アサイラムの便乗(コロナ延期)シリーズ
「かのトム・クルーズ主演のアクション超大作、『トップガン』(1986年)の続編が、なんと30数年ぶりに製作される」──このビッグニュースを受け、低予算映画業界のマーヴェリックことアサイラム社が、ある作品をこの世に送り出した。その名も『トップガンナー』(2020年)。原題もそっくりそのまま『Top Gunner』である。
さて本作、本来ならば2020年6月24日に公開を予定していた『トップガン マーヴェリック』に公開タイミングを被せ、厚かましくも便乗商法に打って出る手筈だった模様。が、あいにくと新型コロナウイルスの影響で、本家本元の公開予定日が1年以上先送りとなってしまったため、本作だけがうっかり先走ったまま2020年6月23日にリリースされてしまったようだ。
先々月に紹介した『ワイルド・ブレイク』(2020年)と同じく、不可抗力の災難によって年単位でのフライングスタートをかましてしまった作品というわけだが、そもそもがアサイラム製のけしからんパチモン映画なので、そこに悲壮感の類いは皆無である。
超危険なウイルス兵器をめぐるロシア軍との攻防!
メキシコ・バハカリフォルニア州、アメリカ合衆国空軍の訓練基地では、才気あふれるパイロット候補生たちが日々鍛錬に励んでいた。
少々生意気で発展途上ではあるものの、卓越した操縦技術を持つスピールマン、マーカス、ブラウンの三人と、生真面目な整備員のバレット、そして鬼教官のヘリング大佐にケリー曹長。そんな彼らが切磋琢磨する空軍基地に、ある日突然、所属不明の最新鋭戦闘機ヴァルキリーが緊急着陸する。そして、ヴァルキリーから現れた海兵隊員ラッセン率いる特殊部隊の面々は、訓練基地の面々に驚くべき極秘事項を告白するのであった。
「ひとたび感染するやいなや、人体に血小板減少症を引き起こし、その後1時間以内には感染者を死に至らしめる」──そんな危険な殺人ウイルスを生み出すテロ兵器を、命からがらロシアから奪取してきたところだというラッセンたち。激しい敵の攻撃に遭い、もはや消耗し切っていた彼らは、やむを得ずこの訓練基地に逃げ込んだのである。加えてその小型兵器、一定時間内に所定の場で適切な処理を施さなければ、内部からウイルスが自動的に放出され、たちまち感染が世界中に広がる超危険物であるとのこと。
一刻を争う事態だが、ウイルス兵器の回収を企むロシア軍の追っ手は、もうすぐそこにまで迫っていた。また、折悪しく休暇期間に入っていたこの訓練基地の戦力といえば、3機のF/A-18(ホーネット)に、油圧ポンプが損傷したラッセンたちのヴァルキリー、そして兵士としてはヒヨッコも同然の若いパイロット候補生ばかり……。
果たして彼らはロシア軍の攻撃を凌ぎ切り、この世界の危機を救うことができるのだろうか……。というのが本作の概要である。
エリック・ロバーツ出演! 見所はかろうじて本家っぽい夕焼け
監督はダニエル・T・ラスコ。代表作は『アースレイジ 合衆国最期の日』(2013年)と『ロード・オブ・モンスターズ 地上最大の決戦』(2021年)になるだろうか。また、あのジュリア・ロバーツの兄であり、『ダークナイト』(2008年)から『シャークトパス』(2010年)、『ムカデ人間3』(2015年)など、名作からイロモノまで様々な作品で活躍を続けているエリック・ロバーツが出演している。
物語的にはなんら特筆すべき点の見当たらない、いつも通りのアサイラム製アクション映画である。勇気と反骨精神あふれる若者が、とりあえず登場する邪悪なロシア兵を、理解ある上官(大体この辺にキャリアのある俳優を起用)と共に叩きのめす、どうもどこかで何度か見たような展開が、大した意外性もなく続く。
低予算感は否めないとはいえ、中盤で戦闘機の空中戦をきっちり描いている点は好印象だ。やや機体の動きがのっそりしており、お世辞にも映像的な品質が高いとまでは言えないが、それでも様にはなっている。が、後半からは地上戦が主体となり、戦闘機の影が薄くなってしまっているため、せっかくの題材が少々もったいない気がしなくもない。
随所にねじ込まれた戦闘機の映像素材と、オープニングのちょっと本家『トップガン』っぽい夕焼けが見所の作品だろう。
文:知的風ハット
『トップガンナー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年7~8月放送
『トップガンナー』
米空軍基地で猛特訓を受けるマーカスたち4名のパイロット候補生は、ある日、いきなりの実戦に直面することに。彼らの基地に、敵から奪ったウイルス兵器を載せた戦闘機が不時着。さらに極秘兵器を奪回すべく、ロシアのMi-20戦闘ヘリ部隊、SU-57ステルス戦闘も襲来したのだ!
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年7~8月放送