瀧内公美と神尾楓珠が“裏アカ”で一夜限りの✕✕✕!?
2021年4月2日(金)から公開される、映画『裏アカ』。本作は木村大作や原田眞人ら日本を代表する名監督の下で助監督を務めてきた加藤卓哉の監督デビュー作だ。『裏アカ』という作品タイトルからは昨今流行りのSNSホラーか何かだと思われるかもしれないが、日本映画の伝統を受け継ぐ重厚な人間ドラマに仕上がっている。
主演は、『火口のふたり』(2019年)で第93回「キネマ旬報ベスト・テン」の主演女優賞を受賞した瀧内公美と、ドラマ『左ききのエレン』(2019年)で注目を集めた神尾楓珠。まさに旬の俳優陣が心に闇を抱える男女を好演し、冒頭からぐいぐいと物語に引き込まれる。
タイトルに冠されている“裏アカ”とは、自分のSNSのアカウントとは別に作られた“秘密のアカウント”のこと。主にストレス発散などの目的で、表のアカウントではできない過激な投稿に使用されることが多く、近年では投稿内容の過激度がエスカレートして逮捕されたり、被害を受けた相手から訴訟を起こされるなど社会問題にもなっている。
心に闇を抱えた女性が“裏アカ”の世界に足を踏み入れる……
東京のアパレルショップで働く真知子は最近までバイヤー(商品の仕入れ担当)だったが、商品が売れ残った責任を取る形で左遷人事として店長に異動となる。部下である若いショップ店員・さやかは自分のスタイリングをアップしてインスタのフォロワーを着実に増やしており、真知子の代わりに重要な会議に出席するようになっていた。相談できる友人もなく焦りと孤独を感じている真知子は、さやかに「店長もインスタやればいいじゃないですか。スタイル良いのに」と言われたことがきっかけで、なんとなく“裏アカ”を作り自身の下着姿をアップしてみることに。
すると、アップして間もなく男性ユーザーから続々とフォローされ、真知子の下着姿の画像が拡散される。「もっと脱いで」「きれいだよ」……そんなコメントやDMが次々と寄せられ、孤独から解放されたような気分になる真知子。そして、裏アカで印象的なコメントを寄せてきた“ゆーと”と、1回限りという条件で会う約束をする。
謎多き年下男、初めて触れる世界……SNSで出会った者同士の心の触れ合いとは
年下のゆーとは慣れた感じで真知子をリードし、意外にも大衆酒場に彼女を案内する。しょっちゅう停電するきれいとは言えない狭い店内、普段出会うことがない肉体労働者たちの喧嘩、店を仕切るおばちゃんの威勢のいい声。「あの店に行くと一番落ち着くんだ」と言うゆーとに、真知子は自然と心惹かれていく。しかし、ゆーとは情事のあとに「1回限りって約束でしょ」と冷たく言い放ってその場を去り、後から真知子とのハメ撮り画像を送信してくる。
ゆーとに振られた真知子の裏アカは、徐々にエスカレートしていった。“あの画像”をアップしてフォロワーが急増、彼らのコメントもより過激に彼女を煽ってくる。彼女は新たに過激な画像を撮るために見知らぬ男性と逢瀬を重ねるようになり、フォロワーのリクエストに応える形でどんどん性的な動画をアップするようになるのだった。やがて真知子は、ゆーとと意外な場所で再会することになるが……。
プロアマ問わず「本当に観たい映画作品企画」コンテスト準グランプリ
主演二人の熱演の素晴らしさはもちろんのこと、これまで日本映画の巨匠たちを助監督として支えてきた加藤卓哉の監督としての確かな手腕にも注目したい。脚本は『さよなら渓谷』(2013年)、『そこのみにて光輝く』(2013年)で知られる高田亮で、裏アカの不穏さ、男女の機微を見事に描き切っている。また、ふせえりや神戸浩ら曲者俳優陣が演じるキャラクターも、作品の中で重要な意味を持っているのでお見逃しなく。
本作品は、プロアマ問わず「本当に観たい映画作品企画」を募集している<TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2015>で準グランプリを受賞し映画化されたものだが、受賞当時より時間が経過し、2021年に公開されたこともプラスに作用している。もともと日本の社会人は会社以外で横のつながりを作ることが難しいと言われてきたが、コロナ禍でさらに外出が規制され、以前より孤独を強く意識している一人暮らしの若者などが増えているからだ。
漠然とした不安や悩みを抱え生きている人にとって、本作は何らかの励ましを与えてくれるものとなるはずだし、今後の生き方を考える機会も与えてくれるだろう。誰の心にも裏アカは潜んでいる――この言葉が心に刺さった人は、ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。なお作品のテーマにちなんで、映画公式“表”アカウントをフォローした人だけがアクセスできる“裏アカ”が存在するので、内容が気になった人はアクセスしてみては?
『裏アカ』は2021年4月2日(金)より新宿武蔵野館、池袋HUMAXシネマズ、シネクイントほか全国公開
『裏アカ』
アパレルショップで店長を務める伊藤真知子は、どこか満たされない毎日を送っていた。自分の意見は採用されず、年下のカリスマ店員・新堂さやかに仕事を取られ、ストレスが溜まる日々。そんなある日、さやかの何気ない一言がきっかけで真知子はSNSの裏アカウントを作り、胸元の際どい写真を投稿する。表の世界では決して得られない反応に快感を覚えた真知子の投稿はどんどん過激になっていき、それに呼応するようにフォロワー数も増えていった。真知子は「リアルで会いたい」「もっと自分を解放して」 そんな言葉に誘われ、フォロワーの1人”ゆーと”という年下の男と会うことになる。自分と同じ心の乾きを持つゆーとに惹かれていくが、その関係は一度きり。それがゆーととの約束だった。ゆーとと会えないことから、真知子は他の男と関係を持つようになるが、その心は満たされない……。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2021年4月2日(金)より新宿武蔵野館、池袋HUMAXシネマズ、シネクイントほか全国公開