あまりの怖さに記録的なヒットを記録したホラー映画!
いまや定番ジャンルとなったPOV(一人称視点)形式のホラー映画。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)の続編として、2016年には『ブレア・ウィッチ』が公開されたりと、さすがにもう食傷気味というか、一周した感があることは否めない……。そんな中、2018年に韓国で公開された『レディ・プレイヤー1』を抜くほどのとてつもないヒットをかましたのが韓国産POVホラー『コンジアム』だ。
YouTubeでとにかく怖い映像を配信している人気チャンネル「ホラータイムズ」が、心霊スポット潜入生中継を企画。彼らは一般視聴者から参加者を募集し、集まったのは20代の若者7人。全員がもれなくイマドキのチャラついた美男美女だし、顔合わせでいきなり合コンチックな宴をおっぱじめたのにはさすがにカチンときたが、よくよく考えてみればこの作品はホラー映画。どうせこの後みんな酷い目に遭うんだし! と思ったら、途端に心霊スポットで待ち構えるオバケ気分にモードが変更。早くウチ(心霊スポット)来いや! とわけのわからない戦闘態勢に入ってしまった。
謎の失踪……集団自殺……怖すぎるガチ心霊スポットが舞台
今回「ホラータイムズ」クルーが向かうのは、韓国の昆池岩(コンジアム)精神病院廃墟。実はここ、実在の場所で米メディア<CNN>が2012年に発表した「世界7大心霊スポット」に選出されたことでも知られている超有名心霊スポット(ちなみに日本からは軍艦島と青木ヶ原樹海の2つがランクイン)。
病院は1962年に開業したが、1979年に患者の集団自殺と院長の失踪事件が発生し、わずか18年で廃業。それ以来廃墟となっていているが「霊を見た」というような心霊体験情報が多発。「完全に閉じられている402号室を開けようとすると死ぬ」などの都市伝説も囁かれていて、最近では肝試しに入った高校生2人が402号室を開けようとして姿を消したという……。
もう勘弁して! 恐怖のつるべ打ちに全身硬直必至
そんなわけで、絶対に行ってはいけない場所に行ってしまう男女7人恐怖物語なのですが、蓋を開ければいけすかない男女をこれでもかと襲いまくる怪奇現象の数々、それを受けたバカたちのリアクション、そして来る信頼関係の崩壊、とはいえ男女が集まっていながら恋愛要素はゼロ、という大変好感の持てる硬派な作り。
恐怖演出も手堅く、こういった映画にありがちな、少ない照明の中で手ぶれしまくるカメラ、緊張感というものを履き違えた何も起こらない長回しなどで一気に押し切る「素人臭さが逆に怖いよね!」作戦を逆に利用した、作り手の狙い通りの怖い場面が盛りだくさん。表情が認識できないぐらいの絶妙な距離感でぼーっと立つ幽霊と対峙するシーンなんて「もういい! 止めてくれ!!」と叫びそうになっちゃうほど……。
とにかく作り手の「観客を飽きさせてたまるか!」という、志が異常に高いホラー映画が誕生しました。とてもよく練られた構成・脚本・演出は、若い映画作家なんかは勉強になるんじゃないでしょうか。でも、心霊スポット潜入だけは絶対に真似しちゃいけませんよ!
文:市川力夫
『コンジアム』は2019年3月23日(土)より公開中