ついに“お家でヴェノム”が実現!
『スパイダーマン:スパイダーバース』『キャプテン・マーベル』『シャザム!』そして『アベンジャーズ/エンドゲーム』と、春からゴールデン・ウィークにかけて映画館ではアメコミ・ヒーローたちが大活躍ですが、昨秋大ヒットした『ヴェノム』のブルーレイ/DVDがついにリリース。お家でヴェノムを楽しめるようになりました。
今回のリリースを記念して、作者の一人であるトッド・マクファーレン氏にインタビューする機会にめぐまれました。マクファーレン氏は有名なコミック・アーティストであり、マーベルでスパイダーマン等を手掛けていますが、彼の代表作はマーベルを離れた後に自ら創作・発表した魔界ヒーロー、“スポーン”です。
スポーンはコミックだけでなく、マクファーレン自身が立ち上げた<マクファーレン・トイズ>からアクション・フィギュア化され大ブレイクしました。日本でもスポーンのフィギュアは、90年代を代表するストリート系、サブカル系アイテムとして大人気に。そんな伝説のクリエイター、マクファーレン氏に今だから聞けるヴェノム誕生秘話、そして映画『ヴェノム』について聞くことができました。
なお、ヴェノムというキャラについてよく知らないという方のために一応解説しておくと、コミックではヴェノムはスパイダーマンの敵として登場しました。スパイダーマンが一時期黒いコスチュームで活躍していたのですが、その黒コスチュームの布が実は寄生宇宙生物で、スパイダーマンの能力等をコピー。それが別の男にとりつきヴェノムという怪人になるというお話でした。
今回の映画『ヴェノム』は“スパイダーマン部分”の設定をいったんとりはずして、ヴェノム単体にフィーチャーした映画になっています。トッド・マクファーレン氏はスパイダーマンのコミックの中で、このヴェノムをデビューさせたので、インタビュー内容にスパイダーマンについての言及が多いのはそのためです。
黒いスパイダーマンを描かなかったことで生まれたヴェノム
―まず映画『ヴェノム』はいかがでしたか?
イエイ! って感じだね。かなりハッピーにしてもらった。クールなヴェノムをたくさん見たかっただけで、実際見られた。とにかくデカくて巨大な、鉤爪を持つヴェノムをスクリーンで見たい、ってだけだったし、それが見られて満足だった。ヴェノムは前に一度映像化されている(注:2007年の映画『スパイダーマン3』に登場)けど、あのヴェノムはあんまり大きくなかったからね。今回のヴェノムは自分が描いたヴェノムにずっと近いじゃないか、と。
―ヴェノムは“大きい”ことが重要ですか?
大きいってことは重要だったね。なぜならスパイダーマンがやってきて、スウィングしながらヴェノムを蹴って、蜘蛛の糸で縛って、刑務所に送る ― なんてことにしたくなかったから。そんなの簡単すぎると思ったんだ。片方がずっと大きくて、例えるなら僕がサイと対決するようなもの。サイを力で押し倒そうとしたって無理だろう? 巨大すぎるし、重すぎる。つまり、力でなんとかするんじゃなく、頭を使って何か別の方法を思いつかなきゃいけない。ヴェノムを作ったときも同じだよ。スパイダーマンが頭を使わなきゃいけないような、巨大なものにしたかったんだ。ヴェノムを倒すには、クレバーな方法を見つけなきゃいけない、そこがポイントだよね。
―ヴェノムはどういうアイデアから生まれたんでしょう?
実は「スパイダーマンをやらないか?」と声かけられた時、当時のスパイダーマンは黒いコスチュームだった。で、僕は赤と青のクラシックなスパイダーマンを描きたかったから、黒いコスチュームをどうはがそうか? と(笑)。で、はがしたのはいいけど、この黒いやつをどうしようか? それで、これがモンスターになる、という風にしたんだ。
それに大きな目と曲がった背中、大きな口を与えた。このキャラを使ったストーリーを相談している時に、エディ・ブロックという男を呑み込む設定にしよう、ということになった。体の大きな男を飲み込んでいるから、ヴェノムは巨大になるんだ。例えばインクレディブル・ハルクみたいに、ヴェノムになるとデカくなるみたいなことも狙っていた。細いスパイダーマンVS巨大なヴェノムっていう対立構造だよ。
いま振り返ると、もし青年アーティストとしてのトッド・マクファーレンがマーベルにやってきて「黒のコスチュームのスパイダーマンを喜んで描きますよ」ということになっていたら、ヴェノムは生まれていなかっただろうね。でも、たぶん当時のマーベルは僕が未熟で子どもっぽいアーティストだったことを、ちょっと面白がってくれてOKを出したのかな。「黒いスパイダーマンを描きたくない」と言ったからこそ、今こうしてヴェノムっていうクールなキャラクターがいるんだから。
―ヴェノムというキャラがこれだけ人気が出た理由はなんだと思いますか?
クールだからさ! 大きな目の、巨大な黒のキャラクター。10歳でそれが嫌いな子なんていないだろう? 次に、こいつはすごくナスティ(注:本来の意味は、危険・失礼・不快、といった意味ですが転じて“ヤバい奴”“とんでもない奴”みたいなポジティブなニュアンスで使われることもあります)なんだよ! そこに重要な要素があると思う。
デッドプールやバットマンは人気キャラだろう? みんな、平気でルールを破るようなキャラクターが好きなんだよ。僕にとってのヴェノムは、ただ“やることをやる”キャラクターだ。自分が考える正しいことをやろうとするが、その途中で何かが壊れても気にしない。そこが他の多くのスーパーヒーローと違うところだね。彼らは行儀がいいから。でも、そうじゃないキャラクターが好きなキッズも大勢いると思う。
X-MENの一番人気はウルヴァリンだった。それには理由があるんだよ。彼が一番ナスティで行儀が悪かったからだ。ヴェノムは、スパイダーマンなら絶対しないようなこともする。行儀のいいヒーローにはできないんだ。でもヴェノムだったら「は? そいつの首を折るんなら、俺がへし折ってやるよ」って、それで終わり。そういうのって楽しいだろう? 僕たちのようなキッズにとっては、変な意味ですごく面白いんだ。
―『ヴェノム』のヒットによって日本でもヴェノム人気が高まりました。日本のファンに何かメッセージをいただけますか?
うれしいね。日本にも行きたいと思ってるよ。僕が思うのは、日本のファンも他の地域のファンと何も変わらないんじゃないか、ってことだね。人間は人間で、同じことに反応するんだよ。ヴェノムを好きな日本人も、他の場所でヴェノムを好きな人と変わらない。ヴェノムはただ、クールなんだ! たぶん、みんな……ちょっとした攻撃性が好きなんだな。ある種のアピール(魅力)があるんだ。
楽しいインタビューでした! トッド・マクファーレン氏が「ヴェノムはナスティでデカいからクールなんだ」ということを強調していますね。彼の言葉は、僕らがなぜこのキャラを愛してしまうのか? の答えでもあるし、改めて映画『ヴェノム』を観るとよくわかります。
映画『ヴェノム』が日本でも大ヒットした時に、多くの女性ファンが発した“かわいい”“飼いたい”といったコメントも印象的でした。ブルーレイ等があれば、まさにヴェノムをお家で“飼える”ようなものですね(笑)
文:杉山すぴ豊
『ヴェノム』
“スパイダーマン最大の宿敵”であり、“マーベル史上屈指の最悪ヴィラン”。
もっとも残虐な悪<ダークヒーロー>が誕生する!
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |