聖夜の東京を絶望が襲う……! 2020年12月4日(金)から公開の映画『サイレント・トーキョー』は、多くの人でにぎわう東京で爆破テロが起こったら? という非日常、しかし身近に潜む恐怖を99分で描ききった怒涛のサスペンス・エンターテインメント。そんなスピード感あふれる物語に“痛み”や“揺らぎ”をもたらしているのが、日本を代表する錚々たるキャスト陣だ。
「SP」シリーズ(2007年~)で知られる波多野貴文監督が現代社会に痛烈な警鐘を鳴らす本作で、東京で起きた連続爆破テロ事件の容疑者・朝比奈仁を演じる佐藤浩市、爆破テロ騒ぎに巻き込まれる主婦・山口アイコを演じる石田ゆり子、そして事件を追う刑事・世田志乃夫を演じる西島秀俊が、撮影の裏話や互いの関係性、見どころなどを語ってくれた。
「いい意味で“怪しい作品”になってくれれば」(佐藤)
―波多野組はいかがでしたか?
石田:初めてご一緒させていただいたのですが、本当に、すごく気持ちのいい監督さんだなと思いました。役者の気持ちをとても大事にしてくれて、生理的にこうはできない、ということは絶対にさせないというか。これが波多野組かと。とても気持ちのいい幸せな現場でした。
西島:今回は波多野さんの一番の真骨頂とも言える大きな舞台の大作で、アクション作品ということで、個人的にもすごく楽しみにしていました。撮影現場で、かなり細かく表情から体の動きまで演出してくださったので、前回はコメディだったということもあって、印象が全く違いましたね。
佐藤:波多野さんが演出をしていた「コールドケース」(WOWOW)はプロデューサーも顔なじみだったので、シリーズの1話分だけゲストで出演させてもらったんです。その時に初めて波多野さんとご一緒したのですが、その時のご縁があっての今回だったんですよね。
―佐藤さんは本作の主役ということで、ゲスト出演の時とは雰囲気が違ったかと思うのですが、今回は監督とどんなお話をされましたか?
佐藤:今回は主役らしい役ではないので、主役としてどうやって成立させようかという部分と、出番が少ない中での重さの持たせ方というか、そういうものがお客さんの中にどういう風に残るかなということは監督と話し合いました。小説のキャラクター設定から変わっている部分についても。原作からあえて変えているということも含めて、どうやって整合性を取らせるのかというディテールについてはかなり監督とお話しましたね。
―具体的にはどんな部分のディテールを深めていきましたか?
佐藤:正直言って戯曲は舞台だから成立する“大きな嘘”であって、舞台上と客席との距離だと成立する嘘が、映像というある種のリアリズムになると難しさを伴うことが多々あるんです。それは三谷幸喜監督の作品でも同じことが言えるし、今作にも結構、そういった難しさがありました。その部分ですよね。それをふっ飛ばしてでも走るという、いい意味で“怪しい作品”になってくれればいいなと。怪作になるためにどうしたらいいかを考えた時、僕は少ない出番の中で“高倉健さん”にならなければならないと思いました。
「お二人とは正直、もっと共演したかったなというのが本音です(笑)」(西島)
―西島さんが演じた世田は、どのような役と捉えて、どこを大事に演じられましたか?
西島:世田は過去に、ある事件で首に傷を負い、今の状況にあるんですけれど、そのことは映画の中では説明されていない。なので、それをしっかり内側に持って、色んなイメージをして撮影に望んでいました。
―石田さんが演じられた山口アイコという人物は、シーン毎に全力で、さまざまなな表情が出てくる役かと思いますが、どのように解釈して演じられましたか?
石田:一見、どこにでもいる普通の主婦のようなのですが、心の中に“ある想い”が潜んでいて、この作品を通して私は恐怖を感じました。もし、この物語と同じようなことが東京であったら本当に怖いですけれど、でも他人事ではないなというか、考えさせられましたね。
―共演されたキャストの皆さんの印象はいかがでしたか?
