お笑い芸人、絵本作家、オンラインサロンのオーナーなど、幅広い分野で活躍するキングコング・西野亮廣さん。芸能界という枠を軽々と飛び越え多彩なコンテンツを送り出しています。そんな西野さんが、映画を一言でいうとどんな言葉になるのか?(インタビュー全3回)
バンクシーの“新ネタ”は毎回ちゃんとチェックして勉強してます
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』は本当に、バンクシーが人を巻き込む天才すぎる、見事だなっていう。そりゃ今のアートってこっちになるよねっていう感じでしたね。なんかもう「おぅ! おぅ!」ってずっと言ってましたね、映画館で。
―受け手がどうなるか? というところまで想定しているアーティストですよね。
つまり、昔の作家さんは一生懸命作品と向き合ってたはずなんですよ。バンクシーは違って、作品と向き合うのは当たり前の話で、作品を置きました、ここに作品を置いたら、人がどういう風に動くのか? っていう仮説を立てて、デザインして。「おおよそ人はこういう風に動くであろう、それを俯瞰で見た時にどういう風に映るだろうか?」って、なんかこう“二つ向こう”から見てるみたいな。で、基本的には絵本を出すときも、ビジネス書を出すときも、Webサービスを出すときも、映画を出すときも、そのやり方でやらないとバズらないよねっていう。そこのお手本みたいな人ですね、面白いです。
―「芸術テロリスト」みたいな言われ方もしていますが、そこは西野さんに通じるところもあるのでは?
僕、むちゃくちゃ意識してますよ。意識してるっていうか「どんな見せ方するんだろう?」「この手できたか!」みたいなのは。毎回、バンクシーの“新ネタ”はちゃんと。「なるほどなー」「おもしろいなー」っていうのは、ほんと勉強してます。好きですね。ステージが町になってるのがいいっすよね。
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芸人のステージがそもそも、テレビと劇場、ラジオぐらいしかなかったんで、「芸人ってこの3つの上でしか動いちゃダメなんだっけ?」とか思って。「もうちょっと、町とか地球とかっていう規模でできないっけ? 芸人の脳みそ使って大喜利があんだけ面白いんだから、じゃあスクランブル交差点で何をしたらオモロいか? っていうところの大喜利は、たぶん芸人は基本的に得意なはずである」と思って。それで、もうちょっと規模を大きくしよう、外に出ようと思ってやってたら、既にバンクシーが似たようなことをやってたっていう。なんかでもそこは……最高っすね。面白かったです。
―スタンスとしてバンクシーは叩かれることを恐れていない。そこは西野さんにもありますよね。
いや、もうどうでもよくて。それが例えば、1人目とか2人目に嫌われるのってグサッと刺さると思うんですけど、もう10万人くらいに嫌われたら、10万人が10万1人になろうが10万2人になろうが見た感じ何も変わらないんで、あまり気にならないじゃないですか。
あとは単純に、そっちに目を向けるんじゃなくて支持してくれる人を大事にする。自分には「応援するよ」って言ってくれる人がいるので、そこを大事にするっていう。そこさえ大事にしておけば、逆に活動は止まらないんで。また自分が次に「こうする!」っていうときに「行って来い!」って応援してくれるんで。だから、どこをターゲットにするかっていうのはありますよね。アンチは基本的にはもうターゲットにしてないですね。
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―「バッシングを恐れる人は成功を恐れているのと同じだ」という言葉もありますよね。
なるほど! でも毎日炎上とかしてると基本的に暖炉みたいな感じになっちゃって、燃えてるのがベースなので。消えてると「大丈夫か? 」ってなっちゃうので……だから燃えるのが怖い人は燃える回数をもうちょっと増やしてみると……“暖炉化”するといいと思います(笑)。「火事だな」にはならないんで、基本的に「ここは燃えてる場所なんで」っていう風になれる。
楽しい嘘は、正しい。
この間、都知事が「バンクシーの絵が東京で見つかった」みたいな写真撮ってたのとか、最高ですよね。もうあれ滑稽で。だって、そもそもバンクシーの絵じゃないかもしれないバンクシーっぽい落書きを、都知事がこう(指して)やってて、それがニュースになりーの、日本中巻き込みーのって。ここにバンクシーが登場してないんですよ? あれ1秒も時間かけてないのに、バンクシーの話題で日本が1回ワッって揺れた。
あと滑稽だったのは、ネズミか何かがカバン持って傘持って移動してるみたいな、あれがバンクシーの絵だったら、築地のネズミが出てきてお引っ越しさせられてて、しかも傘が黒かったのであんまり良い雨が降ってない。もう完全に東京都に対するアンチなんだけど、都知事の知識・情報が追い付いてないから「カワイイ」とかやっちゃってるんですよ。「ひっくるめて面白え!」と思って、なんか。もうひっくるめて作品。まとめて最高でしたね、それがニュースになってることとか。
―まさに“テロ”ですね。
テロですね!(笑)。むちゃくちゃ振り回されてるな、東京ボロ負けだな! って思いました、あの時。「やられた! 」って。だからその影響力というか、皆が作れるものでやってるっていうのが良かったんでしょうね、スプレーでできるものだっていうのが。
―それでは最後に、西野さんにとって「映画」とは?
「嘘」ですね。もうみんなで、大人が寄ってたかって相談して、会議して、痛い目にあって作る“嘘”です。「楽しい嘘は正しい」っていう、そこに尽きますね。嘘に救われることって結構あるんで。日常生活でなかなかうまいこといかなくて、辛いなぁとか思ったときの駆け込み寺がエンターテインメントの映画であるっていうことが、結構あると思うので、やっぱその嘘はいいなぁっていう。嘘を“作りにいく”っていうのはいいですね。作られてる方すべてを尊敬します。