「ヒット請負人」と「国民の彼氏」共演!
イ・ヨンジュ監督作品『SEOBOK/ソボク』が題材とするのは“永遠の命”である。大きく出た。が、そのテーマの大きさに、本作はあくまで真摯に向き合っている。
コン・ユ(『新感染 ファイナル・エクスプレス』[2016年]のお父さんだ)が扮する主人公ギホンは、“会社”と呼ばれる特殊機関の元エージェント。任務の中で自分が犯した罪に苦しみ、また不治の病に苛まれてもいる。
そんなギホンに、元上司から“仕事”の依頼が舞い込む。幹細胞複製と遺伝子操作で作られた特殊なクローン、ソボク(パク・ボゴム)の護衛だ。ソボクは人間とはみなされない“実験体”であり、投薬により細胞分裂を抑え続ける限り死ぬことはない。そしてその細胞は、あらゆる病気の治療に効果があるとされている。ソボクを狙うテロリストから彼を守れば、ギホンもまた死から逃れることができるのだ。
特殊機関(国家)、研究所、テロリスト、それぞれの思惑に、ギホンとソボクは翻弄される。過去のトラウマと未来への悲観で捨て鉢になっているギホン。研究室から出たことがなかったために心の中も“無菌”状態のソボク。一方は命が限られていることに傷つき、もう一方は自分が死なないという事実を深く考えざるを得ない。
迫力あるSF描写がそのままキャラクターの心理描写に
2人の心がすれ違い、ぶつかり、通い合う。それぞれが“命”に向き合う。その過程で生まれる喜怒哀楽が『SEOBOK/ソボク』の大きな魅力だ。ソボクが初めてカップラーメンを食べる場面はコミカルであり、同時にそれまで人間らしいことを何一つしてこなかった彼の人生の哀しみも伝わってくる。
もう一つの見どころは、ソボクの身に宿った超能力(念動力)。重量と圧力をコントロールしての破壊と暴力は、彼が怒りに目覚めるほどに過激なものになっていく。大友克洋のマンガを思わせるその描写は、リアリティがあるだけに胸に迫る。ここではスペクタクルがそのまま、キャラクターの心理描写になっているのだ。
コン・ユの熱演はもちろん、パク・ボゴムは純粋さと怒り、哀しみを抑えた演技で巧みに表現。単なる“見せ場主義”とは一味違う、精神性の高いエンターテインメントだ。
文:橋本宗洋
『SEOBOK/ソボク』は2021年7月16日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
『SEOBOK/ソボク』
余命宣告を受けた元情報局エージェント・ギホン。死を目前にし明日の生を渇望する彼に、 国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローン・ソボクを護衛する任務が舞い込 む。だが、任務早々に襲撃を受け、なんとか逃げ抜くもギホンとソボクは2人だけになってしまう。 危機的な状況の中、2人は衝突を繰り返すも、徐々に心を通わせていく― しかし、人類の救いにも、災いにもなり得るソボクを手に入れようと、闇の組織の追跡は更に激しくなっていく―
制作年: | 2021 |
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監督: | |
出演: |
2021年7月16日(金)より新宿バルト9ほか全国公開