アカデミー賞監督賞&国際長編映画賞ノミネート!
まだまだ収まる気配のないコロナ禍によって外飲食が制限され、家飲みしまくっている酒好きもいるだろうし、成り行き的に断酒しているという人もいるだろう。トマス・ヴィンターベアが第93回アカデミー賞の監督賞にノミネートされたマッツ・ミケルセン主演作『アナザーラウンド』は、改めて“飲酒”がもたらすアレコレについて考えることを促してくれるであろう、何かと窮屈な今だからこそ観たい作品だ。
人間は常に“ほろ酔い”状態がベター!?
本作でマッツが演じる歴史教師マーティンは“枯れたインテリ”的な雰囲気なのだが、仕事に情熱を失っていて生徒からの信望はなく、家族とも機能不全気味で、いわゆるミドルエイジクライシスな行き詰まり感を抱いている男。ヨレたシャツ姿でうつむき気味に歩くマッツは、思わず抱きしめたくなる枯れっぷりだ。
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あるとき職場の友人トミーやニコライたちとの飲み会で、某研究者による“飲酒がもたらすポジティブな効果”の学説が話題に。うまい肴といい酒のせいでグラスが進んだマーティンは、涙ながらに家族との現状を吐露し、後日なんと仕事中に“飲酒効果”を試してみることにする。
そして昼間から=仕事中に飲酒してみたところ、不評だった授業はエンタメ度が大幅にアップし大ウケ! 帰宅してからも妻との会話はスムーズになり、子どもたちとのコミュニケーションも活発になる。一定のルールを設けて飲酒してみたトニーたちも効果を実感している様子で、実験はさらにヒートアップ。当然、社会人としては完全NGな行為だし、予想通り血中濃度は徐々に上がってしまい、やがてアルコールの怖さを思い知ることになるのだが……。
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飲んだくれマッツが華麗なダンスを披露!
なんでも人間は生まれたときから血中アルコール濃度が不足しているとかで、普段からチョイ飲みして0.05%のほろ酔い状態を維持すれば、様々なことに良い効果が出るのでは? というのが“飲酒効果”の理論(ちなみに日本で酒気帯び運転とされるのは0.03%以上)。とはいえそのあたりの描写が特に凝っているとかいうわけではなく、抑制の効いたユーモアと悲劇的な展開の塩梅が絶妙で、それをマッツの存在感が支えている。もちろん監督賞にもノミネートされたのは、悲劇と喜劇のバランス感覚に優れ、カメラワークだけで見事に“酔い”を表現してみせたヴィンターベアの手腕が評価されたのだろう。
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マッツが同監督との前作『偽りなき者』(2012年)でも共演したトマス・ボー・ラーセンとの絡みも素晴らしく、打ちのめされるような展開からの享楽的で抽象的なクライマックスへの流れが、単なる悲喜劇にとどまらない唯一無二の作品へと導いている。飲酒のポジティブな効果と絶望的なリスクを示しつつ、人間いくつになっても成長できるのだという希望も与えてくれる、酒ガチ勢にも下戸にもオススメしたい作品だ。
メインビジュアルにもなっているマッツの“豪飲”カットは一体どのシーンで観られるのか? そしてマッツは自慢のジャズバレエも披露してくれるので、ファンの皆さんはお楽しみに!
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『アナザーラウンド』は2021年9月3日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開
『アナザーラウンド』
高校教師マーティンとその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の「血中アルコール濃度を一定の度合い保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、とんでもない実験に取り組むことに。仕事中でもお構いなしに酒を飲み常に酔った状態を保つと、授業も楽しく、生き生きとしたものになっていき、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生がいい方向に向かっていった。しかし、実験が進むにつれ、だんだんと制御不能になり……。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2021年9月3日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開