MCUドラマに抜擢された気鋭監督の最新作
『アベンジャーズ』シリーズ(2012年~)などのサム・ウィルソン/ファルコン役で知られるアンソニー・マッキーと、『フィフティ・シェイズ』シリーズ(2015年~)のジェイミー・ドーナン共演で話題の『シンクロニック』。監督はオスカー・アイザック主演のMCUドラマ『ムーンナイト』への参加が決定した気鋭、アーロン・ムーアヘッドとジャスティン・ベンソン。ダークなムードに『ブレードランナー 2049』(2017年)のテイストも感じられる、若いアイデアとハイクオリティな映像が光るSFスリラーです。
本作の主人公は、ニューオーリンズで救急隊員として働くスティーブとデニス。喧嘩もするけど長年親友同士のいいコンビで、家族ぐるみの仲。ある日二人は、奇妙な事故現場に遭遇する。遺体が現実では考えにくい死に方をしているのだ。しかもタイプは違えど、周辺で謎の変死体事件が多発。どの現場にも「シンクロニック」とパッケージされたドラッグの空き袋が落ちていた。
こいつがもたらす幻覚作用が原因だと突き止めたスティーブが試しに食ってみたら、7分間だけ過去にタイムスリップ! まさしくブッ飛ぶドラッグというわけ。若者の間で流行るのも頷ける(正直あったらやってみたい)。そんな折、スティーブに病気が見つかる、デニスの娘は行方不明、てな感じで物語は進んでいきます。
もし「シンクロニック」が摂取できたら、どの時代に行きたい?
プロットのネタの多さと広げがいのあるキャラがいっぱい登場するので、ドラマ化しても良さそうなパッケージだと感じました。逆に言えば2時間弱という映画の枠の中では描ききれなかった、まだまだ掘りがいのある物語が隠れているとも言える。ちょっともったいない。演出も、淡々としながら要所にクスッと笑える演出やメタギャグなんかも入るので、シリアスになりすぎず見易いんだけど、どっちつかずな印象も。もっとダークに突っ走ってもよかったのでは。もしくは、せっかくタイムスリップするなら派手にしっちゃかめっちゃかやってもよかった。
やっぱり、1話毎に雰囲気を変えられるドラマの方が合ってたか? とはいえ監督が有望株と言われる所以は分かった。器用そう。ドラッグが効いてきて、周りが次第に過去の風景へと変化していく様子はとても気持ちいいし、カッコいい。現実がパラパラと剥がれ落ちていく。こんな風に暮らしから離れてみたいものである。
もし僕らが「シンクロニック」を手に入れて摂取したなら、どの時代へ飛んで、どんな風景を目の当たりにするのか。パンデミックのない世界ならどの時代だっていいかもと思うけど、行ったら行ったで今のこの世界の良さが感じられるのかもしれない。
文:夏目知幸
『シンクロニック』はヒューマントラストシネマ渋谷で2021年2月5日(金)~2月10日(水)、2月26日(金)~3月4日(木)上映(シネ・リーブル梅田は上映日未定)
『シンクロニック』
ニューオーリンズの救急隊員で長年の親友であるスティーブとデニスは、連続して発生している奇妙で陰惨な事故の現場に到着する。現場で発見されたシンクロニックと呼ばれる非合法の謎のドラッグがもたらす幻覚作用が原因だと判断される。ある日、デニスの長女が突然姿を消してしまう。スティーブは、その失踪に例のドラッグが関係していると気付き、自ら効果を試すことに。その薬を服用したスティーブが体験したのは幻覚ではなく、7分間だけ別の時代へ移動するタイムトラベルだった……。
制作年: | 2019 |
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ヒューマントラストシネマ渋谷で2021年2月5日(金)~2月10日(水)、2月26日(金)~3月4日(木)上映(シネ・リーブル梅田は上映日未定)