浮世離れしたモモアのタイトな人間ドラマ
我らがアクアマンこと、超大作『DUNE/デューン 砂の惑星』公開(2021年10月15日)も控えたジェイソン・モモアの最新主演作がNetflixで配信されている。タイトルは『スイートガール』。
ワイルドかつハンサム、カッコよさのタイプとしてはドウェイン・ジョンソンの次くらいに浮世離れしていると言ってもいいモモアは、コミックヒーローだったりSF・ファンタジー大作が似合うイメージなのだが、本作の規模は小さめだ。むしろタイトさが売り。
モモア演じる主人公レイ・クーパーは、妻と娘の3人家族で慎ましくも幸せに暮らしていた。だが妻が難病に襲われ、頼みの新薬は発売延期。しかも製薬会社には利益追求のための“裏”があるらしい。娘レイチェルの心配をよそに、妻を亡くした父レイの復讐が始まる。
が、その矢先に殺し屋が先手を取ってくる。クーパー親子は復讐を狙いながらも黒幕が差し向けた殺し屋に狙われることに。いったい何がどうなっているのか。当然、警察とFBIも動く。
あんまり強くないモモアが手に汗握らせる
映画の軸になるのは、親子の逃亡と闘いだ。ヒゲをたっぷりたくわえたモモアの風貌は今回もワイルド。しかし役柄としてはあくまでリアル、等身大だ。格闘技ジムで(親子で)MMA=総合格闘技のトレーニングをしている場面もあるが、殺しのプロでもなんでもない。もちろん銃器の扱いにも慣れていない。
モモアが見せる格闘アクションは、だから決して爽快なものではない。殴ることより殴られることが多いし、簡単に投げ飛ばされてしまう。できることといったら無骨に、そして必死に殴り返すことくらい。あとは頭を使い、運に助けられてどうにか生き延びる。
復讐もので逃亡ものだから、映画のタッチはどうしても暗くなる。さすがにモモア、もっと強くてもいいんじゃないのかと見ていて思ったりもする。が、そう思ったところで『スイートガール』は思わぬツイストを始めるのだ。この意外な展開と終盤一気のたたみかけこそが本作の最大のポイント。
前半の疑問が「なるほど、あれは伏線か」と分かってきた時、復讐もクライマックスを迎えることになる。
いや実際の話、この“意外な展開”が完全に成功しているかと言ったら、そうではない。ただ、スター街道を征くモモアが主演作として「これなら」と思ったんだろうなというのは分かる。
それだけの野心がある映画だし、無敵のヒーローではない等身大の夫、父の姿は演じがいがあったはずだ。タイトルの“スイートガール”、娘レイチェル役のイザベラ・メルセードも大熱演。今後さらに注目されそうだ。
文:橋本宗洋
『スイートガール』はNetflixで独占配信中
『スイートガール』
家族を何よりも大事にしてきたレイ・クーパーは、がんで闘病中だった妻を亡くし、ある誓いを立てる。それは、妻の命を救う頼みの綱であった薬を市場から撤退させた製薬会社を制裁すること。ところが、真実を追求していくうちに、レイと娘のレイチェルは死の危険にさらされることになり、レイは残された唯一の家族を守るために復讐を心に誓う。
制作年: | 2021 |
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監督: | |
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