石田:皆さん、とても素敵な方々で。台本上、それぞれのパートがあるような形だったので、撮影をじっくりご一緒する機会が少なかったんです。なので、こういう風に物語にみんなが関わっているということを、完成した映画で観られるのを楽しみにしています。
佐藤:僕は西島くんとは2本目の作品だけど、今回はあまり絡みがなくて。ゆり子さんは以前から知っているので、すごく懐かしさもあれば、大好きな女優さんでもあるし。久々にお会いできて嬉しかったです。
西島:浩市さんとゆり子さんとは一瞬交差するんですが、ほとんど絡まず、正直もっと共演したかったなというのが本音です(笑)。
―大規模な撮影が行われたそうですが、現場はいかがだったでしょうか?
西島:撮影にには1000人以上の方が、毎週末参加してくださって。なかなか大変な撮影だったのですが、本当にただただ感謝しかないという感じです。充実した、すごいシーンが撮れているんじゃないかと思っています。
―セットを設営した足利での撮影では爆風で倒れたり、アクションめいたこともあったと思いますが。
西島:グリーンバック、合成の部分が多かったので、“ここにあのビルがあって”とか“ここにモニターがあって”とか、渋谷のスクランブル交差点をイメージしながらの撮影は色々と大変だろうなと思っていたんですが、実は結構楽しくて。みんなも「だんだん色んなビルが見えてきた」って(笑)。そういう話をしながら、とても面白い撮影を行いました。
「楽しんでいただきながらも、何か“小さな小骨”が喉元に刺さってくれれば」(佐藤)
―この映画をどんな方々に観ていただきたいですか?
佐藤:この映画に内包するテーマがあるにせよ、エンターテインメントなんです。映画である以上、エンターテインメントとして観ていただいた先に、何か喉元にちょっとだけでも引っかかる物があるとしたら、それが何なのか、ということ。それは僕が先ほど言ったような、世界中で起こっている様々な問題をただの対岸の火事で済ませずに受け止めることだと思うし、それこそがこの映画がもたらすものだと思うので、それを感じていただけたらいいなと。
―この映画で描かれているテーマはとてもシリアスなものですが、どのように感じていらっしゃいますか?
石田:今後起こるかもしれないという、とてもリアルさも感じますし、もしクリスマスに実際こういうことが起こったらと考えると、そのときに人は、私はどうするんだろうかと、色んなことを考えますよね。そんな、様々な要素が入った作品だと思っています。エンターテインメントとしても目が離せないと思うので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
―最後に、これから映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。
西島:人間ドラマ、それからミステリー、そして大規模な大作の面白さを持っている作品です。ぜひ世田と一緒に、誰が犯人なのか、この物語の決着がどうやってつくのかを楽しんでいただけたらと思っています。
佐藤:皆さんで楽しんでいただきながら、何か小さな小骨が喉元に刺さってくれればいいなと思っています。ぜひ劇場で楽しんでください。
『サイレント・トーキョー』は2020年12月4日(金)より全国公開
『サイレント・トーキョー』
12月24日、東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入る。半信半疑で中継に向かった来栖公太は、そこにいた主婦・山口アイコとともに犯人の罠にはまり、実行犯へと仕立てられてゆく。その様子を朝比奈仁が静かに見つめるなか、爆発は起きた。そして次の犯行予告が動画サイトに上げられる。「標的は渋谷・ハチ公前。要求は首相との生対談。期限は午後6時」。独自の捜査を行う刑事・世田志乃夫と泉大輝、不可解な行動をとるIT企業家・須永基樹、イヴの夜を楽しみたい会社員・高梨真奈美、そして一帯を封鎖する警察、事件を一層煽るマスコミ、騒ぎを聞きつけた野次馬たち。様々な思惑が交差する渋谷に“その時”が訪れる。それは、日本中を巻き込む運命のXmasの始まりだった。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2020年12月4日(金)より全国公開