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ラッセル・クロウがブチギレあおり運転!『アオラレ』は音楽でも“怒り”をあおり立てるサイコスリラー

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ライター:#森本康治
ラッセル・クロウがブチギレあおり運転!『アオラレ』は音楽でも“怒り”をあおり立てるサイコスリラー
『アオラレ』©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

ラッセル・クロウ、最凶怪演

『グラディエーター』(2000年)で第73回アカデミー賞主演男優賞を受賞し、『インサイダー』(1999年)と『ビューティフル・マインド』(2001年)でも同賞にノミネートされた名優ラッセル・クロウ。彼が本格的にブレイクする直前に、SFアクション『バーチュオシティ』(1995年)で異色の悪役を演じていたことをご記憶の方も多いのではないかと思う。

https://www.instagram.com/p/BiLUAkchJoU/

同作で彼が演じたのは、歴史上の凶悪犯罪者187人のデータをもとに作られた仮想空間上の人工生命体、シド6.7。キッチュな日本料理店で黙々と寿司を喰い、派手な緑色のスーツ姿で嬉々として暴れ回る光景は、一度観たら忘れられない妙なインパクトがあった。

あれから25年。2021年5月28日(金)公開のノンストップ・アクションスリラー『アオラレ』で、クロウはシド6.7を軽々と凌駕する最凶最悪のヒールキャラを怪演。観る者を震え上がらせる。

『アオラレ』©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

無礼なクラクションにキレたドライバーが暴虐の限りを尽くす90分!

本作でクロウが演じるのは、ある事情で仕事も家も全て失った男。失意のあまり信号待ちの交差点の車中で塞ぎ込んでいたところ、青信号になっても動かないことにイラついた後続車にクラクションを鳴らされ、彼の中で何かがキレてしまう。

男は女性ドライバーに無礼なクラクションの謝罪を要求するが、彼女はそれを拒否。その女性――シングルマザーのレイチェル(カレン・ピストリアス)もまた、離婚調停や母親の介護、失業、厳しい家計などの問題が山積みで、朝から虫の居所が悪かったのだ。

『アオラレ』©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

かくしてレイチェルの態度に腹を立てた男は、危険なあおり運転で彼女を執拗に追いかけ回し、半ば八つ当たりにも近い復讐心で、レイチェルの家族、友人、知人、さらに行きずりの市民にまで次々と危害を加えていく。

往年の名(迷?)悪役、シド6.7を超える最凶ヒールキャラ爆誕!

でっぷりとした体躯と据わった目で凶行を続けるラッセル・クロウが、とにかく怖い。前述のシド6.7が「凶悪犯187人のデータを元に作られた男」ならば、本作の怒れる男は『シャイニング』(1980年)のジャック・トランスと『ヒッチャー』(1985年)のジョン・ライダー、『ケープ・フィアー』(1991年)のマックス・ケイディ、『フォーリング・ダウン』(1993年)のD-フェンス、『ロードキラー』(2001年)のラスティ・ネイルの遺伝子を組み合わせた、執念深さと狡猾さ、残忍さと強靱さを併せ持つ“ヤバすぎるドライバー”と言っても過言ではないだろう。

『アオラレ』©2021 SOLSTICE STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

このような“怪物”を生み出してしまったのは、ストレスフルで確かなものが何もなく、運転マナーも悪化の一途を辿っている現代社会が原因なのかもしれない……と問題提起する、社会派サイコスリラー的な側面も持ち合わせた作品である。

男の激しい怒りを表現した、ソリッドなエレクトロニック・サウンドが唸る!

本作のハイテンションな音楽を作曲したのは、『PARKER/パーカー』(2013年)や『パピヨン』(2017年)、『エンド・オブ・ステイツ』(2019年)などで知られるデヴィッド・バックリー。ちなみに彼は本作以前にも、クロウが荒っぽい示談屋を演じた『ナイスガイズ!』(2016年)のスコア作曲をジョン・オットマンと共同で手掛けている。

筆者私物

今回、筆者は本作のサウンドトラックアルバムの差込解説書の中でバックリーにインタビューを行っているので、彼が『アオラレ』の音楽のポイントについて語ってくれたコメントを一部抜粋してご紹介したいと思う。

ラッセル・クロウが演じる男は、人生で最悪の状況にあって、完全に混乱していて、人間性を全く欠いてしまっている。(中略)男の怒りと狂暴さは曲作りのカギとなるものだった。暗く、いびつで、アグレッシブな音楽は、男のキャラクターにピッタリだ。僕はスコア全体を通してシンセサイザーなどの電子楽器を使う一方で、生楽器も少しだけ使うことにした。

……というわけで、本作のスコアはメロディ的な要素がほとんどないものとなっている。劇中ではドライバーの男が怒り狂って、次々と凶行を重ねる状況がノンストップで描かれるため、もはや悠長にテーマ曲を聴かせる余裕すらないといった趣のサウンドだ。畳み掛けるようなリズムと、歪んだ電子音、ノイズなどで構成されたバックリーの音楽が、物語に猛烈なスピード感と緊張感を与えている。インダストリアル・テクノにも通じる強烈なエレクトロニック・スコアを、是非サウンドトラックアルバムでも楽しんで頂きたい。

『アオラレ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:デヴィッド・バックリー
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3398

ちなみにエンドクレジットで流れるボーカル曲は、『さまよう魂たち』(1996年)や『ゾンビランド』(2009年)、『ゴーン・ガール』(2013年)などでも使われたブルー・オイスター・カルトの名曲「(Don’t Fear) The Reaper」のカヴァーで、演奏はギリシャ出身のドリームポップ・デュオ、キープ・シェリー・イン・アテネ。今日までに「At Home」(2013年)、「Now I’m Ready」(2015年)、「Philokalia」(2017年)の3枚のスタジオアルバムをリリースしているので、気になる方はこちらも要チェック。

文:森本康治

『アオラレ』は2021年5月28日(金)より公開

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『アオラレ』

美容師のレイチェルは今日も朝寝坊。あわてて息子のカイルを学校へ送りながら職場へと向かうが、高速道路は大渋滞。度重なる遅刻に、クビとなる。最悪の気分のまま下道を走るが、信号待ちで止まると、前の車は青になっても発進しない。クラクションを鳴らすがまだ動かない。イラついたレイチェルが追い越すと、ドライバーの男が「運転マナーがなっていない」と言う。レイチェルに謝罪を求めるが、彼女は拒絶して車を出す。息子を学校に送り届けたものの、ガソリンスタンドの売店でさっきの男に尾けられていることに気づく。店員は「あおり運転の常習犯よ」と警告。車に戻ったレイチェルはある異変に気付いた。が、時すでに遅し。信じられない執念に駆り立てられた男の“あおり運転”が、ノンストップで始まるのだった──

制作年: 2020
監督:
脚本:
音楽:
出演: