キアヌ ・リーヴスとアレックス・ウィンターがメタル大好き高校生に扮し、原始から地獄まであらゆる場所に行ったり来たりするSFコメディシリーズ『ビルとテッド』。なんと2021年、2作目『ビルとテッドの地獄旅行』から29年の時を経て最新作『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』が公開されるということで、前2作をおさらい!
1作目のオーディションにはリバー・フェニックスやショーン・ペンも参加!?
記念すべき第1作『ビルとテッドの大冒険』(1989年)は、なんと2688年の世界から唐突に幕開け。なんでも、2688年の世界はすべてが美しくなにもかも満たされた世界なのだが、これはすべて1988年に生きる高校生コンビ、ビルとテッドのバンド「ワイルド・スタリオンズ」の素晴らしい音楽が作り上げたものだったとか。しかし、1988年の歴史のレポート発表会で成績が悪いとワイルド・スタリオンズが解散してしまう! ということで、バカと世界を救うために未来からひとりの男がやってくる……というストーリー。
ビルとテッドはワイルド・スタリオンズで共にビッグになろうと夢見ているが、楽器も下手クソだし、そもそもギター以外のメンバーもいない。しかし彼らにとってそんなことはどうでもよく、「ヴァン・ヘイレンをメンバーに引き込めばいいんじゃね!?」と本気で話し合ったりする。この途方もないアホ具合! しかも、2人組主人公ならたいてい性格は正反対の凸凹コンビであったり、ボケとツッコミ的役割があったりするものだけど、このふたりは性格がほぼ同じという異様さ。ことあるごとにハイタッチし、一緒にエアギターでピロピロピーとやりあう仲の良さ。同じテンション、同じ知能、同じ言語感覚で、互いを貶したりすることはない。そんな彼らの姿勢は本シリーズのもっとも重要な台詞でありテーマである「お互いにエクセレントであれ(Be excellent to each other)」を体現している。
ちなみに、当初の脚本ではビルとテッドは軟弱な見た目でジョックスに虐められたりするシーンがあったんだとか。しかし、リバー・フェニックスやショーン・ペンも参加したという今考えると豪華すぎるオーディションの結果、当時22歳のキアヌ ・リーヴスと21歳のアレックス・ウィンターが抜擢されることに。すると、「このふたりが演じるビルとテッドはいじめられないよね」ということで初期設定が何もかもが吹き飛び、よりアホさが加速しちゃったという。
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そんなふたりだから、何が起きても動じない。未来人がやってきて彼らの力で過去へタイムスリップすることになっても絶好調で、ビリー・ザ・キッドからソクラテス、ジャンヌ・ダルクまでもを半ば強引に現代に連れてきて、ショッピングモールに連れていってしまったりとやりたい放題なのだった。
お互いが“エクセレント”であれば、たとえ言葉が通じなくてもわかりあえる
そして、第1作のヒットを受けて2年後に公開されたのが『ビルとテッドの地獄旅行』(1991年)。前作でワイルド・スタリオンズが無事解散の危機を脱したため、2691年の未来はロックでピースな世の中となっていた。
しかし、そんな優しい世界が気にくわなくてしょうがない男デ・ノモロスが武装発起。ビルとテッドを抹殺するため、20世紀初頭のカリフォルニア州サンディマスに殺人ロボが送られる。ということで、序盤から速攻で殺されてしまうビルとテッドなのだった。
とはいえさすがのビルとテッドで、死んだといっても相変わらずのハイテンション。浮遊する魂となって生きている人間たちにイタズラしたりと、死後の世界を満喫する。
誰とでも仲良くなれてしまうビルとテッドは前作と同様。今回はなんと『ダイ・ハード2』(1990年)でテロリストのリーダーを演じたウィリアム・サドラー演じる死神ともお友達に。この死神、イングマール・ベルイマン監督の『第七の封印』(1956年)に出てくる死神をモロにパロディしたもので、最初は「私とのゲームで勝ったら現世に戻してやる」とやたら上から目線だった。しかし、あっさりビルとテッドに敗北し、あまりにも負けず嫌いで何度もゲームをやり直すという、死神史上もっとも可愛げのある死神になっている。
新規のお友達はほかにもいて、高度な知能すぎて「ステーション」という言葉だけで意思の疎通が図れる異星人ステーションなんかも登場。じゅうぶんハチャメチャだった第1作をもすべてフリにし、ありとあらゆる要素を詰め込んだ大変景気の良い続編だ。
未観の人は「バカが世界を救う」なんて、今の時代じゃ笑えないんじゃないか? と思うかもしれないが、ビルとテッドは知能は低くても知性は備わっている。とてつもなくバカで愛らしく、どこまでも誠実で優しい。どこかの政治家のように他者を下品に愚弄したりはしない。それどころか、お互いがエクセレントであれば、たとえ言葉が通じなくてもわかりあえることもある、という大事なことを教えてくれる。実にエクセレントな映画なのだ。
文:市川力夫
『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』は2020年12月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』
「ビルとテッドの音楽が将来、世界を救う」そう予言されていた伝説のロックバンド“ワイルド・スタリオンズ”。曲作りに励み、待ち続けること30年。人気も年月と共に落ち込み、今や応援してくれるのは家族だけ。そんな2人のもとに未来の使者が伝えにきたことは、残された時間が77分25秒しかないという衝撃の事実。一秒でも早く曲を完成させないと、世界は消滅してしまうというのだ。ビルとテッド、そして彼らの娘たちは「世界を救う音楽」を作るため、モーツァルトやルイ・アームストロング、ジミ・ヘンドリックスなど、伝説のミュージシャンたちを集めて歴史上最強のバンドを結成しようと、過去へ未来へ時空を駆け巡る! どうなる地球、どうなるビルとテッド! 果たして、この世界を<音楽>で救うことはできるのだろうか!?
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2020年12月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開