今度は『ジュマンジ』シリーズに便乗
あの“ジュマンジ”が、装い新たにやってきた。
「怪しいボードゲーム盤の中から、キャラクターの狩人や動植物がこの世に飛び出し、たちまち大混乱を巻き起こす」という大人気SFアドベンチャー映画、『ジュマンジ』(1995年)。そこから端を発する『ジュマンジ』シリーズは、『ザスーラ』(2005年)、『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)などの続編を繰り出し、2019年には待望の新作『ジュマンジ ネクスト・レベル』を公開するに至った。
が、そこにあの“アサイラム”もまた、うわべだけ真似てやってきた。上述の『ジュマンジ ネクスト・レベル』公開タイミングに合わせ、米国の映画スタジオ<アサイラム>が便乗商法狙いでリリースした作品は、その名も“ランカラ”。正式名称は、『ファイナル・レベル エスケイプ・フロム・ランカラ』(2019年/原題『THE FINAL LEVEL: ESCAPING RANCALA』)である。日本国内仕様のジャケットにはなぜかデカデカと“サメ”の姿が映っているが、実際作中には思いもよらぬ形でサメが登場することとなる。
というわけで今回は、アサイラム社が我々視聴者に対して仕掛けた禁断のデス・ゲーム、『ファイナル・レベル エスケイプ・フロム・ランカラ』を紹介していこう。
ゲーセンの筐体に吸い込まれてしまった兄と妹
とあるゲームセンターでアーケードゲームに興じていた、ジェイクとサラの兄妹。が、サラがふと目を離した隙に、ジェイクは謎のゲーム“ランカラ”の前で姿を消してしまう。
それから10年後。行方不明となったジェイクを未だ偲ぶサラは、親友のレイ、クリッシーの手を借り、ゲームセンターを設立。いよいよオープンを間近に控えたその日、三人はあの“ランカラ”を含む、店内のゲーム機の電源を投入する。ところが、その画面にはあの日失踪したジェイクの姿が映し出されており、さらには戯れにランカラをプレイしようとしたサラが、ボタンを押した途端ゲーム内に吸い込まれてしまう始末。
ランカラには何か不思議な力が備わっており、かつてジェイクはそのゲーム世界に迷い込んでしまったのだと直感したサラ。彼女は愛する兄をランカラから救い出すべく、クリッシーと共にゲーム世界に突入、三人はクリアを目指して大冒険に挑む。
が、ならず者と猛獣ひしめくランカラのゲーム世界は現在、“キング”なる男がすべてを支配しており……。
というのが本作の概要である。
あの人気サメ映画が登場!? アサイラムならではのセルフコラボ
アサイラム作品らしい難点の多さは否めないが、同時に意外な面白さを持つ作品である。
まずレトロアーケードゲーム風のオープニングからして一般的なアサイラム作品らしからぬ凝りようだが、なにより特筆すべきは主人公たちが最初に戦う“一面のボス”についてだろう。謎のゲーム機“ランカラ”の画面を通じて、ゲーム内に広がる別世界に吸い込まれてしまった主人公たち。その異空間で彼女らを待ち受けていた一面のボスは、なんとあの“シャークネード”だったのだ。
つまりはアサイラム作品同士のセルフコラボレーションというわけだが、「サメを内包する巨大竜巻がよりにもよってステージの一面に君臨している」絵面のインパクトは凄まじく、やや飛び道具的アイデアだが面白い。
クライマックスにはベルトスクロールアクションめいた構図での集団戦や、かの対戦格闘ゲーム「ストリートファイター2」を彷彿とさせるフィニッシュ演出などの、ちょっとしたゲームらしいアイデアが盛り込まれており、そこそこ創意工夫の痕跡が感じ取れるのも好印象。セットの作りや映像面に安っぽさを感じる点は多々あれど、「元がアサイラム製の低予算映画であるということを加味すれば許容範囲に収まる」というレベルには到達している。
一方で、いつものアサイラム作品同様、やはりテンポの悪さは気になるところ。序盤、主人公たちがゲーム筐体の前で、ランカラ世界に挑むだの挑まないだのいつまでもダラダラと二の足を踏んでいるくだりなどは、さすがに冗長だ。ほか、山場のアクションシーンのクオリティは役者が手足をバタバタとさせるばかりのまるでお遊戯会めいた代物だが、おそらくアクションシーン目当てでアサイラム作品を鑑賞する者の方が少ないかと思われるため、そこは不問とする。話運びのかったるさを除けば、かなり楽しい部類のアサイラム作品ではあるだろう。
文:知的風ハット
『ファイナル・レベル エスケイプ・フロム・ランカラ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年9~10月放送
『ファイナル・レベル エスケイプ・フロム・ランカラ』
懐かしのアーケード・ゲーム“ランカラ”の中に吸い込まれたサラ、レイ、クリッシーの親友3人。そこではサメや恐竜などの怪物が暴れ回り、難易度もどんどんアップ。3つのライフが無くなればゲームオーバーだ。悪戦苦闘の末、ついにファイナル・レベルに辿り着くが……。
制作年: | 2019 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年9~10月放送