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『スカーフェイス』過激なバイオレンスにセクシーなディスコ音楽! EDM界の巨匠ジョルジオ・モロダーの功績

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ライター:#森本康治
『スカーフェイス』過激なバイオレンスにセクシーなディスコ音楽! EDM界の巨匠ジョルジオ・モロダーの功績
『スカーフェイス』©1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

三人の鬼才が集結して作り上げた『スカーフェイス』

アカデミー賞受賞を5度逃していたアル・パチーノ。『ミッドナイトクロス』(1981年)が興行的に振るわず、起死回生のヒット作を欲していたブライアン・デ・パルマ。そして『プラトーン』(1986年)を自ら監督するチャンスを狙っていた脚本家時代のオリヴァー・ストーン。野心をギラつかせた三人の鬼才が集結して作り上げた、ギャング映画の金字塔『スカーフェイス』(1983年)。

『スカーフェイス』
Blu-ray&DVD 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年6月の情報です

トニー・モンタナの強烈なキャラクターと成り上がり人生、パンチの効いたセリフ、過激なバイオレンス描写、80年代マイアミを席巻した色鮮やかなポップカルチャー、「神に挑もうとする人間は破滅する運命にある」というギリシャ悲劇的な観念などが世界中の映画ファンを魅了している本作だが、ダンスミュージック界の巨匠ジョルジオ・モロダーが作曲したきらびやかな電子音楽も、本作の魅力を語る上で欠かせない要素のひとつである。

映画音楽でも活躍するEDMの先駆者、ジョルジオ・モロダー

作曲とプロデュースを手掛けたドナ・サマーの「アイ・フィール・ラブ」が大ヒットを記録。自身のソロアルバム「From Here To Eternity」や「E=MC²」も好評を博し、1970~1980年代のモロダーは電子音楽/ディスコミュージック界の売れっ子プロデューサーとして黄金時代を築いていた。

映画音楽の分野でも実力を遺憾なく発揮し、『ミッドナイト・エクスプレス』(1978年)でアカデミー賞作曲賞を受賞。『アメリカン・ジゴロ』(1980年)と『キャット・ピープル』(1982年)ではゴールデングローブ賞の作曲賞と歌曲賞にノミネート。

筆者私物

『フラッシュダンス』(1983年)の主題歌「フラッシュダンス – ホワット・ア・フィーリング」と、『トップガン』(1986年)の挿入歌「愛は吐息のように」で第59回アカデミー賞歌曲賞に輝いた。

モロダーは『スカーフェイス』でも第41回ゴールデングローブ賞の作曲賞にノミネートされている。ポール・ウィリアムズを迎えて『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)を撮ったデ・パルマだけに、本作へのモロダーの招聘にも強いこだわりを感じさせる。

『スカーフェイス』©1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED

『スカーフェイス』はモロダーがスコアの作曲のみならず、劇中で使用される主題歌/挿入歌もほぼ全て(フランク・シナトラの「夜のストレンジャー」を除く)書き下ろしたことが画期的だった。ミュージカルや音楽映画ではおなじみの手法だが、それをギャング映画のサウンドトラックに導入したことで、本作は『ゴッドファーザー』(1972年)や『グッドフェローズ』(1990年)とも全く異なるスタイルを確立させた。『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(1981年)のタンジェリン・ドリーム、『ブレードランナー』(1982年)のヴァンゲリス、『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984~1989年)のヤン・ハマーらと共に、モロダーは本作で「ネオン・ノワール」の音楽の礎を築いたとも言えるだろう。

『スカーフェイス』©1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED

「血なまぐさいバイオレンスとポップなディスコ音楽」という組み合わせは、一見ミスマッチに思えるかもしれない。しかしセクシーでゴージャスなモロダーのエレクトロニックダンスミュージックは、「欲が人間を変える」というテーマが物語の根底にある本作において、ギャングたちやエルビラ、トニーの妹ジーナを華やかで享楽的な世界へといざない、彼らをハイな気分にさせる重要な役割を担っているのである。

『スカーフェイス』©1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED

モロダーの音楽センスが冴え渡る珠玉のシンセ・スコアとボーカルナンバー

モロダーが作曲した「Tony’s Theme」は、イントロの反復フレーズがヘンリー・パーセルの「The Cold Song」を彷彿とさせる重厚なシンセ・スコア。トニーのキャラクターに「リチャード三世」の精神を投影したパチーノの演技も相まって、壮大なピカレスク・ロマンの幕開けを予感させる。一方「Gina’s And Elvira’s Theme」では、ジーナとエルビラに対するトニーの愛情を表現した美しいメロディを聴かせている。

バビロン・クラブのシーンなどで使われた劇中のボーカル曲は、モロダーのプロデュースのもと、6人のシンガーによって歌われている。この場をお借りして彼らのキャリアを簡単にご紹介していきたいと思う。

『スカーフェイス』©1983 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED

トニーの成り上がり人生が頂点に達した時に流れる本作のテーマソング「Scarface (Push It To The Limit)」を歌うポール・エンゲマンは、デバイスのフロントマンを務めたほか、1988年から1990年までアニモーションのリードシンガーとして活躍した。

 

「Rush Rush」は、ブロンディ解散後のデボラ・ハリーのソロデビューシングルとなったポスト・ディスコナンバー。バビロン・クラブが劇中に初めて登場するシーンで使われ、強い印象を残す。ハリーは『アメリカン・ジゴロ』の主題歌「コール・ミー」でもモロダーとコラボしている。

「Turn Out The Light」と「She’s On Fire」を歌うエイミー・ホーランドは、ドゥービー・ブラザーズのマイケル・マクドナルドのプロデュースでファーストアルバムをリリース。シングル「愛に賭けて」がスマッシュヒットした。「Shake It Up」と「I’m Hot Tonight」歌うエリザベス・デイリー(別名E.G. Daily)はシンガーとしての活動のほかに、『ベイブ/都会へ行く』(1998年)のベイブ役や『パワーパフガールズ』(1998年~)のバターカップ役など声優としても活躍。

バビロン・クラブの道化師オクタビオのショッキングな場面で使われた「Dance Dance Dance」を歌うベス・アンダーセンは、リマールの「ネバーエンディング・ストーリーのテーマ」で美しいデュエットを聴かせたほか、シングル「キャッ、とD・A・N・C・I・N’」と「オールウェイズ・マイン」が日本でCMソングに使われた。また、前述のデイリーと共に『誘惑』(1984年)のサウンドトラックにも参加している。そしてラテンポップ「Vamos A Bailar」を歌うマリア・コンチータ・アロンゾは『バトルランナー』(1987年)や『プレデター2』(1990年)などに出演していたので、見覚えのある方も多いのではないかと思う。

筆者私物

文:森本康治

『スカーフェイス』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:痛快!クライムムービー」で2021年6月放送

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『スカーフェイス』

1980年5月、反カストロ主義者としてキューバから米国に追放されたトニー・モンタナ。政治犯レベンガを殺害し、コカイン取引に手を染めた彼は麻薬王フランクの知遇を得る。だが、フランクは独断で高額の取引きを手掛けようとするトニーを邪魔に感じ始め、彼を暗殺しようとする。

制作年: 1983
監督:
出演: