ウィットに富んだプレゼンターたち
大量のウサちゃんを身にまとったメリッサ・マッカーシー×ブライアン・タイリー・ヘンリー
https://youtu.be/SimexBVPpCM
衣装デザイン賞のプレゼンターとして登壇したのは、『ある女流作家の罪と罰』で主演女優賞にノミネートされていたメリッサ・マッカーシーと『ビール・ストリートの恋人たち』のブライアン・タイリー・ヘンリー。なんと、二人ともキテレツな格好で登場。ブライアン・タイリー・ヘンリーの衣装は、コートや帽子からわかる通り『メリー・ポピンズ リターンズ』をモチーフにしていた。メリッサ・マッカーシーは、女王様のようなローブを身に纏い、そこに大量のウサギのぬいぐるみが縫い付けられていた。実は、今回のアカデミー賞にノミネートされていた『女王陛下のお気に入り』と『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』をミックスした衣装なのだ。ちなみに、『女王陛下のお気に入り』でオリヴィア・コールマン演じるアン女王は沢山のウサギを飼っている。
しかも、マッカーシーは昨日“ぬいぐるみ映画”『パペット大騒査線 追憶の紫影』でゴールデンラズベリー賞の最低主演女優賞に選ばれているので、もう色々面白い。「衣装というのは、映画の物語を伝える上で重要な役割を担っていて…」と、真顔で手元のウサギのぬいぐるみを撫でながら話し出すマッカーシー。いや、伝えすぎ!
メリッサ・マッカーシーはインスタに、舞台袖でブライアンとはしゃぐ姿を公開してくれている。
https://www.instagram.com/p/BuSXughBIhn/
この曲が聴こえたら海から出て!テッサ・トンプソン×マイケル・B・ジョーダン
https://www.youtube.com/watch?v=Ausv74pBn1I&index=22&list=PLDe0CguuqcMBR7zIv-w_UnpX5KRrzU7Jt&t=0s
『ブラックパンサー』が受賞した作曲賞のプレゼンターとして登壇したのは、同作のヴィラン、キルモンガーを演じたマイケル・B・ジョーダンと、『マイティ・ソー バトルロイヤル』でヴァルキリーを演じたテッサ・トンプソン。
「音楽は、聴くだけですぐに映画のシーンのイメージを与えてくれる」と話し始めるマイケル・B・ジョーダン。続けて、「例えばこの曲を聴くと(『ジョーズ』のテーマが流れる)いますぐ水から出なきゃという気持ちになる。」
さらにテッサが「この曲(『タイタニック』のテーマ)を聞くと、人々が恋に落ちて…やっぱり海で悪いことが起きる予感がする。」と話し、「結局音楽は、海がどれだけ恐ろしいものか僕らに教えてくれる」というようなジョークでまとめ、会場の笑いを誘った。
「ボヘミアン~」でヘドバンをした『ウェインズ・ワールド』コンビ
https://www.youtube.com/watch?v=8NDFG6V4haw
『ボヘミアン・ラプソディ』を観た人ならわかるネタなのだが、QUEENがマイク・マイヤーズ扮するレコード会社の社長に「ボヘミアン・ラプソディは売れない!クソ長いし、こんな曲で若者はヘドバンをしない!」と言われるシーンがある。しかし、それは1992年の映画『ウェインズ・ワールド』で、実際にマイク・マイヤーズとダナ・カーヴィが「ボヘミアン・ラプソディ」を聴きながらヘドバンをしているのをネタにしたセリフだった。20年以上前のネタ元のシーンを会場の画面に流しながら登場した2人が『ボヘミアン・ラプソディ』の作品紹介をした。
プレゼンターと受賞者が仲良しでホッコリ
熱烈なハグを交わしたサミュエル・L・ジャクソン×スパイク・リー
Our favorite #Oscars moment of the night. Congrats to first-time #AcademyAward winner Spike Lee! #BlacKkKlansman pic.twitter.com/S1xtbQhxYo
— BlacKkKlansman (@BlacKkKlansman) February 25, 2019
脚色賞のプレゼンターとして登壇したのは、公開間近となっている『キャプテン・マーベル』タッグ、ブリー・ラーソンとサミュエル・L・ジャクソンだ。ちなみに、サミュエルはスパイク・リーと超仲良し。
『ブラック・クランズマン』の文字が見えた瞬間に嬉しくなってたまらなかったのか、サミュエルは満面の笑みで受賞者の名前と作品名を絶叫!監督のスパイク・リーも、ついに自身の作品で悲願のオスカーを手に入れ、ステージに上がるや否や、サミュエルに飛びつき熱烈なハグを交わした。この二人の仲良しっぷりに、観客も大喝采。
メキシコ生まれのアミーゴ!ギレルモ・デル・トロ×アルフォンソ・キュアロン
監督賞のプレゼンターを務めたのは、2018年に『シェイプ・オブ・ウォーター』で初オスカーを手にしたギレルモ・デル・トロ。アカデミー賞の歴史上、メキシコ人監督で受賞歴があるのは、彼とキュアロン、そしてアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥだけだ。3人は「スリーアミーゴス」と呼ばれており、公私共に仲が良い。
登壇したデル・トロは「実は昨日まで熱っぽくて、とても体調が悪かったんだ」と明かしながらも、「でも、この賞を発表することはとても大事だからね」と続けた。封筒の中身は見ていないが、恐らくキュアロンが受賞すると信じていて、マブダチの彼に自らの手でオスカー像を渡したくて体を張ってきたのではないだろうか。
実際、キュアロンが受賞しメキシコに感謝の意を述べると、デル・トロと肩を組みながら、仲良くステージを後にした。可愛すぎか〜!
母国語であるスペイン語で挨拶をしたプレゼンターたち
https://youtu.be/cT1Eg6U4LU4
また、今年は何よりヒスパニック系の存在感が目だった。特に、『ROMA/ローマ』の作品紹介プレゼンターを務めたディエゴ・ルナ、外国語映画賞のプレゼンター、ハビエル・バルデムは母国語のスペイン語で挨拶をした。さらに、監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンも、英語とスペイン語が混ざった受賞スピーチをした。
冒頭で発表された助演女優賞のプレゼンター、ティナ・フェイ、マーヤ・ルドルフ、エイミー・ポーラーの3人組も、直前のアカデミー賞のゴタゴタをネタに「人気映画部門はありません。CM中の発表もしません。そして、メキシコは壁の建設費用を出しません。」とジョークを飛ばしていた。しかし、本当に今回のアカデミー賞ではメキシコ系の躍進が顕著であり、少なくとも映画業界は今後、メキシコ人を除外することなんてありえないだろう。
オリヴィアは笑いを誘い、スパイク・リーは激怒?
何より、今年のアカデミー賞のハイライトと言えるのはオリヴィア・コールマンとスパイク・リーのスピーチだろう。『女王陛下のお気に入り』で主演女優賞を見事受賞した彼女は、ステージに上がるとパニック状態に。「うわ、ここに上がるのって本当ストレスフルね…」から始まり、ありとあらゆる人に感謝を述べ始めた。「子供たち、観てるー!?あ、観てない?別にいいんだけど、もうこんなこと二度とないから」と、イギリス風のジョークを連発。
普通、あれほどまとまりなく、パニクったスピーチは“事故”扱いされる。しかし、オリヴィアのユーモアと愛嬌が全面的に感じられ、「本当にオスカーが獲れて嬉しいんだな」というのが伝わるスピーチだった。何より、会場からはずっと笑いが起き、彼女が皆に愛されているのが伺える瞬間だった。
ただ、ハッピーだった人もいればハッピーじゃない人もいる。「脚色賞」を受賞した『ブラック・クランズマン』のスパイク・リー監督は、『グリーンブック』が作品賞を受賞したと知ると、激怒したのだ。その理由は主に2つあり、1つは『グリーンブック』が黒人の視点からすると、決して良い印象の作品とは言い難いということ。
そしてもう1つは、30年前に監督作『ドゥ・ザ・ライト・シング』が、『ドライビング Miss デイジー』に作品賞を奪われたことが原因。彼はそれを『グリーンブック』に重ね、「僕はいつも、誰かが誰かを車に乗せて運転するような映画に負ける」と、コメントしていた。
しかし、そんなスパイク・リーも受賞スピーチでは2020年に迫る米国大統領選挙について「道徳的な選択をしよう、正しい行いをしよう(ドゥ・ザ・ライト・シング)!」と呼びかけ、歴史に残る感動的な瞬間を生み出したのだった。
https://www.instagram.com/p/BuSrlO3nZnx/
文:アナイス