは思わなかった。

アカデミー賞に登場するかもと言われたが実現せず黙祷を呼びかけただけに終わった試みが、カンヌ国際映画祭で実現した(グラミー賞には中継で登場したが)のである。

開会式の最後、リュミエール劇場の大画面に映し出されたゼレンスキー大統領は、元俳優らしく、チャップリンの『独裁者』やコッポラの『地獄の黙示録』を引きながら「映画の力を自由の側に」と訴えた。

ドレスアップした満員の映画祭参加者たちは最初こそ動揺をみせたものの、静かに5分以上続く演説に聞き入った。会場を写すカメラはその人々の表情を映し出す。ブーイングのひとつも起こるかと思ったのだがそれはなく、といってスタンディングオーベーションもごく一部、立とうかどうしようかと迷う女性の姿も映し出されていた。

今回のウクライナとロシアの「戦争」は情報戦だと言われているが、その演出力はゼレンスキー大統領の圧勝、ではないか。

ロシア映画の扱いは? 総代表ティエリー・フレモー

ティエリー・フレモー

そこで思い出したのが、初日前日の総代表ティエリー・フレモーの会見。そこでフレモーは、2月のウクライナ侵攻にさいしてカンヌが発表した「ロシア政府の代表やロシアを代表してのゲストの受け入れはしない」という声明を確認。「ロシアを支持しているインドの作品を受け入れるのか」という質問には、「国がロシアを支持しているからといってインド作品を拒否することはしない」ともコメントした。

今年のコンペティション部門にはロシア人監督キリル・セレブレンニコフの新作が入っている。ロシア人がみんなウクライナ侵攻を支持しているわけではなく、危険を冒してでも反戦を訴えたり、帰れなくなることを覚悟して国を出たりする人もいて、そういう人の側に映画祭は立ちたいと、反プーチンを掲げ睨まれて、とうとう国外に出たセレブレンニコフ監督を擁護した。

審査員長ヴァンサン・ランドン「映画は人間を描くもの」

審査員長ヴァンサン・ランドン

また、初日恒例の審査員による記者会見でも、審査員長のフランス人俳優ヴァンサン・ランドンを始めとする複数の審査員が口にしたのが「映画は人間を描くもの。人間の感情を伝えるもの」という意の言葉だった。

名誉パルムドール賞受賞フォレスト・ウィテカー、紛争地の若者たちを描く

名誉パルムドール賞受賞フォレスト・ウィテカー

名誉パルムドール賞を受賞したフォレスト・ウィテカーが行っている、紛争地の若者たちを「ピースメイカー」として教育する活動を描くドキュメンタリーが上映され、マリウポリで撮影中にロシア軍によって殺された監督の遺作も上映されることになっている今年のカンヌ。戦争関連の作品がドキュメンタリーも劇映画も多くなりそうだ。

けれど、「映画は人間を描く」と審査員たちが繰り返したその真意は、人間の、個人の視点で描けば、戦争は悲劇でしかなく、痛く悲しいものでしかないということを描くことになるのだ、ということではなかろうか。

フランスのリメイク『キャメラを止めるな!』上映

『キャメラを止めるな!』© 2021 – GETAWAY FILMS – LA CLASSE AMERICAINE – SK GLOBAL ENTERTAINMENT – FRANCE 2 CINÉMA – GAGA CORPORATION

そんなことをつらつら考えながら開会式を見ていたわけだが、その後に上映されたのは『キャメラを止めるな!』(原題『ファイナル・カット!』)。『カメラを止めるな!』のフランス・リメイクなのである。この振り幅の大きいこと。ちょっと首をかしげてしまった初日の夜であった。

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