平成最後にして最大の茶番劇が今、幕をあける!
埼玉県民が東京都民に虐げられる架空の日本を描いた原作漫画をベースに、埼玉と千葉のどちらが先に東京への通行手形制度を廃止させ、東京・神奈川に次ぐ第三の県になれるか……というオリジナルの地方戦争物語を加えた本作。
埼玉を毛嫌いする東京都知事の息子で東京屈指の名門校の生徒会長・壇ノ浦百美を演じるのは二階堂ふみ。埼玉県民でありながら都民として百美の高校に潜り込み、埼玉の下克上を狙う麻実麗役にはGACKTを起用した。
二階堂が男役、GACKTが高校生役という、どう考えても無理な設定ながら違和感を感じさせず、抜群の演技力でぶっちぎった両者の役者魂は圧巻の一言。さらに、麻実麗の強敵となる千葉解放戦線のリーダー・阿久津翔を演じた伊勢谷友介の怪演も見応えたっぷりだ。
奇想天外なストーリー展開と役者たちの熱演、そしてCGを駆使したゴージャスな映像が相まって、B級を徹底的にやりきればA級になる! ということを証明した極上のエンターテインメント作品に仕上がっている。
「埼玉なんて言っているだけ口が埼玉になるわ!」
本作の見どころと言えば、何と言っても強烈な“地方ディス”フレーズの数々だろう。「草加煎餅」や「池袋」など埼玉に所縁あるキーワードを織り交ぜた的確なディスには爆笑必至。埼玉のみならず、千葉や茨城など関東ヒエラルキーの下層に位置される県までまとめてディスるパワフルさで観客を笑いの渦に巻き込んでくれる。
また原作でお馴染みの台詞だけでなく、脚本家・徳永友一が新たに加えた名台詞の数々にも注目いただきたい。魔夜の世界観に敬意を払いつつ、徳永らしくアレンジされたインパクト大のディスフレーズは原作ファンもきっと満足できるはずだ。
実は奥深い? 物語に隠されたメッセージ性
大茶番劇の本作を真剣に分析する事自体がナンセンスかもしれないが、劇中で扱っているテーマは単なる埼玉ディスにあらず。地域格差や地方離れ、他文化に対する理解の大切さなど、現代の社会問題を(一応)反映している。
特に、東京以外を切り捨ててきた百美が、麗と共に埼玉の地を訪れることで地方の価値に気づき「それぞれみんな素晴らしいんだ……」と悟るシーンは、自分たちとは異なる文化(広く言えば人種や宗教まで)を異物として排除しがちな人々に突きつけたくなる名台詞だ。とはいえ「意外と真面目な映画なのかな?」と思わせつつ、その5秒後には猛烈にくだらないシーンが鉄砲玉のように飛んでくる緩急のついた演出が、本作のニクいところである。
埼玉を徹底的にディスることで、逆に埼玉愛を見せつけるという荒技を成し遂げた本作。そのあふれんばかりの郷土愛に触れることで、観客もそれぞれ、自らのルーツへの誇りを呼び起こされることだろう。最後まで観客を飽きさせないハイテンションかつノンストップな傑作コメディを、ぜひ大型スクリーンで!!
『翔んで埼玉』は2019年2月22日(金)より全国公開