迷宮の果てには何がある?
2014年から始まったシリーズも2018年で大団円を迎え、すべての謎に決着がついたのだが、ここで、そもそもの始まりは何だったかをおさらいしておこう。
すべては、名前以外のすべての記憶をなくしたトーマスが、高い壁で囲まれた広場「グレード」に送り込まれてくるところから始まる。そこには森や畑や少年たちの建てた家があり、ひと月に1度、“ボックス”に入れられた新入りの少年と一緒に送られてくる必要物資で生活していた。リーダーは温厚な少年アルビ―、彼を補佐するニュート、年下で甘えん坊のチャック、乱暴者のギャリーら。足の速いミンホとベンが“ランナー”となり、昼間だけ開く扉から壁の中の迷路に入り、出口を探っていた。迷路には“グリーバー”と呼ばれる怪物が潜んでいて、見つかれば殺されてしまう。しかし、トーマスの登場で、保たれていた平和に異変が起き、閉まるはずの扉が閉まらず、グリーバーが飛び出してきて少年たちに襲いかかった。このままグレードに留まるか、それとも命がけで迷路に入り、出口を発見するか。意見が分かれるなか、最後の新入り、テレサが送り込まれ、事態は一気に最終局面へ。果たして少年たちは迷路を脱出できるのか?
原作はジェームズ・ダシュナーのヤング向けSF小説。系列としてはジェニファー・ローレンス主演の『ハンガー・ゲーム』や、ロイス・ローリーの『ギヴァー 記憶を注ぐ者』などと同じ、高度に科学が発達し、進化が行き着いた未来社会で、人類が生存を探るというディストピアもの。シリーズは『メイズ・ランナー 最期の迷宮』まで3作だが、一番面白いのは、やはり第1作の『メイズ・ランナー』だろう。特にメイズ(迷路)のビジュアルとゲーム感覚にスピード感をプラスしたところに新しさがある。ちなみに世界最古の迷宮は、ギリシャ神話にあるクレタ島のクノッソスの迷宮で、牛の頭をした怪人ミノタウロスが閉じ込められている。『メイズ・ランナー』の迷路に巨大なクモを模した怪物が隠れていて、出口を探ろうとする者に襲いかかるのは、この神話を踏まえたものだろう。
監督のウェス・ボールは1980年生まれ。フロリダ州立大映画製作科で学び、特撮・アニメの製作会社オッドボール・アニメーションを設立。オンライン配信の3D短編『Ruin』で注目され、『メイズ・ランナー』の監督に抜擢されて長編デビューした。シリーズ3作を通して監督を務めている。
主演のディラン・オブライエンは、1991年8月26日ニューヨーク生まれ。父親は『インフォーマント!』や『ファンタスティック・フォー』などのカメラ・オペレーターで、母親は元女優。12歳でカリフォルニアに移り、父親と同じカメラマンを目指して映画学校へ入るも、TVシリーズ「ティーン・ウルフ」の主人公の親友役を得て、俳優の道へ。『メイズ・ランナー』が初主演だが、14歳の頃から製作・監督・主演した短編をYouTubeで公開し、多くのフォロワーを獲得している。また、2019年3月22日(金)公開の新作『バンブルビー』では、バンブルビーの声も担当している。
紅一点テレサ役のカヤ・スコデラーリオは1992年3月13日イギリス生まれ。彼女のダークヘアとエキゾチックな美貌はブラジル人の母親譲り。TVシリーズ「スキンズ」で注目され、『月に囚われた男』でサム・ロックウェルと共演。『メイズ・ランナー』でスターとなり、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』でヒロインに抜擢された。
ニュート役のトーマス・ブロディ=サングスターは1990年ロンドン生まれ。『ラブ・アクチュアリー』のリーアム・ニーソンの義理の息子役を演じた天才子役。ギャリー役のウィル・ポールターは1993年ロンドン生まれ。『リトル・ランボーズ』の悪ガキ少年役で注目され、『ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島』などに出演。キャスリン・ビグローに抜擢され、『デトロイト』の人種差別主義の警官を演じて強烈な印象を残した。
若手俳優が集結した本作、いま一度観かえしてみるのはいかがだろうか。
文:齋藤敦子
『メイズ・ランナー』
生き残りたければ、巨大迷路の謎を解け!
さまざまなトラップが張り巡らされ、どんどん姿を変える巨大迷路に放り込まれた若者たちが、決死の脱出劇を繰り広げる。
制作年: | 2014 |
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監督: | |
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