カリフォルニア辺りが滅びる恒例シリーズの1作
いっつも作品内で“家族愛”のテーマを描きつつ、とりあえず1作品に一度は地割れが起こるディザスター・パニック物を作っていることで有名な映画スタジオ<アサイラム社>から、またしてもカリフォルニア辺りが滅びる作品が登場した。その名も『デイ・アフター・トゥモロー2020』(2019年)。かのローランド・エメリッヒ監督作『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)をあからさまに意識したタイトルだが、原題は『ARCTIC APOCALYPSE』だ。
というわけで今回も早速、もはやアサイラム社がほとんど手癖で仕上げているパニック映画シリーズの内の一本を紹介していこう。
ハードな気候変動で北半球があっという間に氷河期状態に!
突如として発生した気候変動の影響から、北半球は1週間でたちまち豪雪に飲み込まれてしまった。気候データを収集していたマークとヘレンの夫妻は、この未曽有の自然災害に翻弄されながらも、事態を打開するべく奮闘する。
一方、旅行中に天変地異に巻き込まれてしまった娘のブリーとボーイフレンドのタイラー。近くのレッド・コミュニティ大学に一時避難した二人だが、そこに大雪崩が襲来。校舎は雪の中に埋もれる形となり、ブリーとタイラー、そして大学施設内に籠っていた学生はそのまま身動きが取れなくなってしまう。
ただちに我が子を救いに向かったマークとヘレンだが、その道中には幾多の予測不可能な困難が待ち受けていた……というのが本作の概要である。
監督はジョン・コンデリクとエリック・ポール・エリクソン。コンデリクは以前紹介した『ザ・トランスフォーム 地球外機械生命体』(2018年)の監督で、『エンド・オブ・カリフォルニア』(2019年)では編集を務めた人物だ。そしてエリクソンは、本作の共同脚本を兼任している。
衝撃のアサイラム・メタ台詞「お前はサメ映画の見過ぎだ」
言ってしまえば『デイ・アフター・トゥモロー』のスケールをそのまま小さくしたかのような作品である。単なる邦題と設定面の被りのみならず、雪の中に埋もれている自由の女神像のショットや、主要人物がオオカミに追い回されるシーンなど、その内容には既視感を覚える。とはいえ、氷結した湖の底に無数の車が眠っているシーンや、錯乱した生存者が大学を去っていくシーンなどは、それなりに印象的と言えなくもないだろう。
発泡スチロールめいた材質で作ってあるらしき“氷の壁”のセットが、主要人物に押された際ぐよんぐよんと揺れてしまっているシーンでは笑いを禁じ得なかったが、その程度の安っぽさならば、むしろ愛嬌として好意的に受け止められはしよう。もう一つ、無謀な行動に出ようとした脇役の一人を、「お前はサメ映画の見過ぎだ」という台詞で宥めるシーンのインパクトは、さりげないながらになかなか強烈である。
が、それよりも主要人物がどういう人物で何を目的に動いていたのか、キャラクター設定がいまひとつ分かりにくい点が問題だ。どうやらマークとヘレンは気象学者で、娘ブリーと共に収集した気象データを使えば世界を救えるようだが、どうもその辺りの説明をおざなりにしたまま話が進むため、本編開始からしばらくの間は「なんか学者っぽい家族とその恋人が、なんか凄い大雪のせいで困っているらしい」程度の漠然とした背景情報しか得られない。
また“雪崩に飲み込まれた校舎内にいる娘”というマクガフィンは中盤にはあっさり決着し、残りの尺ではひたすら“後半から唐突に現れた癖に、さも作品を代表する悪役のごとき振る舞いを見せるチンピラ”という割とどうでもいいキャラクターとの消化試合を描いている。そのため、鑑賞中には少々置いてきぼり感を覚えることがあるかもしれない。さらにもう一つ、毎度のことながら全体的に話運びが間延びしており、そのテンポの悪さはあまり褒められたものではない。
類似タイトル『デイなんちゃら』シリーズの数々に要注意
余談だが、この『デイ・アフター・トゥモロー2020』とは別に、『デイ・アフター・トゥモロー』に似た邦題の『デイ・アフター 首都水没』(2007年:原題『FLOOD』)、ならびに『デイアフター2020 首都大凍結』(2010年:原題『ICE』)というディザスター・パニック物が日本国内でリリースされている。
その他『デイ・アナザー・トゥモロー』(2008年:原題『LAVA STORM』)という類似品に加え、『デイ・アフター・トゥモロー2017』(2017年:原題『COLD ZONE』)、『デイ・アフター・トゥモロー2018』(2018年:原題『SHANGRI-LA:NEAR EXTINCTION』)、『デイ・アフター・トゥモロー2021』(2020年:原題『APOCALYPSE OF ICE』)なる代物までもが存在し、諸々ひっくるめてその目が滑るような紛らわしさが尋常ではないため注意しておこう。
文:知的風ハット
『デイ・アフター・トゥモロー2020』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送
『デイ・アフター・トゥモロー2020』
温暖化による氷河融解が引き金となり、NYやパリで超低温のストームが発生。瞬く間に地球は極寒の闇に閉ざされた。破滅を阻止するため、必死で気象データを収集する気象学者のマークと妻のヘレン。その頃、娘のブリーは雪崩で埋まった大学に、他の学生たちと共に閉じ込められてしまう。
制作年: | 2019 |
---|---|
監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年4月放送