カーネイジってどんなキャラ?
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は2018年に日本でも大ヒットした『ヴェノム』の続編です。前作で宇宙から来た黒い寄生生物シンビオートと、はぐれジャーナリストのエディが合体し生まれたダーク・ヒーローのヴェノムが、カーネイジというモンスターと戦います。
カーネイジは、連続殺人鬼クレタスとシンビオートの融合によって生まれた邪悪な存在です。黒いヴェノムに対して赤の体色。ヴェノム、カーネイジともマーベルのキャラであり、ヴェノムは1988年のアメイジング・スパイダーマン誌でデビュー。カーネイジは1992年にスパイダーマンのコミックに登場しました。
映画でも描かれたように、シンビオート×エディ=ヴェノム、ヴェノムから枝分かれしたシンビオート×クレタス=カーネイジなのですが、もともとヴェノムとなるシンビオートはスパイダーマンに寄生しており、スパイダーマンの能力/ピーターの記憶をコピーしています。ヴェノム、カーネイジともにホラー版スパイダーマンともいうべきルックスなのは、そのせいです。
映画版はこれらのスパイダーマン由来の設定を排除し、かつトム・ホランドのスパイダーマンが登場するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とは違う世界観でヴェノムの物語を描いています。
宿主(ひろし)×シンビオート(ピョン吉)
さて、前作『ヴェノム』がウケた理由は2つあると思います。それはズバリ、わかりやすさと可愛さ。MCUやスパイダーマン等の他ヒーロー映画のしがらみや知識を必要としないので、いきなりこの作品から観てもわかりやすく楽しめる作品になっていました。そして、この作品の魅力は一見グロテスクですが、どこか言動に可愛げのあるヴェノムの“ギャップ萌え”ともいうべきチャーミングさです。とにかくエディとシンビオートのかけあいが楽しいんですね。
そもそもヴェノムは、エディとシンビオートの2人(1人と1匹?)が一体となっているので、人称は「俺たち」です。シンビオートは日頃はエディの体の中に潜んでいますが、ここぞという時にはシンビオートがエディの体を包み込んでヴェノムとなる。常人が無敵の怪物に変異という意味ではハルクにも似ていますが、二重人格的キャラではなく、エディとシンビオートどちらの意識も混在しており、つまり『ど根性ガエル』のひろしとピョン吉みたいな関係では“共生”しているのです。そんな彼らの掛け合いはバディ・ムービー的面白さがあります。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、こうした前作の良さやノリを受け継いだ作品となっています。もしかすると、そこが好みの分かれるポイントかもしれません。カーネイジが思ったほど“主役”ではないんです。カーネイジというのは、マーベル・コミックの中でも最恐にして最凶のヴィランです。出版社の枠を超えてバットマンとスパイダーマンが共闘したコミックでは、なんとジョーカーとカーネイジがペアになります。それくらい危ない存在なのです。けれど『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は、決して『ダークナイト』(2008年)を目指していません。
『ダークナイト』の事実上の主役はジョーカーでしたよね。本作はあくまでもエディとシンビオート(ヴェノム)の物語であり、そこにカーネイジが現れる、という感じです。カーネイジの暴れっぷりを期待していたファンは、ここに少し物足りなさを感じるかもしれません。また、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2020年)ほどスプラッタ・コメディでもありません。しかし、アメコミ・ライト層にも見やすく・楽しいというのが『ヴェノム』映画の魅力なら、それについては十分に応えてくれます。先ほど“カーネイジの暴れっぷりが物足りない”と書きましたが、確かに『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)みたいな映画ではないものの(笑)、料金分はしっかり活躍しますからご安心を。
黒いヴェノムに対し赤いカーネイジ。マッチョなヴェノムに対し、細身ですが体中から触手を出して大きく見せるカーネイジ。彼らの大バトルは、これぞアメコミ・ヒーロー映画の醍醐味!です。
ヴェノムにどハマり? 製作に大きく関わったトム・ハーディ
エディにはアンという元カノがいて、シンビオート(ヴェノム)も彼女のことを気に入っている。一方クレタスには超音波を操るシュリークという恋人がいて、シンビオート(カーネイジ)は彼女が嫌いという複雑な三角関係同士です。さらに、カーネイジはヴェノムから生まれたので、ある種の親子関係でもあります。クライマックスは、そんな彼・彼女たちが入り乱れての大バトルとなりますが、三角関係VS三角関係の痴話喧嘩に親子喧嘩が絡んでいて、単なるヒーロー対ヴィランになっていないところも面白いですね。
エディを演じるは前作に引き続きトム・ハーディ。彼はシンビオートの声も担当しており一人二役。さらに本作にはプロデューサーとしても名を連ね、ストーリー作りにも参加しています。ライアン・レイノルズのデッドプール、マーゴット・ロビーのハーレイ・クイン並みに、この役に入れ込んでいることがわかります。
本作には例のごとく“おまけシーン”がありますが、心の中で絶叫すること間違いなしなので、最後まで席を立たないでください。また、前の回を観たお客さんが不用意にそのことを話しながら出てくるかもしれないので、そこは気をつけてくださいね(笑)。
文:杉山すぴ豊
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は2021年12月3日(金)より全国公開
https://twitter.com/VenomMovieJP/status/1464609961007190016
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
「悪人以外を食べない」という条件でエディの体に寄生し、彼と共同生活を送る地球外生命体(シンビオート)のヴェノムは、食欲の制限を強いられストレスの毎日を過ごしていた。そんな中、未解決事件の真相を追うジャーナリストのエディは、サン・クエンティン刑務所である死刑囚と再会する。その男の名はクレタス・キャサディ。これまで幾度となく猟奇殺人を繰り返し、収監されたシリアルキラーで、彼には死刑執行の時が迫っていた。「私の秘密を教えよう」と不気味にほほ笑み、エディに対し異様な興味を示すクレタス。突如その時、クレタスはエディの腕へと噛みつき、エディの血液が普通の人間とは異なることに気づく……。死刑執行の時、ついにクレタスはカーネイジへと覚醒――。世界を闇へと変えていく。
制作年: | 2021 |
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監督: | |
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2021年12月3日(金)より全国公開