ダニエル・ラドクリフ、今回もカラダ張ってます!
ご存知ダニエル・ラドクリフが、またしてもブッ飛んだ出演作チョイスでド肝を抜く。『ハリー・ポッター』シリーズ(2001~2011年)卒業以降、アンニュイ寓話スリラー『ホーンズ 容疑者と告白の角』(2013年)や屍体・友情・放屁コメディ『スイス・アーミー・マン』(2016年)、実録アパルトヘイト脱獄モノ『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』(2020年)など、いろんな意味で骨太なキャリア構築に挑戦しているラドクリフ。そんな彼の最新公開作『ガンズ・アキンボ』は、サイコな殺人ゲーム集団によって両腕に銃を固定されてしまった(ガンズ・アキンボ=2丁拳銃の構え)、平凡なヤサ男の崖っぷちバトルを描くアクション・コメディだ。
今回ラドクリフが演じる主人公は、課金ゲームアプリをシコシコ作っている三流プログラマー、マイルズ。彼は『グーニーズ』(1985年)のマイキー少年よろしく吸入器が手放せない喘息持ちだが、スマホやラップトップが手放せないネット中毒者であり、電脳の肥溜めで日々憂さ晴らしをしているトロール野郎だ。
ある日、違法な殺人ゲームをネット配信している<スキズム>をSNSでボロクソに叩いていたところサイコなボスの怒りを買い、ボルトで両腕に銃を固定された上にゲームに強制参加させられてしまう。しかも最強プレイヤーのニックスが対戦相手にあてがわれ、パニクる暇もなく這々の体で逃げ惑うことに……というお話だ。
マイルズの部屋には『ランボー』(1982年)や『コマンドー』(1985年)のポスターが額装されているあたり、いわゆる映画クラスタの考えたオタク像であることがわかる(ちなみに彼の部屋のモニターにチラリと映るのは某ヴァンダミング・アクション映画)。ゆえにゲーム性の高いテーマの割にはミレニアルズ・ムービーというノリではなく、微ディストピアな世界観や倫理破綻した登場人物など、20世紀のソレを引きずっている感……もといオマージュを捧げている。
サマラ・ウィーヴィング最高! ファン爆増まちがいなしの良キャラを熱演
ヘタレな主人公が、ごっつぁん展開もありつつ成長していく物語は日本の少年マンガなどでも定番ネタだ。しかし本作は、ヒッチコックも多用した“巻き込まれ”展開をベースにしつつ、テン年代以降のポップカルチャーに加えて80~90年代アクション映画のご都合展開を拝借した、ネアカなオタクが作ったパーティームービーといった趣が強い。
情け無用のデスゲーム要素は『バトルランナー』(1987年)や『バトル・ロワイアル』(2000年)、ピロリン的効果音や画面上に表示されるポップアップテキストなどのゲーム要素は『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010年)、近接格闘をミックスした銃火器アクション要素は『ジョン・ウィック』(2014年)の影響か。なお終盤には『マスターズ/超空の覇者』(1987年)ネタを強引にぶち込むなど、なかなか好き放題やっている。
そしてダメ地味なマイルズの代わりに物語を随所で盛り上げてくれるのが、サマラ・ウィーヴィング演じるニックス。ヒューゴ・ウィーヴィングの姪っ子という下駄を必要としない才能と存在感で多方面から引っ張りだこのサマラだが、野蛮な殺人マシーンを演じる本作では極悪ビッチになりきれない素の表情もチラ見えしていて、新たなファンを獲得しそう。
ちなみにマイルズの元カノのノヴァは、ブーたれつつも献身的(でビビッドな髪色)なアジア系女性という、どステレオタイプの根強さを物語るキャラ設定。ともあれ、演じるナターシャ・リュー・ボルディッゾは探しても意外といないタイプの一重美女なので要チェックだ。
そんな本作の監督ジェイソン・レイ・ハウデンは、悪魔を召喚してしまったナードなブラック・メタル少年たちを描いた『デビルズ・メタル』(2015年)で、同郷の大先輩ピーター・ジャクソン監督の『ブレインデッド』(1992年)などから受け継いだであろう悪趣味バイオレンス魂を炸裂させていた人。もともとピージャクが設立した<WETA>社などでVFXを手がけていただけあって、低予算でもチープさを感じさせない手腕が随所に光る。縦横無尽にアングルをグリグリ変えるカメラワークもゲーム感が強いものの、とにかく視覚的に飽きないので結果オーライといったところか。
風刺したかったであろうポイントに作品自体が半分飲み込まれていたり、細部の描写から監督自身が抱える問題意識の薄さが滲み出ていたりとツッコミどころも多々あるのだが、もし両手に銃を固定されたらめちゃくちゃ不便! ということは嫌というほど伝わってくるのだった。
『ガンズ・アキンボ』は2021年2月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
『ガンズ・アキンボ』
ゲーム会社のプログラマー、マイルズはネットのコメント欄に過激な書き込みをする“クソリプ”で日々の鬱憤を晴らしていた。ある日、殺し合いを生配信する闇サイト「スキズム」でクソリプ祭りをしていたマイルズは、闇の組織に襲撃されてしまう。目を覚ますと、マイルズの両手にはボルトで拳銃が固定されていた!! さらに「スキズム」に参加し最凶の殺し屋ニックスと戦って 24 時間以内に勝てと命令される。彼女のノヴァも人質にとられてしまい、逃げ場なし!! 果たしてマイルズは、二丁拳銃(=アキンボ)を武器にこの無理ゲーを攻略し、彼女を救うことができるのか―!?
制作年: | 2020 |
---|---|
監督: | |
出演: |
2021年2月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開