中村悠一がマーベル映画の新ヴィランに!
いよいよ2022年4月1日(金)より公開の『モービウス』。マーベルが誇るダークなヴィランをジャレッド・レトがどう演じるか楽しみですが、もう一つ注目したいのは日本語吹替版。今回モービウスの声を担当するのは中村悠一さんです。
最近ではアニメ『呪術廻戦』(2020年~)の五条悟役などで知られる大人気の声優さんですが、アメコミ映画ファンにとってはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース役で有名です。その中村さんが今度はモービウスを演じる! ということでアメコミ映画界隈は大騒ぎ。さっそくインタビューしてきました。
『モービウス』最終予告編!!!!解禁です!
— アメコミ映画最新情報 杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか) (@supisupisupi) February 28, 2022
4月1日(金)全国の映画館で公開 https://t.co/8Bn7ULsF6t @YouTube pic.twitter.com/WP63sPW82z
「彼の抱える“闇”を感じさせたかった」
杉山すぴ豊(以下、すぴ):僕にとっては中村さん=キャプテン・アメリカだったので、モービウス役はちょっと驚きました。
中村悠一(以下、中村):どっちも血清を打ってムキムキになるところは一緒ですが(笑)、かたやヒーロー、かたやヴィランですからね。
すぴ:おっしゃる通りモービウスはヴィランですが、どういう風に演じられたのですか?
中村:モービウスの場合、いわゆるヴィランらしいヴィランではないですよね。だから“いかにも悪人です”みたいには演じない。けれど、この作品の持つダークな雰囲気は大事にしたい。なので主人公のセリフに“さわやかさ”を入れないようにしました。
すぴ:“さわやかさ”を禁じ手にした?
中村:実はジャレッド・レトの声って基本おだやかなんです。だからレトの声に寄せてしまうと優しい感じになってしまう。とにかくモービウスというキャラが持っている“暗さ”を感じさせよう、と。例えば物語の序盤に子どもの治療をするシーンがあるんですが、ここでもただの優しいお医者さんではなく、少し彼の抱える闇を感じさせようとしました。特に、出だしのキャラの印象がすごく大切なので。
そういう意味で今回は、かなり緻密な作業でした。彼は基本“人を助けたい”という善の人ですし、恋人や子ども、親友に優しさを見せる。でも、モンスターでもある。そういったニュアンスというか、バランスをいつも考えながらお芝居しました。
すぴ:相当な時間をかけて収録されたのではないですか?
中村:そうですね。あと、この作品は一旦出来上がったものに声をあてた後に、何度か追加の収録作業があったんです。だから僕は、一つの作品が出来上がっていくプロセスにずっと立ち会っていた感じでした。多分、日本で一番『モービウス』の素材を観た人だと思います(笑)。でも、どんどん良くなっていくんですよね。話がすごく分かりやすくなってドラマチックになったり。
「本当に今後ヴェノムやスパイダーマンと共演できるんだろうか?(笑)」
すぴ:そうか、ずっと『モービウス』と付き合っていたんですね。一方で中村さんは『呪術廻戦』等のアニメもやられています。若干素人質問ですが、洋画の吹替とアニメというのは、演技をされる上でどういう違いがあるのですか?
中村:要は人間か絵か、ということですね。声優は絵に足りないものを補っていかないといけません。例えば“真顔で口だけパクパクしている”という絵があった時に、口の動きだけでは、このキャラが怒っているのか喜んでいるのか喜怒哀楽は伝わらない。したがって、声優が声を与えることで感情を表現していく。絵に表情がないぶん、お芝居を“盛る”必要があります。一方、洋画の吹き替えは他の役者さんの演技に日本語のセリフを乗せていく必要がある。とはいえ、先ほどジャレッド・レトの声についてお話した通り、その人の声をただ単になぞるだけということではないんです。
すぴ:なるほど。アニメと実写の違いについてもう一つお伺いしたいのですが、中村さんは多くの日本のマンガ原作のアニメで声優をされて、実写の方ではアメコミ原作映画のキャラを演じています。日米2つのマンガ・コンテンツに関わっているわけですが、両者の違いについて、なにかお感じになりますか?
中村:アメコミというのは、いまの政治や世相というものを盛り込んでいる気がしますね。例えば人権問題とか社会の分断とか、そういった現実の問題に対し、この作品で一つの答えを示す、というようなメッセージ性を感じることがあります。キャプテン・アメリカみたいなヒーローを演じていたから、なおさらそう感じるかもしれませんね。
すぴ:ではモービウスというキャラは、演じていてどういうことを感じましたか?
中村:僕はこのキャラの持つ人間くささ、そして大人であるということが非常に魅力的だと思いました。
すぴ:大人である、とは?
中村:例えばスパイダーマンはあの力を手にした時に、それを使って“みんなを助けなきゃ”的にがんばる。要は力を授かったからにはヒーローにならなきゃ、とはりきるわけです。それは立派かもしれないですが、ある意味“なんでもできる”的な子どもっぽさもありますよね。モービウスはその点、大人です。彼は自分の使命はあくまで医療であり、医者として人を救うことが自分のすべきことだとわきまえています。力を得たからといってヒーローになるとか、逆に悪用してやろうとは思わない。彼のテリトリーは非常にミニマムです。そういうところがすごくリアルだし、また共感してしまいますね。
すぴ:でも、この先モービウスは映画の中でヴェノムやスパイダーマンとの戦いに巻き込まれていくかもしれませんよ。
中村:どのキャラも個性が強いし毛色が違うから、本当に共演できるんだろうか?(笑)。吹替でヴェノムを演じているのは諏訪部(順一)さんですし、スパイダーマンを演じているのは榎木(淳弥)さんですから、共演が楽しみではありますね。
すぴ:僕も皆さんの共演が楽しみです! では最後に、『モービウス』吹替版を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
中村:今回はアクションが目まぐるしいので、字幕を気にせず、そこに集中したい方はぜひ日本語吹替版でお楽しみください。また字幕では伝わりきれない情報や感情のニュアンスみたいなものも、吹替版の方がより分かりやすくなっています。あ、でも字幕版も素晴らしい……つまり両方観てくださいね(笑)。
すぴ:(笑)どうもありがとうございました!
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)も『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)も日本語吹替版が素晴らしかったので、『モービウス』も期待していたのですが、あの中村さんが主人公役と聞いたとき、さらに興奮した覚えがあります。そして念願のご本人へのインタビュー。本当に楽しい時間であり、中村さんが主人公をどう演じていたかを聞くことで、改めてモービウスというキャラの魅力や物語の深みが理解できました。字幕派の人も、ぜひ日本語吹替版の『モービウス』をお楽しみください!
取材・文:杉山すぴ豊
『モービウス』は2022年4月1日(金)より全国公開
『モービウス』
天才医師マイケル・モービウス。彼は幼いころから血液の難病を患っていた。同じ病に苦しみ、同じ病棟で兄弟のように育った親友のマイロ(マット・スミス)の為にも、一日も早く、治療法を見つけ出したいという強い思いからマイケルは実験的な治療を自らに施す。それはコウモリの血清を投与するという危険すぎる治療法だった。彼の身体は激変する――
全身から力がみなぎり隆起した筋肉で覆われ、超人的なスピードと飛行能力、さらには周囲の状況を瞬時に感知するレーダー能力を手にする。しかし、その代償として、抑えきれない“血への渇望”。まるで血に飢えたコウモリのように。
自らをコントロールする為に人工血液を飲み、薄れゆく<人間>としての意識を保つマイケルの前に、生きる為にその血清を投与してほしいとマイロが現れる。懇願するマイロを「危険すぎる、人間ではいられなくなる」と拒み続ける、マイケル。しかし、NYの街では、次々と全身の血が抜かれた殺人事件が頻発する――
監督:ダニエル・エスピノーサ
脚本:マット・サザマ バーク・シャープレス
出演:ジャレッド・レトー
マット・スミス アドリア・アルホナ
ジャレッド・ハリス アル・マドリガル
タイリース・ギブソン
制作年: | 2021 |
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2022年4月1日(金)より全国公開