同じ毎日なんてつまんない?
『パーム・スプリングス』最高! 少し気が早いけど、今のところ2021年で一番好き。ジャンルとしては「タイムループ×ラブコメ」です。しかも、真っ当すぎるほど真っ当な。
「なぜか繰り返される1日に迷い込んだ二人が、愛の力でループを抜け出す」
「あなたがいれば、退屈な毎日も色を変える」
なんていうコピーで紹介することも可能。ま、実際恋とか愛って日常を鮮やかにしてくれるし、そういう要素もサービスとしてある映画ではある。しかし、本作のフォーカスは「退屈」の方へ当てられてます。もしくは悲しみ、喪失、みたいな感情。僕はそう感じました。
なおかつ「退屈な日常だって愛おしいじゃないか」という解決にも向かわない。だって、毎日同じなんてつまんないじゃん、という態度。これらがこの映画の独特なムードを作っていて面白かった。それに浸るために観る作品だと思います。
楽しまなきゃ損! タイムループ全力エンジョイ男
舞台はカリフォルニア州南部、ロサンゼルスの東約160キロメートル、サンジャシント山の東麓に位置する砂漠の保養地、パーム・スプリングス。「都会からもっとも近いリゾート」みたいな所らしいです。日常のすぐそば、砂漠のオアシス、という舞台設定。タイトルにもなってるし、そこそこ重要な意味があるはず。
ループしちゃう1日は、とある結婚式の当日。これに参列した、この日の主役とはちょっと距離のある人間がループにハマッてます。これもまた面白い設定で、なんでお前なんだよ? っていう。ループに気づいてる主人公は、それに気づきつつ抜け出そうと足掻くのを諦めたのか、「もういいわ」と投げやり。しかし、それなりに楽しんで生きている男です。
そこへ、ひょんなことからループの輪へ落ちてきた女性が一人。家族から問題児扱いされてて、結婚式のムードに馴染めない花嫁の姉。彼女との出会いによって(もう何度も出会ってはいるわけだけど……)彼の運命も変わっていく、というお話。
劇中曲チョイスのセンスも抜群! 歌詞から物語を再考察できる?
前述したムードを作るのに、音楽が一役も二役も買っています。オリジナルの劇伴もいいけど、パトリック・カウリーやジョン・ケイル、The TOYS、10,000マニアックスから選曲するセンスがとても好きでした。Spotifyにプレイリストがありますよ。
エンドロールではダリル・ホール&ジョン・オーツの「When The Morning Comes」という曲が流れます。歌詞の意味を知ると、意味深な選曲であることが分かるかと。この曲、どこか強がっている主人公が描かれるんです。「僕はどこにも行けないから、どこへでも行ける」という一節が印象的。この1曲から物語を再考察することもできる。
軽めに観れます。上映時間90分だし、「寝るか死ぬかすると結婚式の朝に目が覚める」というルールも簡単。その設定を活かした「死すら軽い」世界がとても楽しいです。なんか最近、真面目な話が多くてヤんなっちゃうわという方は是非。
文:夏目知幸
『パーム・スプリングス』は2021年4月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
https://www.youtube.com/watch?v=tugkReK45P4&feature=emb_title
『パーム・スプリングス』
舞台は砂漠のリゾート地、パーム・スプリングス。妹の結婚式で幸せムードに馴染めずにいたサラは、一見お調子者だが全てを見通したようなナイルズに興味を抱く。
いい雰囲気になる2人だが、謎の老人が突如ナイルズを襲撃! 負傷したナイルズは近くの奇妙な洞窟へ逃げ込んでいく。ナイルズの制止を聞かずサラも洞窟に入ってしまい、一度眠りに落ちると結婚式の日の朝にリセットされる“タイムループ”に閉じ込められてしまった! しかもナイルズはすでにループにハマっていて、数え切れないほど同じ日を繰り返しているという。
2人で過ごす無限の今日は最高に楽しいものに思えたが、明日がこない日々は本当に大切なものを気づかせていく。果たして2人は、永遠に続く時間の迷宮から抜け出し、未来を掴むことができるのか!?
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2021年4月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開