あのSF大作の続編にアサイラムが便乗しないわけがない!
時は2016年、あのローランド・エメリッヒ監督の手により、SFアクション超大作・『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が公開された。同じくエメリッヒ監督がかつて手掛けたあの『インデペンデンス・デイ』(1996年)の新作、それも20年越しに誕生した続編ということもあり、大きな注目を集めた“リサージェンス(復活)”。あいにくと作品の評価自体はそこそこ止まりで終わってしまったものの、当時の映画好きの間に多かれ少なかれ衝撃を与えたことは間違いないだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=5BK1IY6TQxU&feature=emb_title
そして、もちろん米国の製作会社・アサイラムもまた、上述の『リサージェンス』と同年に、なにやらうさんくさいSFアクション映画をリリースしている。その名は『インデペンデンス・デイ2016』。原題もズバリ『INDEPENDENTS’ DAY』と、独立を記念するどころか下手すればそのまま叩き潰されかねないようなタイトルで攻めてきているのがポイントだ。
というわけで今回は、アサイラム流・独立記念日こと『インデペンデンス・デイ2016』を紹介していこう。
……なお、本作の少し前に『インデペンデンス・デイ2014』(2013年)なる邦題の作品が日本でリリースされているが、こちらは『インデペンデンス・デイ』はおろかアサイラムとも特に関係のないカナダ映画である。気をつけよう。
言い分が理不尽すぎる! SNSで関わりたくないタイプの“言いがかりエイリアン”が人類を襲う
突如として世界各地に謎の大型飛行物体が出現。彼らは自らを“オリオン”と名乗り、なんらかの目的から人類との平和的外交を望む者だと主張しているようだが、その話は要領を得ず、まるで真意がつかめない。それどころか彼らは、あくまで調査目的で人類が放った偵察機を、一方的に敵対宣言だと解釈して撃ち落としたあげく、地球人に対して武力による干渉を強行。「あと5日以内に人類すべてが地球上から撤退しなければ、問答無用で滅亡させる」と宣言し、地球人をなかば強制的にほかの惑星へと移住させるための輸送艇を、世界中に派遣するのであった。
現職の大統領をホワイトハウスごと巻き込んで殺害するような凶行に走る一方で、平和的姿勢の証明だとして、新大統領の息子の足を治癒してみせるオリオン。彼らにペースを握られ後手に回りつつも、エイリアンの正体を探るべく総力を挙げて対応するアメリカ合衆国。その間にも各地に潜伏していた民兵組織<ファーストアース>が、オリオンに対して独自に反撃を開始したため、事態はさらに複雑化。各陣営の思惑が交差する中、ついにオリオンが目論む計画の全容が判明する……というのが本作の概要である。
本作において最も印象的なのが、やはり登場するエイリアン“オリオン”の横暴さだろう。彼らはアメリカ合衆国が宇宙船に偵察機を近づけただけで逆上し、「自分たちは平和的な目的のために来訪したのに襲われた。人類は凶暴だ」などと高圧的にのたまった上に、地球人の弁明も待たず、世界中の政府機関と軍事施設を、無実の職員ごとまとめて一掃してしまう。そのくせ自分たちは「人類は世界を荒廃させた」などと説教を行う始末。
その後、地球人を新天地に移すための輸送艇とやらを世界各国に派遣したまではいいものの、なぜオリオンが人類を地球から引き離す必要があるのか、一体どこに移そうというのか、その辺りについてはまったく具体的な説明がない。これらの蛮行には、さすがに作中のキャラクターからも「なにが平和的な目的だ」と毒づかれるほどだ。
実際、「オリオンは決して人類に友好的な種族などではなく、その裏には真の目的がある」ことが中盤以降に明かされるため、作品としてはむしろその描写に破綻がなく結構なことなのだが、それにしてもオリオンの理不尽極まりない言い分には見ていて逆に笑いがこみあげてくる。少なくとも、彼らはSNSなどで絶対に関わりたくないタイプのエイリアンであることは確かだろう。
アサイラムのファンには安心してオススメできる(アサイラム基準での)秀作!
さて一本の映像作品としては、規模まで考慮すれば“まずまず”といったところだろうか。序盤の軍とエイリアンによる航空戦は意外にもなかなかの出来だったが、それからは大したアクションもなく、基本的にはアメリカ合衆国政府の生き残りとオリオンの駆け引きを中心に話が動いていく。クライマックスには再びモンスター・パニックめいたアクション要素が挟み込まれるが、とってつけたような印象は否めない。
それでも全体的なテンポはそう悪くなく、なんだかんだ二転三転する展開は「まるで見られない」というほどのものでもないため、アサイラム作品好きならばまったく問題なく見られる一本ではあるだろう。特に、本作のラストでオリオンのリーダーが迎える、ずいぶんとオマヌケな結末は必見だ。
ケツをひっぱたいてやりたいE.T.どもが続々登場する、この『インデペンデンス・デイ2016』。独立記念日でなくとも、ぜひ鑑賞しておきたい作品だ。
文:知的風ハット
『インデペンデンス・デイ2016』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年11月放送