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新感覚“毒親”スリラー!『RUN/ラン』 ガチ怖サラ・ポールソン×車椅子 新人キャストの表現力

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ライター:#市川夕太郎
新感覚“毒親”スリラー!『RUN/ラン』 ガチ怖サラ・ポールソン×車椅子 新人キャストの表現力
『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

本作『RUN/ラン』は、全編を通してパソコンの画面上で進行していくサスペンス・スリラー『search/サーチ』(2018年)のアニーシュ・チャガンティ監督による最新作。『search/サーチ』では行方不明となった娘のPC、そしてSNSに片っ端から無断でログインして行方の手がかりを掴んでいく父親を描いたが、そんな姿に「いくら緊急事態でも娘からしたらたまったもんじゃないだろうな……」と思ったりしたもの。しかし、本作は前作を遥かに超える、行き過ぎた親と子の関係を描いていた!

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

前代未聞!“母親からの”脱出劇

下肢不自由により車椅子生活を送っているクロエ(キーラ・アレン)は、献身的に娘を支える母親ダイアン(サラ・ポールソン)と郊外の一軒家で仲睦まじく暮らしていた。大学進学を望んでいるクロエは、まもなく到着するはずの合否通知を待ち望んでいる。もし合格すれば、クロエにとって生まれてはじめての親元を離れた自立生活がスタートするのだ。それは母子にとっては寂しいことながら、共通の夢であった……はずだった。

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

そんなある日のこと、肢体不自由以外にも多くの持病を抱えるクロエに、ダイアンから新しい薬が差し出される。しかし、クロエはほんの些細な違和感を感じた。そして、ダイアンの目を盗んで薬の正体を調べると……なんと人間への投与は絶対NGの動物用薬だった!

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

というわけで、バリアフリー環境が整った絶対安心の我が家が、実は監獄だったことに気づいたクロエ。身体的にも満足に動けない状況で、いかにして母親の魔の手から逃げ切ることができるのか!? という、前代未聞の“母親からの脱出劇”が幕を開けるのだった。

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

ガチ怖サラ・ポールソン×実際に障がいを持つ新人の表現力!

まずはやっぱり、母親ダイアンを演じるサラ・ポールソンがすごい。クロエがパソコンでこっそり調べものをしているのを暗闇から監視しているシーンなんて、ほとんどオバケ。超怖い。映画『カッコーの巣の上で』(1975年)に登場した看護師長ラチェッドのオリジンを描くNetflixオリジナルシリーズ『ラチェッド』(2020年~)で演じたラチェッド役と同じ、ヤバい目つきをしている。チャキチャキと仕事ができて、人の良さそうな微笑みを携えながら平気で一線を超えてくるのだ。その見事な人道の踏み外しっぷりは『ミザリー』(1990年)のキャシー・ベイツに匹敵する。

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

そして本作を語るうえで、ここからがとても重要なこと。娘クロエ役を務めるのはオーディションで抜てきされた新人女優キーラ・アレンなのだが、彼女は実生活でも車椅子生活をしているという。なので車椅子の操作は当たり前にスムーズ、ときに驚くほどパワフルで、付け焼き刃的に訓練した役者ではとうてい敵わない表現力がある。実際に障がいを持った俳優が障がいを持った役を演じることは映画界ではまだまだ少ない現状だが、バリバリの娯楽作でこういった前例を積み重ねていくのを見るのは嬉しい。

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

さらに、アニーシュ・チャガンティ監督によると、最初の脚本はチャガンティ監督と共同執筆者のセブ・オハニアンという2人の健常者によって書かれた脚本だったため、まずは障害学の大学教授に読んでもらったという。そこで、無意識下によって差別的ともとれる場面を指摘され、脚本を書き換えたんだとか。「新感覚“毒親”スリラー」ともいえる娯楽度の高い本作だが、作り手たちの最大限の配慮と挑戦のもとで製作されたことも同時にお伝えしておきたい。

『RUN/ラン』© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

文:市川力夫

『RUN/ラン』は2021年6月18日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開

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『RUN/ラン』

郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし常に前向きで好奇心旺盛な彼女は、地元の大学進学を望み自立しようとしていた。そんなある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑のカプセル。クロエの懸命の調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だった。なぜ最愛の娘に嘘をつき、危険な薬を飲ませるのか。そこには恐ろしい真実が隠されていた。ついにクロエは母親から逃れようと脱出を試みるが……。

制作年: 2020
監督:
出演: