フォックス対ライオン!?
ミーガン・フォックス主演、南ア・イギリス共作映画『ローグ』は、屈強な傭兵部隊と悪のテロ集団の攻防に、なぜか“最強のプレデター”ことライオンをぶち込んだ究極サバイバル・アクションだ。本格アクションほぼ未経験のセレブ女優に、潤沢とは言えないだろう予算……少し間違えればズッコケ映画になってしまう可能性は高かったと思うが、M・J・バセット監督の異色キャリアのおかげで、なんとも不思議な見どころのある一品に仕上がっている。
『トランスフォーマー』シリーズ(2007年~)や『ミュータント・タートルズ』シリーズ(2014年~)で知られ、韓国映画『長沙里9.15』(2019年)では従軍記者を熱演していたミーガン・フォックス。最近は、ヒップホップからポップ・パンクに転身したマシン・ガン・ケリーとのバカップルぶりでセレブニュースを賑やかしているが、女優としての実力に疑いはない(と思う)。
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そんなフォックスが「最強の傭兵部隊vs最凶の人食いライオン×テロリスト」と謳うアクションものに主演すると聞いたときは、正直なところ「すわ、2021年を代表するバカ映画誕生か!?」と歪んだ期待をしてしまったが、その予想はいろんな意味で裏切られた。ベタな銃撃アクションもあるにはあるが、本作は閉鎖空間と極限状況におけるアクション・スリラーでありながら、途上国における様々な社会問題と支配層の欺瞞を内包した、なんとも不思議な後味を残すおもしろ映画だったのだ。
アクションとパニックとスリラーを覆う動物保護のメッセージ!
お話としては、フォックス演じる主人公サムたち傭兵集団が誘拐されたお偉いさんの娘を奪還し報酬をゲットするべく奮闘するが、避難した小屋で待っていたのは、そこで繁殖・加工されていたライオンの生き残りだった……というシンプルなあらすじ。
サムたちは『エクスペンダブルズ』(2010年)の100倍はエクスペンダブルなガチ傭兵であり、命が軽々と奪われる野蛮世界でサバイブしてきた猛者揃いである。しかし、敵のテロ集団は実在するソマリアのイスラム過激派アル・シャバーブという設定で、傭兵メンバー内にも途上国の抱える人権問題を背負わされたような激重キャラがいたりして、抜けの良い“善対悪”の構図を避けている様子。
なんでも監督のM・J・バセットは若い頃に獣医を志し、子ども向けネイチャー番組の司会者をしていたこともあるという異色の経歴の持ち主で、女性に性転換したトランスジェンダーでもある。本作はサバイバル・アクション~アニマル・パニック~シチュエーション・スリラーという体裁ではあるものの、バセット監督の主張=動物保護、密猟組織撲滅の強いメッセージ性が映画全体に漂う、なかなかの変わりダネ映画なのだ。
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なお、ライオン(野生動物)の飼育や繁殖の問題に関する予習としては、Netflixオリジナルドキュメンタリー『タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』(2020年)を観ておくと良いかも。近年、日本でもエキゾチック・アニマルを個人で飼育する人が増えているが、その裏では多くの命が“動物ビジネス”の犠牲になっていることを改めて考えてほしい。
『ローグ』は2021年5月7日(金)より公開
『ローグ』
くせ者揃いの傭兵部隊を率いる強きリーダー、サム。彼女達は誘拐された政治家の愛娘を救出する為にアフリカの危険地帯へ降り立つが、テロリストらの熾烈な反撃にあって任務は失敗し、広大な大地に取り残されてしまう。部隊は命からがら廃墟に逃げ込むが、そこはかつて密猟者の拠点としてライオンの繁殖が行われていた場所であった。ひとまず敵影のない建物に安堵し休息する一同だが、怒り猛る野獣が物陰から虎視眈々と獲物に狙いを定めていた。テロリストの追手も忍び寄る中、部隊に残された弾薬はごくわずか……。果たして、サム達はこの世の地獄から無事に生還することが出来るのか。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
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2021年5月7日(金)より公開