私は今では映画紹介の仕事が多くなっているが、最初はアニメのメカデザインをやっていた。その流れから特撮のメカデザインもいくつか手掛けるようになり、平成VSゴジラ・シリーズにも『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)から参加した。
しかし『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)のあと、川北監督とちょっとした行き違いがあって疎遠になり、デザインの依頼が来なくなってしまった。その後、監督とは再会して以前のお付き合いに戻ることができたのだが、ゴジラ関係の仕事はそのへんで一旦終了してしまった。
だから『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)の二本は完全に観客の立場で鑑賞することになった。手塚昌明監督とは『VSメカゴジラ』のリハーサルで、高嶋政宏が乗ったガルーダを浮かび上がらせるため一緒にワイヤーを引っ張った仲だし、同じガンマニアなので可能だったら何かお手伝いしたかった。監督も一応連絡を取ろうと考えたらしいことを後から伺ったのだが、とにかくこの時は御縁がなかったようで純粋な観客として鑑賞した。
『ゴジラ×メカゴジラ』手塚昌明監督らしいマニアックなディテール
『ゴジラ×メカゴジラ』は手塚監督のマニアックさが炸裂しており、初代ゴジラの設定を継承しつつ明らかに『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年ほか)を意識した設定が面白かった。
メカゴジラの必殺兵器アブソリュートゼロも、往年の『海底軍艦』(1963年)の冷戦砲を意識したものであろうことはマニアならすぐに分かった。以前からマニアの間では“ゴジラ 対 海底軍艦”というコンセプトが口の端にのぼることがあったので、それを自然な形で実現したのだろう。
「VSシリーズ」のメカゴジラと異なり単独では飛行能力を持たず、専用輸送機である“しらさぎ”が吊り下げて移動するという設定も、手塚監督らしいリアリティだと思った。『マジンガーZ』(1973年ほか)以降、搭乗者が操縦することの多い日本の巨大ロボットだが、操縦は基本的には遠隔操作という<機龍>の設定もリアリティ重視に見えるし、更には、もしかするとクライマックスでは……? という期待も抱かせる。
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特生自衛隊という組織の設定も『ゴジラVSビオランテ』(1989年)の特殊戦略作戦室のリアルな発展型のようだし、メーサー光線車のデザインのリニューアルも理にかなったものだ。このメーサー車が移動する際、警備にあたっている自衛官が国産の9ミリ機関けん銃で武装しているあたりに手塚監督のガンマニアぶりが発揮されている。
銃器プロップ制作に携わった『ゴジラ FINAL WARS』
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』は『ゴジラ×メカゴジラ』の完全な続編だが、主役が機龍のパイロットから整備員になっているのが新機軸。また、本作は昭和36年(1961年)の『モスラ』の続編にもなっていて、生物学者の中条を昔と同じ小泉博が演じているのがオールドファンには嬉しい。さすがに小美人はザ・ピーナッツではないが、いまや押しも押されぬ大女優の風格を備えるにいたった長澤まさみが演じているのも本作の見所だ。
『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)の時もデザインの仕事には関わらなかったが、実はちょっとおもしろい形で参加した。この作品ではミュータント部隊、X星人ともにオリジナルの銃器を使うのだが、地球防衛軍とミュータント部隊の拳銃の小道具の製作を手伝うことになったのだ。これらの小道具は映画用の銃器製作の老舗である戸井田工業さんが担当していたのだが、作らなくてはならない銃が多くて手伝いがほしいという話がガンマニアの知人から回ってきた。そこで市販のトイガンを改造するという形で、私が2種類の銃を作ることになったのだ。
メインはミュータント部隊が使うスミス&ウェッソン・リボルバータイプの拳銃で、もう一種類グロック17をベースにしたオートマチックも製作した。
これらはトイガン自体の発火機構は使用せず、エアガンの内部にロータリースイッチを入れ、電池で銃身の中に装填した爆竹状の火薬を発火させる日本映画界伝統のシステムだった。真鍮の銃身は金属加工を本業とする戸井田さんが作ったもの。ロータリースイッチも用意してもらったが、これは秋葉原でも手に入るものだった。電池は通常の乾電池で火薬は映画用火薬専門の電気雷管付きのもの。こちらは火薬でのテストは行わずソケットに豆電球をつないで回路をチェックする仕組みだ。
外装部分はABS板と塩ビやアクリルのパイプを使って加工する。内部システムを組み込むのは比較的簡単だったが、リボルバーの強度を維持するのが難しく、現場で壊れてしまってスタッフにご迷惑をかけてしまったとあとで伺った。マニアはディテールのみに注目することが多いが、映画の小道具は何よりも強度と確実性が重要だということを痛感する経験だった。
「東宝チャンピオンまつり」系作品への憧憬
『FINAL WARS』は音楽をキース・エマーソンが担当したり、タイトルデザインをカイル・クーパーが手掛けるなど、それまでのゴジラ映画とはかなり雰囲気が異なり否定するファンも少なくなかった。
しかし、あらためて感心するのはちゃんと北村龍平映画になっていたということだ。彼のファンでまだ本作を見ていない人はぜひ見てほしい。坂口拓、松本実、魚谷佳苗といった北村映画ではおなじみの顔が勢揃いし気分を盛り上げてくれる。UFOに乗り込んでから展開される肉弾アクションはいかにも北村作品だ。しかも、主人公・尾崎(松岡昌宏)とX星人の統制官(北村一輝)の戦いはゴジラとモンスターXの戦いとシンクロしていて、しばしば言われる怪獣映画のクライマックスで人間側が取り残されてしまう問題をうまく回避していると思う。そしてX星人との銃撃戦では、宝田明の「これでも昔は百発百中と言われた男だ」というオールドファンも考慮した台詞が入る。
GODZILLA: FINAL WARS (2004) director Ryuhei Kitamura will be interviewed about his work on the #Godzilla film that served as the finale to the Millennium era! It all happens at the free online convention Kaiju Masterclass (@Kaiju_MC https://t.co/GFap65IFOA) next week! 11/5 - 11/7 pic.twitter.com/Eb3tmGM8rO
— Kaiju News Outlet (@KaijuNewsOutlet) October 29, 2021
私が以前から気になっていたのはロングヘアの女性ミュータント部隊隊員。オープニングのガンカタ? シーンでもやけに目についていた。調べると、この方は菊地由美さんという女優さんだった。劇場版『スカイハイ』(2003年)にも出ていた方で、ゲームクリエイターの小島秀夫氏関係の仕事もされているという。なるほど、この辺の関係が轟天号やエクレールといった空中戦艦のデザインを新川洋司氏が担当するきっかけになったのかもしれないなと妙に納得してしまった。果たして実際はどうなんでしょう?
総じて『ゴジラ FINAL WARS』は昭和の円谷特撮への思い入れの強い機龍二作(『×メカゴジラ』『東京SOS)と異なり、同じ昭和でも1970年代の「東宝チャンピオンまつり」系作品への憧憬が感じられる。
私のような昭和円谷作品のファンは往々にしてチャンピオンまつり系作品を軽視する傾向があると自覚しているが、昭和円谷作品を見て育った私と同じように、チャンピオンまつりを見て育った世代もあるわけで、それらの人々の嗜好まで否定してはいけないと思う。チャンピオンまつりの精神をブーストアップすれば、これだけ弾けた映画が出来上がるのだから。
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文:青井邦夫
『ゴジラ FINAL WARS』『ゴジラ×メカゴジラ』『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「2ヶ月連続!ゴジラ ミレニアムシリーズ」で放送