怖がり玉ちゃん、なぜ『怖い本』に手を出した?
54歳にもなると、お金を払ってまで怖い映画を観たり、お化け屋敷に入ったり、絶叫マシーンに乗っかたりして寿命を縮めるようなことを拒否するようになった。しかし今回『スケアリーストーリーズ 怖い本』(2019年)に手を出してしまった。
本作で、幽霊屋敷に眠る少女の怨念が詰まった「怖い本」に手を出してしまうのは、将来ホラー作家を目指している少女。だから禁断の「怖い本」持ち帰ってしまい、仲間たちを含めて恐怖の心霊現象に巻き込まれていくのは自然の流れである。では怖がりのオレが、なぜ『スケアリーストーリーズ 怖い本』に手を出してしまったのか?
長いことタレント活動をしていて、テレビで何度か「心霊もの」番組のMCをやらせてもらったことがある。オレは別に「この世に心霊なんてありゃしない」とハナっからは否定はしないが、頑なに信じているわけでもない。存在したら怖いし、存在しなかったら怖くないというだけだ。だからテレビで心霊番組をやるときは、軸足を「実在するのではないか?」というスタンスに寄せてMCをこなしていた。しかし、番組に出演していた霊能者たちは明らかに胡散くさい人たちだった。
当時、MCをしながら「こういう人間がいるせいで、実際に存在する亡霊たちまでがインチキだと思われてしまうんだったら、その亡霊たちは浮かばれねえなぁ……。でも本当に存在するなら、呪いの力を使って悪質な霊感ビジネスをしている不逞の輩を祟ってるだろうから、本当はいないのかなぁ……」などと思ってしまったほどである。
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— 玉袋筋太郎 (@snack_tama) August 14, 2021
まぁ今回『スケアリーストーリーズ 怖い本』に手を出したのは「この映画はダークファンタジーみたいだし、まあいっか」という気持ちからだったんだな。それでは優秀な編集者様、この作品の概要を紹介してください。
『スケアリーストーリーズ 怖い本』
ある田舎町のハロウィンの夜、町外れの幽霊屋敷に忍び込んだステラたちは地下室で一冊の本を見つけ、こっそり本を持ち帰る。しかし、翌日から仲間がひとり、またひとりと姿を消していく。彼らの身を案じていたステラたちは、本の余白ページに勝手に文字が浮き出て、新たな物語が書かれていくのを目撃してしまう。しかも主人公は消えた仲間たちで、それぞれが“いちばん怖い”ものに襲われる、という物語が綴られていた――。
原作は、製作を務めたギレルモ・デル・トロが10代の頃に多大な影響を受けたベストセラー児童文学「怖い本」シリーズ。実際の事件を彷彿とさせる描写や恐ろしい挿絵に大人たちから苦情が殺到し、全米の学校図書館から締め出されそうになったという。
玉ちゃんが定期購読していた「怖い本」とは?
この映画、80年代にアメリカ中の子供たちに衝撃を与えた「Scary Stories to Tell in the Dark」っていう、怖い話やら都市伝説を集めた本が原作なんだね。日本で言えば、子供たちの間で流行した「口裂け女」やら「トイレの花子さん」、それに「キツネ目の男」やら「東電OL」とかのエピソードを集めたような怖い本なんだな。最後のふたつは違うよ!
それにしても、この映画を観ていると子供の頃、怖い話のせいで夜中にトイレに行くのが怖くなった記憶が蘇って、懐かしい気持ちになるね。とはいえ映画に登場する、悲しい運命にあった少女の霊の怨念が詰まった「怖い本」は、自動書記で子供たちを物語の主人公にしちゃうんだから本当に迷惑な本だよ。主人公たちはこの本を処分しようと何度か挑むんだけど、全て本の霊力のせいで失敗しちゃって、恐怖の物語の主人公というか“生贄”にされていくんだな。
この恐怖は、例えば誰もいないだろうと思って粗大ゴミを捨てたら防犯カメラで撮影されてて、不法投棄のお咎めを受けてしまう恐怖のようなものだ。もしくは自宅にある大量の蔵書をブッ◯オフに売ったら、著者に「玉袋さんへ ◯◯より」と書いてもらったサイン本まで売ってしまい、それを他人に買われて「ブックオフで買った珍品!」などとタイトル付きで画像をネットに晒されてしまうような恐怖だ。ちなみにこれは実話ではなく、この映画と同じくホラーなダークファンタジーであります。
まぁ、実際に「怖い本」かもしれないと思うのは、日本の反社会勢力と呼ばれる集団を毎月カラー特写や記事で出していて、オレが楽しみに定期購読していた「実話時代」かな。某親分の“盃事”や“事始式”のシーンがカラーで特集されるなど、当時のオレは痺れまくっていたが、今やこの雑誌に特集されていた人たちを恐怖のどん底に突き落としてるかもしれないから、そういう意味では「怖い本」かも。
断捨離https://t.co/pN04swtZAF pic.twitter.com/FXmaOGKKxq
— 玉袋筋太郎 (@snack_tama) August 12, 2021
玉袋少年の「怖い本」はノンフィクション?
そしてオレ自身の「怖い本」だが、それこそ映画の登場人物のように若い頃の話だ。あの子たちは古い屋敷の地下室で「怖い本」を手に入れてしまい、恐怖の主人公にされてしまう。でも、オレがその「怖い本」を入手したのは中学時代、ひとりで家のリビングでボケーッとしていた時のことだ。
退屈なので、仕事で不在の両親のダブルベッドでゴロゴロしていた時に、偶然二段組のマットレスの隙間に手を突っ込んだ。すると、指先に何やら硬いものが触れた。「なんだ?」と思い引っ張り出してみると、紙袋。中身を取り出してみると……「ノーカット、スベテ、カラー」と表紙に書かれた一冊の本。外国の男女が絡み合っているオールカラーのシロモノだったのである。
多分オヤジが町内会のおじさんたちと海外旅行に行った時にコッソリ持ち込んで隠していたんだろうが、当時のオレは初めて見るシロモノだったから、ハッキリと見える◯◯やら◯◯部分やら、巨大すぎる外国人の◯◯◯◯は恐怖の連続だった。この「怖い本」、とにかく学校に持っていって仲間に貸していたら評判で、次から次へと借りたい学友が殺到したので、オレも考えて1日1000円の貸本として儲けを出していった。
が、オヤジがこの「怖い本」をオレが家から持ち出したことに気がついた時の恐怖である。しかも、困ったことに貸した仲間のバカが本にひっかけやがって、ページがバリバリになってしまっていた。すっかり「汚れた怖い本」になってしまったが、勝手に持ち出したことがバレたら思いっきり叱られるだろうから、こうなりゃどうにでもなれ! と、こっそり元の場所に戻しておいた。そもそも、思春期の息子がいるにも関わらず、そんなものを部屋に隠しているオヤジもどうしたもんかである。
さぁ、オレの「怖い本」の結末はどうなったか? 戻した後、何年も経って成人しても、ついにオヤジがオレに「怖い本」の事で雷を落とすことは無かった。そしてオレが35歳の時にオヤジは65歳で死んでしまった。母親とオヤジの形見の整理をしていると、なんとあの「怖い本」が出てきたのである。しかも、それだけじゃなく「怖いビデオ」(洗濯屋ケンちゃん)までもが出てきたのだ。これはオレのダークファンタジーではなく実話です。皆さんも「怖い本」には注意しましょう!
今日は自著の小説「新宿スペースインベーダー」の文庫版の校正。頭から最後までじっくり。なんだか校正終了後に自分の作品なのに胸にこみ上げちゃった。登場人物の事が頭回っちゃってさ、死んだオヤジやおばあちゃんの事や仲間のことなどなど。校正した場所は生まれ故郷の新宿・京王プラザ一室マスター
— 玉袋筋太郎 (@snack_tama) July 25, 2013
文:玉袋筋太郎
『スケアリーストーリーズ 怖い本』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年11月放送
『スケアリーストーリーズ 怖い本』
ハロウィンの夜、町外れの幽霊屋敷に忍び込んだ子供たちが一冊の本を発見。そこには噂に聞いた怖い話の数々が綴られていた。作家志望のステラはこっそり本を持ち帰るが、次の日から仲間が1人、また1人消えていく。そして本の余白にはひとりでに新たな物語が書き加えられ……。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年11月放送