マイケル“神”ジョーダンの伝説を引き継ぐ
1996年にバスケ界の“神”ことマイケル・ジョーダンを主演に迎え制作された実写×アニメ映画『スペース・ジャム』が、2021年に最新映像と豪華キャストで蘇った! その名も『スペース・プレイヤーズ』は、現NBAの“キング”ことレブロン・ジェームズを主人公に、96年版と同じくバッグス・バニーらルーニー・テューンズの面々が大暴れする、ファニーかつハートフルな電脳スポーツコメディ映画に仕上がっている。
ジョー・ピトカ監督(ヴェルナー・ヘルツォークと康●夫を足したような見た目の人でCM界の巨匠)による96年版をリアルタイムで体験した世代にとって『スペース・プレイヤーズ』は懐かしくもあり、ジョーダン以外のキャストで成立するのか? という不安も感じさせた。しかし本作は、90年代のハリウッドでは不可能だったであろう普遍的なファミリー映画の理想に到達した、あらゆる面で正しくビルドアップされたリブート作品だ。
一度は引退したジョーダンの復帰翌年に撮影された96年版は、野球界からバスケ界に返り咲いた“神”をお膳立てするかのような構成であったことは否めない。しかし、それはキャリアを通して強烈な競争心をむき出しにしていたジョーダンを知っていれば不思議ではないし、“何でもアリ”なテューンズの面々とスクリーンの中で同等に渡り合うのは、神でなければ不可能だったとも言える。
一方、レブロンも輝かしい記録を持つ正真正銘のキングではあるものの、映画内での存在感はかなり異なる。その大きな理由は家族、特に“子ども”の描き方だ。
テーマは家族!? 映画としての強度が桁違いのリブート
『スペース・プレイヤーズ』は、幼少期のレブロン(母子家庭)がバスケの試合でヘマしてしまうシーンから始まる。これは96年版のオープニングを引き継いだ形だが、野球の試合でミスって落ち込みながら(セレブ感ゼロの普通サイズの家に)帰宅して子どもたちに慰められるジョーダン、という嘘くささ満点の96年版を、本作はそれほど意識していないことも分かる。その後に続くオープニングクレジットもオマージュなのかだいぶ長めで、レブロンって誰? という層にも「なんかスゴそうな人」という印象を植え付ける。ちなみにBGMはChance the Rapper feat. John Legend & Symba「See Me Fly」で、鳥肌モノのカッコよさ。
そして舞台は現在、レブロンは3人の子を持つ親として、バスケよりもゲーム制作に夢中な秀才の次男ドムとバチバチやり合う様子から、本作が“家族”をテーマにしていることが明らかになる。もちろん電脳少年ドムの存在が物語の重要な鍵となり、最新ゲームについていけないレブロンのおっさんぶりもしっかりネタ振りになっているからスゴい。ピトカ監督やファンには申し訳ないが、NIKEの<HARE JORDAN>キャンペーンから生まれた企画モノとは映画としての強度が違うというか、さすが横ノリが浸透しているマルコム・D・リー監督(『バーバーショップ3 リニューアル!』[2016年]ほか)というか、本作は脚本から演出、音楽チョイスに至るまでいちいち気が利いているのだ。
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ともあれ序盤はサクサク展開で、ドムを伴いワーナー・ブラザースとの打ち合わせに訪れたレブロンが、同社のサーバーを支配するアルゴリズム、その名もアル・G・リズム(見た目は完全にドン・チードル)をディスったことにより、ワーナーの広大なサーバー世界に閉じ込められてしまうのだった!(ここは豪華なカメオ出演もお楽しみに)。
虫みたいな宇宙人が経営不振の遊園地を盛り上げるためにテューンズを拉致ろうとした96年版と比べると、この流れは時代を反映しているしリアリティもキープしている(ちなみにレブロンの演技もジョーダンよりだいぶ頑張っている)。そこからは期待通り、アニメ化したレブロンをバッグス・バニーがメッタメタに翻弄しながら観客を楽しませてくれるわけだが、その合間にドムとアル・G(=共通言語を持つ者同士)の交流を描くことで<親vs子>という対立構図を敷きつつ、テューンズの面々が集結する過程でDCコミックスのキャラクターを登場させたりと、惜しみなくワーナー商材を投入して観客を翻弄してくるので覚悟してほしい。
ワーナーの本気! 豪華すぎるカメオに目がワイリー・コヨーテ
あまり物語に触れると楽しみが削がれるのでこの辺で止めておくが、人生の全てをバスケに捧げた“キング”が未知の世界で、個性の塊のような仲間たちとゲームをプレーすることによって打ちひしがれ、学び成長する……。“神”が自身のカリスマでもって事態を解決する96年版では得られなかった感動が本作にはあり、それこそが最大の魅力でもある。
NBAファンにとってはチャールズ・バークレーやパトリック・ユーイングのような神クラスのサービスが無いのは寂しいが、『ゲースロ』や『ハリポタ』『マッドマックス』などの人気コンテンツが、まるで神社の節分祭のごとくバシバシ投げ込まれるわ端っこに常時チラチラ見切れてるわで、豪華さという意味でもまったく劣らない。
もちろん往年のファンにとっても、ついに活躍してくれるロードランナーや初登場なのに存在感がすごいゴッサマーなど、参加テューンズが増えたのは嬉しいところ。“ジョーダン”を意識したスペシャルゲストも(おそらくスベるのを覚悟の上で)登場するので、大いに期待して劇場へ向かおう。あのゴルフ好きシニカルおじさんがチラ映りするエンドクレジットも見逃し厳禁だよ!
『スペース・プレイヤーズ』は2021年8月27日(金)より全国公開
『スペース・プレイヤーズ』
バスケ界のスーパースター、レブロン・ジェームズと息子のドム。ある日、映画会社のAIスーパーサーバー“ワーナー3000”に吸い込まれてしまった2人。そこはキングコング、バットマンやジョーカー、『マッドマックス』や『マトリックス』に登場するキャラクター達が住む“バーチャル・ワールド”だった――。
その世界の支配を目論む男、アル・G・リズムは、システムに迷い込んだ息子のドムを誘惑し、父親レブロンと試合で戦うよう仕向ける。息子を助けるにはアル・G・リズムが揃えドムが作り出したゲームキャラクターのグーンスクワッド【最強の殺し屋軍団】に勝たなくてはいけない。
負ければ二度と元の世界には戻れなくなってしまう極限のゲーム……映画の最強キャラクターを仲間にして、究極のe-スポーツバトルに挑め!
制作年: | 2021 |
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監督: | |
出演: | |
声の出演: |
2021年8月27日(金)より全国公開