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柄本佑が語る2021年No.1映画!「観たあとに自分で脚本を起こした」洋画とは? 意外な“号泣”邦画アニメも【第2回】

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ライター:#稲田浩
柄本佑が語る2021年No.1映画!「観たあとに自分で脚本を起こした」洋画とは? 意外な“号泣”邦画アニメも【第2回】
柄本佑

柄本佑のナンバーワン映画

2021年だけでテレビドラマ2作品、映画3作品に出演。その唯一無二の魅力を持ち味に、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍する実力派俳優・柄本佑へのロングインタビュー第2回。俳優、監督、そして観客として映画と常に向き合い続ける柄本佑が映画に託す想いとは。

映画好きとして知られる彼の、“今”と“一生”のナンバーワン映画、そして、そこから見えた映画づくりへのきっかけや熱意にも触れる。

柄本佑

「まさか“号泣”するなんて」

―これはナンバーワンに好きだな、という映画はありますか?

実はナンバーワン映画が全然、思い浮かばなくて。多分、コロナ禍で映画館離れしていることが大きい気がします。ただ、今さっきパッと思いついた今年(2021年)観た洋画のベストワンはハーモニー・コリン監督の『ビーチ・バム まじめに不真面目』(2019年)です!

―おお、僕も大好きです!

あれはすごいですね……。今(自粛ムード)の時期に見ても、すごくスッキリするような映画。映画館で『ビーチ・バム』とロベール・ブレッソン監督の『田舎司祭の日記』(1950年)という二本立てで観たんですよ。

『ビーチ・バム』は、ああいった(ポップな)ルックですけど、おそらくどう演出してもいい強固な脚本があるような気がしていて。なので、どういうふうに撮っても、手持ち(カメラ)で音楽なんかをかけっぱなしでも大丈夫だと。“脚本の映画”だなという印象です。

というか僕、ハーモニー・コリン監督の映画を初めて観たんです。今までなんとなく面白そうだなとは思いながらも縁遠くなっていたんですが、『ビーチ・バム』を観ると、伏線カットはしっかりと腰を据えて撮っているし、見事な演出が多くて本当に上手いことできてるなと。久々に脚本を起こしました。

柄本佑

―ええ、そんなことされてるんですか?

こうなって、ああなって……という話の展開を書くだけのハコガキですけどね。『ビーチ・バム』は、話自体はシンプルで主人公も変わらないんですけど、移動の表現が見事でした。加えて主演のマシュー・マコノヒーがいいんですよね。

かたや『田舎司祭の日記』は、話がほとんどない映画です。でもお話じゃ描けないような部分、それだけだったら脚本が紙一枚で終わるようなものを100分くらいかけて表現していて、しかも緊張感がずっとあるんです。『ビーチ・バム』ほど良い! とはなっていないんですが、どこかで『田舎司祭の日記』のブレッソン監督に魅力を感じていて。

というのも、『ビーチ・バム』は物語を描いてるんですが、ブレッソン監督は「カメラがそこに置いてあって、その前に人がいる」という根底が、まだそこに残っている感じがする。お話じゃ描けないような部分。揺るいでるところが一個もない。だからうまく対比している面白い二本立てだなと思いました。

柄本佑

あと、今年の邦画ナンバーワンは『クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園』(2021年:以下『天カス学園』)でした(笑)。

―ずっと観ているんですか、お子さんとか関係なく?

子ども関係なく、ずっと観てますね。子どもが産まれてからも一緒に映画館に行ったりしてます。やっぱり30年続けてきたシリーズものって説得力が違いますね。新しいキャラクターが入ってきたら、そのキャラクターの説明をしなきゃいけないじゃないですか。だから2作目が傑作で、1作目が駄作になるっていうことは割とあるなと思っています。そうすると1作目から30年経っている『クレヨンしんちゃん』って誰が何を喋ろうが、かなり自由かつ説得力を持って喋れるんです。

―子どもの頃から大人になるまで見続けて、段々と分析しはじめたといういう感じですか?

笑えて面白くてキャーキャーっていう媒体だと思っていたら、監督が原圭一さんになった後くらいから「おや、ちょっと調子が変だぞ」と。それで『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001年:以下『オトナ帝国の逆襲』)で個人的にピークを迎えました。小学校の時に同級生3人と観に行ったんですが、まさか『クレヨンしんちゃん』で号泣するなんて3人とも思ってなくて、恥ずかしいから後半は顔を隠しながら観ていて(笑)。『オトナ帝国』はストーリー重視で、子どもも大人も楽しめる展開を作りつつ、割と集大成みたいな感じですね。そして今回の『天カス学園』で、もう一回ピークを迎えたなと。

―そんなに分析的に観ている人がいるのか、と思ってしまいました。

好きだからかな……なんか『クレヨンしんちゃん』の話しかしてないですね。(笑)

―子供の時からずっと続いている映画体験って結構、得難いですよね。リアルタイムですし。

そこまで(シリーズを)続けてくれてる作品があまりないので、『クレヨンしんちゃん』って稀有なのかもしれないですね。大人も子どもも観られて、真っ直ぐ進んできているのはしんちゃん映画のいいところだと思います。

柄本佑

「“頭”よりも“体”で撮られている映画が好き」

―2021年ナンバーワン作品を挙げてもらいましたが、“昔これにハマった”という映画はありますか?

高校生の時に出会った、ジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』(1954年)がいまだにマイベスト。一番好きな映画です。

『フレンチ・カンカン』との出会いは文芸坐でした。文芸坐は二本立てじゃないですか。その時は、名前も忘れちゃったようなもう片方の映画を観に行って、ついでにと思って『フレンチ・カンカン』も観たら、圧倒的ルノワールでした(笑)。ラストのカンカンのシーンで号泣ですよ。映画の大きさ、おおらかさ、細かいことを気にせずに歌って、踊って。出会いと別れ、挫折と成功もあって、これは完璧だなと思ったことを覚えています。

―ラストのカンカンのシーンで号泣したんですね(笑)。

はい。そこからなのか、お祭りが出てくる映画が好きなんです。だから、おもいっきりお祭りが出てくる『次郎長三国志』(1952年ほか)とか『阿波の踊子』(1941年)などマキノ雅弘監督の映画も好きです。『阿波の踊子』は、お話はあまり覚えてないんですが高峰秀子さんがめっちゃ可愛いですね。

“頭”で作られていく映画もあると思うんですが、僕はどちらかというと“体”で撮られているものがタイプとしては好きです。ロバート・アルドリッチ監督の『ロンゲスト・ヤード』(1974年)や『カリフォルニア・ドールズ』(1981年)、『北国の帝王』(1973年)とかは大好きですね。

『北国の帝王』の冒頭、あんなハンマーで人が殴られているのを20代の人が見たら、絶対に影響されますよ。それで、主演のアーネスト・ボーグナインに一時期すごくハマったんです。9.11をテーマにした『11’09”01/セプテンバー11(イレブン)』(2002年)というオムニバス映画の<インド編>で、俳優のショーン・ペンが監督をしているんです。その作品の中でアーネスト・ボーグナインが、それまでやってきたアクの強い芝居ではなく静かな芝居をしてるんですが、すごく良いんです。(物語としても)着眼点にショーン・ペンらしさはあるんですが9.11の出来事を悲しい・辛いではなく、フィクションに落とし込んでいるのもよかったですね。

https://www.youtube.com/watch?v=XEnIbAuSCQA

―そんなショーン・ペンと同じく、柄本さんも監督をなさってますよね。

はい、ちまちま自主映画を撮っています。初めて撮ったのは学校の卒業制作で、9分の短編ですね。その時、弟(柄本時生)と「どちらかが使いたい時に使っていい」ということで折半して、マイクを買ったんです。映画には僕の同級生と、東京乾電池(父・柄本明が主宰)の劇団の方に出ていただいて、撮影は俳優の森岡龍(2021年『ONODA 一万夜を越えて』ほか出演)がやってくれました。まだ長編は撮ったことがなくて、一番長いもので秋田の十文字で撮った36分の作品があります。

その後、カンヌ国際映画祭の60周年(2007年)で色々な映画監督が3分の映画を撮る企画があったんですよ。(アッバス・)キアロスタミが撮っていたり、(北野)武さんも。それを「下北沢で撮りたい!」と手を挙げた人がいて、「佑、撮らない?」と誘われて撮影しました。

それから少し時間が空いて、『ムーンライト下落合』(2017年)という30分の作品をユーロスペースで1週間だけ上映してもらいました。『ムーンライト下落合』は、同じ方が脚本を書いている作品で3本立てにすれば長編オムニバスとして上映できると思ったんですが、1本できあがったら早くお披露目したくなってしまって(笑)。だから1週間限定で公開させてもらいました。後に残りの2本も撮ったので、一応3本立ての自主映画はありますね。

―それは上映されたんですか?

いえ、まだしていないです。上映できる算段をしているというか、足場作りみたいな感じですね。いつか長編を撮ってみたいです。自分で(脚本を)書いたりすることはありますが、自主映画みたいな形でもいいのかどうか、と。でも「これ、やりたいな」という原作もあるので、近い将来撮りたいなと思っています。

柄本佑

【インタビュー第3回は2022年1月25日(火)公開】

取材・文:稲田浩
撮影:大場潤也
スタイリング:望月唯
ヘアメイク:星野加奈子

ロケコーディネート:
ジャケット¥107,800(KENZO/KENZO Paris Japan TEL:03-5410-7153)、スウェット¥25,300、パンツ¥36,300、ソックス¥5,500(AURALEE)、サンダル¥83,600(AURALEE MADE BY FOOT THE COACHER)全てAURALEE TEL:03-6427-7141
室内コーディネート:
ジャケット¥52,800、Tシャツ¥15,400、パンツ¥36,300、ソックス¥5,500(AURALEE TEL:03-6427-7141)

『殺すな』は2022年1月28日(金)より全国のイオンシネマ89館にて劇場上映、2月1日(火)よる7時より時代劇専門チャンネルでTV初放送

『真夜中乙女戦争』は2022年1月21日(金)より全国公開

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『真夜中乙女戦争』

4月。上京し東京で一人暮らしを始めた大学生の“私”。友達はいない。恋人もいない。大学の講義は恐ろしく退屈で、やりたいこともなりたいものもなく鬱屈とした日々の中、深夜のバイトの帰り道にいつも東京タワーを眺めていた。

そんな無気力なある日、「かくれんぼ同好会」で出会った不思議な魅力を放つ凛々しく聡明な“先輩”と、突如として現れた謎の男“黒服”の存在によって、“私”の日常は一変。

人の心を一瞬にして掌握し、カリスマ的魅力を持つ“黒服”に導かれささやかな悪戯を仕掛ける“私”。さらに“先輩”とも距離が近づき、思いがけず静かに煌めきだす“私”の日常。

しかし、次第に“黒服”と孤独な同志たちの言動は激しさを増していき、“私”と“先輩”を巻き込んだ壮大な“東京破壊計画=真夜中乙女戦争”が秘密裏に始動する。

一方、一連の事件の首謀者を追う“先輩”は、“私”にも疑いの目を向けていた。“私”と“先輩”、“私”と“黒服”、分かり合えたはずだった二人の道は少しずつ乖離していき、3人の運命は思いもよらぬ方向へと走りだす……。

制作年: 2022
監督:
出演: