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シュワルツェネッガー過渡期のアクション大作『イレイザー』今こそ再評価! 時勢を先取りしたシュワ史的にも重要な一本

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ライター:#てらさわホーク
シュワルツェネッガー過渡期のアクション大作『イレイザー』今こそ再評価! 時勢を先取りしたシュワ史的にも重要な一本
『イレイザー』© Warner Bros. Entertainment Inc.

みんな大好きアーノルド・シュワルツェネッガーがワニと戦うことでおなじみ『イレイザー』。あとは皆さん、何をご記憶だろうか。シュワルツェネッガーがバカデカい武器を両手に構え、並み居る敵をなぎ倒す。シュワルツェネッガーが飛行機から飛び降りる。ワニ以外はだんだん『コマンドー』(1985年)の話をしている感じになってきてしまったが、今回は1996年公開の超大作『イレイザー』である。

『イレイザー』
Blu-ray ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
Eraser © 1996, Package Design © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

『ターミネーター2』以前・以後で変わるシュワ作品の傾向

シュワルツェネッガー作品は1991年の『ターミネーター2』(以下『T2』)以前・以後という分類ができるのではないか、と考えることがある。前期シュワルツェネッガーは『コマンドー』に『プレデター』(1987年)、そして『レッドブル』(1988年)と、何しろあまりに無骨なアクション・スター路線を驀進していた。どちらかといえば、バカな中年男性やバカな中高生がメインターゲットであったこの時期、しかし『ツインズ』(1988年)などのコメディにも手を伸ばし、上記以外への観客層の拡大を周到に狙ってもいた。そしてついに殺人マシーンとしての有無を言わさぬ暴力性と、そしてある種間抜けなアイドルとしての可愛げという、相反する魅力を同時に体現するという離れ業をやってのけた。それが『T2』だった。

シュワルツェネッガーの異常なキャラクター性がここに完成を見たわけだが、しかし問題はその後だ。『T2』以後のシュワルツェネッガーは可愛げ方向にずいぶん舵を切った。たとえば『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)、『トゥルーライズ』に『ジュニア』(いずれも1994年)などを観ても、それは明らかだ。笑いもすれば家庭の問題に悩みもし、さらには子どもまで産んだ。シュワルツェネッガーだって人間なのだ、と言われればもちろんその通りだと思いもした。ただ、かつて表情ひとつ変えず、ものすごい身体で大暴力を炸裂させていたあの頃は、もう帰ってこないのかもしれない。そう思うと何だか寂しくもあった。

そこへドカンとやってきた『イレイザー』は嬉しい一本だった。本作でシュワルツェネッガーが演じるのは政府の秘密工作員、ジョン・クルーガー。巨大犯罪に対する証人を保護するエージェントである。対象者の名前も住所も経歴もすべて消去して、新たな人物として生まれ変わらせることでこれを守る。何しろ全部消してしまうから「イレイザー(消去人)」と呼ばれていると。このハードな設定はどうだろう。もちろんいつも通り、気が効いているのかいないのか判然としないシュワルツェネッガーのひとことギャグなどもあるにはあるが、基本的には黙々と仕事をする。

『イレイザー』Eraser © 1996, Package Design © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

万人向けに転じる以前のテイストを色濃く残す、シュワ的に重要な作品

そんな主人公が保護することになるのは、巨大軍事企業に務めるリー・カレン(ヴァネッサ・ウィリアムズ)。大企業の内部告発者たる彼女にしても、単にシュワルツェネッガーに守られるだけのお人形としてではなく、強い意志と信念を持ったもうひとりの主人公として描かれる。取ってつけたようなロマンスが入れ込まれることもなく、言ってみればプロ同士が協力して巨悪を討つという、実はわりと今風の仕上がりの本作。そのあたりちょっと早すぎたかもしれないと思わなくもない、実のところかなり大人っぽい『イレイザー』である。ジェームズ・カーンとジェームズ・コバーンのWジェームズが客演、揃って華を添える。そのあたりもやはり渋い。

『イレイザー』Eraser © 1996, Package Design © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

とはいえそこは我らがシュワルツェネッガー主演作であるから、全然大人っぽくないアクションの見せ場にも事欠かない。物語上のキーアイテムでもある最新兵器、必殺レールガンを両脇に抱えてクライマックスで撃ちまくるシュワルツェネッガーの勇姿はどうだろう(実際のレールガンは全然こんな武器ではないらしいのだが、このさい細かいことは抜きだ)。ジム・キャリー主演の『マスク』(1994年)をバカ当たりさせた監督チャック・ラッセルの手腕も確かで、観れば観るほどもうちょっと評価されてもいいんじゃなかろうか、『イレイザー』……と思わされるのであった(かつて俊英と呼ばれたラッセルだが、本作以降はもうひとつパッとしない。世の中間違っていると言わざるをえない)。

『イレイザー』Eraser © 1996, Package Design © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

ある種、万人向けに転じた『T2』以後のシュワルツェネッガー作品のなかで、それ以前のテイストを色濃く残す『イレイザー』。実は非常に重要な映画である。これよ! この感じよ! と、今から25年前に初めて観た際にはずいぶん喜んだことを、ここに思い出して記しておきたい。

『イレイザー』Eraser © 1996, Package Design © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

文:てらさわホーク

『イレイザー』はCS映画専門チャンネル ムービープラス【副音声でムービー・トーク!】で2021年3月放送

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『イレイザー』

防衛兵器会社サイレックス社の社員リーは、最新鋭兵器“レール・ガン”にまつわる陰謀の証拠が入ったディスクを盗み出す。イレイザーことクルーガーはリーの過去を消して、安全な場所に彼女の身柄を預けた。一方、証人保護プログラム下に置かれた証人が次々に殺される事件が発生する。

制作年: 1996
監督:
出演: