キューブリック没後20年、今こそ天才の偉業に触れよう
『スパルタカス』(1960年)、『2001年宇宙の旅』(1968年)、『時計じかけのオレンジ』(1971年)、『シャイニング』(1980年)、『フルメタル・ジャケット』(1987年)……あらゆるジャンルの映画を手がけ、あらゆるジャンルの可能性を広げてきた映画の天才、スタンリー・キューブリック。
没後20年となる2019年は、世界各地でいろんなイベントや特集上映が開催される予定。そんななか、CS映画専門チャンネル ムービープラスがキューブリックについてのドキュメンタリー、『映画監督:スタンリー・キューブリック』を日本初放送!
本作をザックリ説明すると、キューブリックの生い立ちから全作品まで、キュキュッとまとめてサクサク解説する、キューブリック初心者向けのドキュメンタリー。登場するのはアメリカやイギリスの著名な映画評論家たちで、彼らがありったけの知識と語彙で作品の見どころや制作背景の解説をしてくれるというなかなかの親切設計だ。
天才監督はいかにして生まれたのか? その生い立ちに迫る
寡黙で内向的で映画ばかり見ている少年だったキューブリックは、13歳のときにカメラ好きの父親からカメラをプレゼントされたことでその生涯が決まった。プレゼントされたカメラはグラフレックスという当時の米国が誇る大型報道用カメラで、人間が構えるとどうしても低い位置となってしまう。「これこそがキューブリック作品に見られる地を這うようなアングルの元なんじゃないか?」と評論家。
ほかにも、父親に教えてもらったチェスにのめり込み、チェス大会にも出まくり賞金を稼ぎまくっていたキューブリック。「キューブリックはチェスから“先の先を読む”ということを学んだ。それこそがキューブリック映画における緻密な設計の元なのでは?」と評論家。
そんな感じで生い立ち部分にけっこうな時間を割いてくれていて、晩年の有名作品などはサラリとした扱いなのが本作の特徴。キューブリックが映画監督になる以前に手がけたドキュメンタリー『拳闘試合の日』(1951年)や、『空飛ぶ牧師 』(1951年)、『海の旅人たち』(1953年)などにも触れられていて、全作品を駆け足ながらも解説してくれるのはキューブリック初心者にはうってつけ。
SF映画、戦争映画、ホラー映画など、映画のジャンル革新をし続けたキューブリックの凄さ、そして最先端の作り手としての苦悩が手に取るようにわかる1本。「なんとなく小難しそうだし……」とキューブリック作品を敬遠していた人にこそ観てほしいドキュメンタリーとなっております。
文:市川力夫
特集:キューブリック没後20年
CS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年3月放送
【放送作品】日本初放送ドキュメンタリー「映画監督:スタンリー・キューブリック」、『時計じかけのオレンジ』、『フルメタル・ジャケット』