ジェニロペ入魂のロマコメ
祝・リアル『マリー・ミー』! 先頃、ベン・アフレックとの20年ぶり2度目の婚約を発表したジェニファー・ロペス。彼女の主演最新作『マリー・ミー』は、ジェニファー自身を思わせる大スター、キャットが、赤の他人である数学教師チャーリー(オーウェン・ウィルソン)といきなり結婚をするというハッピーな王道のロマンティック・コメディで、ジェニファー自ら製作を手掛けた思い入れたっぷりな作品だ。
アメリカでのプレミアにはベンと二人で登場し、バレンタインデー映画として大ヒット。その幸せオーラはオンライン取材でも十分に伝わってきた。
「主人公と自分が近いからこそ、内面の痛みをさらけ出すのが難しかった」
―キャットは音楽界のスーパースターです。なぜ彼女はいきなり、見知らぬ人と結婚してしまうのでしょうか?
キャットはベテランのアーティストで、音楽業界でのキャリアにはとても自信を持っています。ところが彼女のパーソナル・ライフは正反対。でも、オーウェン・ウィルソンが演じるチャーリーが彼女の人生に現れたことで、大きく変わる。それは人生が永遠に変わるような出会いであり、彼女の価値観も変えてしまう。とても美しい旅が始まるんです。
それまでの彼女はセレブではあるけれど、出口を見失った状態で、どうしたら幸せになれるのかわからずにいた。キャットが求める幸せとは、愛する人と暮らすこと。とても普通のことだったのだけれど、もう手に入らないと思っていたんです。でも、オーウェン演じるチャーリーは「それは可能だよ」と教えてくれる。キャットが今まで手にしたことのない真実の愛を、そして本当の“ホーム“を持つことはできるんだ、って。
―キャットとあなた自身のキャラクターは近いのでしょうか?
かなり重なっていて、分けるのが難しいほど。キャットを演じるためのリサーチは必要ありませんでした。人気アーティストで、ブランディングをして……というのは、ぜんぶ経験済みだから(笑)。一方で近いからこそ難しかったのは、自分の内面の痛みをさらけ出すこと。つまり、この映画みたいに世界中が見ている前で失恋をして、傷ついた時、私がベッドルームで何を考えているのか。メディアに攻撃され、笑いものにされている時、どんなふうに感じているのか。そこをリアルに表現したかった。チャーリーに「ぜんぶ捨ててしまえば?」と言われても、彼女には哲学があるからそれはできないんです。キャットの気持ちはよくわかるから、実感を持って演じました。
「(劇中歌は)私自身の人生をも表すような歌」
―あなたはマルチな才能の持ち主ですが、何かできないことはあるんですか?
もちろん、たくさんあります(笑)。挙げたらキリがないほど。でもラッキーだと思うのは、自分がやりたいことを実現できたこと。今、キャリアで一番良い時点にいると思います。自分の持つ能力を見抜き、自信を持ち、そこに邁進する。若いころはもっと危なっかしかったし、手探り状態でした。でも今は、はっきり自分というものがわかっているし、自分が信頼できる。そういう地点に立っているって素晴らしいと思いますね。ただ何が苦手かといえば、バスケなんかの球技は全然ダメ(笑)。
―音楽についても教えてください。あなた自身、アーティストでもありますが、映画とアルバムを同時に作ったのは初めてですよね?
映画と音楽という、私がやってきた2つの世界が一緒になるなんて、心から嬉しく感じています。どの曲をどういう場面で使うかを任せてもらえたので、キャットの心情のカーブに合わせて選んでいきました。歌手であるキャットの気持ちを、私以上に理解できる人はいないはずだから。それに加えて、婚約者のバスティアンを演じたマルーマが、彼の心情を表す曲を作ってくれました。彼は素晴らしい仕事をしてくれましたね。破局した後で「セカンドチャンスをくれ」と歌うところは、特に。
もちろん、私が歌う「オン・マイ・ウェイ」や「マリー・ミー」も、みんなキャラクターの気持ちをとてもよく表しています。特に、あらゆる失敗が今の素晴らしい人生へ導いてくれた……と歌う「オン・マイ・ウェイ」は、私自身の人生をも表すような歌になっています。
「私とパートナーの二人だけで静かに過ごすのが理想」
―『ウェディング・プランナー』(2001年)をはじめロマンティック・コメディへの出演が多いですが、このジャンルに思い入れがありますか?
とっても! 映画ファンとして、昔からロマンティック・コメディが大好きで、それで育ってきたようなものです。私の最愛の映画の一つである『恋人たちの予感』(1989年)をはじめ、『キスへのプレリュード』(1992年)など一連のメグ・ライアン作品や、あの時代のロマコメが大好き。ジュリア・ロバーツの映画もね。ひさしぶりにロマコメに出演できて、まるで実家に帰ってきたような気分です。
でも、実はこの後もう一本ロマコメ(『ショットガン・ウェディング(原題)』)があって、もっと出たいと思っています。ただこのジャンルで難しいのは、毎回、何か新しいアイデアを発明しないといけないところ。最後には結ばれることがわかっている二人の、そこに至る過程をいかに面白くできるか、それが勝負なんです。お互いにどう惹かれ合い、相互作用が生まれるか……。その点がよくできている作品を、今後もぜひやりたいですね。
―この作品は最高のバレンタインデー映画といえますが、あなたの理想のバレンタインデーの過ごし方は?
私とパートナーの二人だけで静かに過ごすのが理想です。誰かに見られてるかも? なんて心配する必要のない、パパラッチのいない場所で、人生と愛について語り合いたい。二人で一緒にいられること、愛し合っていることがどれほど素晴らしいか、って。
……2000年代はじめ、ジェニファーとベン・アフレックのカップルは“ベニファー“と呼ばれ(“ブランジェリーナ”より先だ)、大衆に支持されていた一方で、パパラッチの格好の餌食となった。メディアは彼らを、特にジェニファーを揶揄することが多かった。“プエルトリコ系のラティーナであるJ.Loが、有望な白人男性を堕落させた”というような人種差別、女性差別に基づく誘導が、メディアによってなされていたのだ。
また、本作には「ラテン系はラテン系同士の方が良い」というバスティアンのセリフがあるが、これはおそらくジェニファー自身が散々言われてきたことなのだろう。ロマンティックな中にも、彼女が味わった苦労を感じさせるシーンが多々ある。それに負けず、52歳でキャリアの絶頂期を迎えたJ.Loのなんとかっこいいこと!
この映画が愛されると共に、今度こそジェニファーとベンの幸せが長く続くよう心から祈っている。
取材・文:石津文子
『マリー・ミー』は2022年4月22日(金)より全国公開
『マリー・ミー』
世界的歌姫のキャットは、新曲「マリー・ミー」を携え、大観衆の前で音楽界の超新星バスティアンと華々しく結婚式を挙げる予定だった。しかしショーの直前、婚約者バスティアンの浮気がスクープされ、失意のままステージに登壇したキャットは、観客の男性に突然プロポーズするという驚きの行動に出る。新たなお相手は、バツイチで娘のいる数学教師とあって、前代未聞のギャップ婚に周囲は大混乱となるのだった……。
監督:カット・コイロ
脚本:ジョン・ロジャース タミー・セイガー ハーパー・ディル
出演:ジェニファー・ロペス オーウェン・ウィルソン
マルーマ ジョン・ブラッドリー
サラ・シルヴァーマン
制作年: | 2022 |
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2022年4月22日(金)より全国公開