人気長寿歌番組<ユーロビジョン>とは?
<ユーロビジョン・ソング・コンテスト>は、欧州放送連合が1956年から制作している歌番組だ。連合はヨーロッパの国々の放送局によって構成されており、年に1回欧州中で生放送される。今まで52カ国が参加していて人気もあるが、欧州圏外では認知度が低いようだ。
本作『ユーロビジョン歌合戦 ~ファイア・サーガ物語~』はその番組を題材としたNetflixオリジナル映画なのだが、米国内でも番組の認知度が低く、監督デヴィッド・ドブキンは脚本を読むまで番組の存在を知らなかったという。映画冒頭では、この大会で優勝し一番の大成功を収めたグループ、ABBAの「Waterloo」の1974年大会における歌唱シーンが流れる。
本家ユーロビジョンが後押し! コメディだけど忠実な描写も
ウィル・フェレル演じるラースはアイスランドの小さな漁村に住む男で、幼い頃からの夢であるコンテストでの優勝を諦めきれず、親から呆れられながらも音楽を続けている。彼は“ファイア・サーガ”なるユニットを幼馴染のシグリット(レイチェル・マクアダムス)と組んでおり、うだつの上がらない活動をしていたが、ある時ひょんなことからコンテストを勝ち進んでゆく。
映画としては、アメリカから見たステレオタイプなアイスランドいじり、例えば国民の半分がエルフの存在を信じているとか、ファレルの「HAPPY」のような世界的にヒットしたポップスよりも非常にドメスティックな楽曲を好んで聴いている、というような冗談が散りばめられたコメディ作品となっている。ただ、本家ユーロビジョン・ソング・コンテストの後押しもあってか、各国参加者のデフォルメは強いものの大会がどういうものなのかある程度忠実に作られており、全く馴染みのない自分にとってもわかりやすかった。
見苦しいほど必死な主人公を通して音楽の持つパワーをシンプルに表現
自分は音楽活動をやってきた中で、コンテストや賞レース的なものと関わったことがない。自らエントリーしたこともなければ、「入選しました」という連絡が来たこともないので、寂しいような関係ないような、もし選ばれたら選ばれたで嬉しいような妄想はしているのだが、何がなんでも賞を獲りにいきたいという強い気持ちはとりあえずない。
しかし、いわばラースはそういう気持ちとは真逆のマインドを持った存在である。見苦しいぐらいに「優勝したい」と願っている。この映画は、その気持ちの向かう先をとても感動的な形で描いていて、家族を含めた周囲の見る目が変わったり、大勢の聴衆がパフォーマンス一つで熱狂したり、関わる人々の気持ちを一つにしたりと、音楽の持つパワーをとてもシンプルに表現している。そういった一種のスポーツのような音楽の楽しみ方、自分が昔ワクワクしながらヒットチャートを見ていた頃の気持ちを思い出させてくれる映画だった。
と、ここまで書いて、私は奈良の自然が豊かな地域の高校へ通っていた頃にコンテスト的なものに2度エントリーしたことがあり、都会の人は楽器がうまくかつ垢抜けており、かなりプロみたいだなと思って、リハーサルの時点でかなり圧倒されたことを思い出した。
文:川辺素(ミツメ)
『ユーロビジョン歌合戦 ~ファイア・サーガ物語~』はNetflixで独占配信中
『ユーロビジョン歌合戦 ~ファイア・サーガ物語~』
世界最大級の歌合戦に出場するチャンスを手にした小さな町のデュオ。だが有力なライバルや邪魔者、舞台での思わぬ出来事が、夢をかなえたい2人の行く手を阻む。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |