2020年も無事開催! スペイン発シッチェス映画祭からの厳選上映
『ココディ・ココダ』は、スペイン・バルセロナ近郊で毎年開催されているシッチェス・カタロニア国際映画祭(通称シッチェス映画祭)で上映された、スウェーデン、デンマーク製のホラー映画です。シッチェス映画祭は割とホラーやSF、ファンタジーなどの映画に門戸をひらいている映画祭で、いわゆる“ファンタスティック映画祭”の一つ。日本の『リング』(1998年:中田秀夫監督)『座頭市』(2003年:北野武監督)が過去にグランプリを獲っています。
★いよいよ10/30より開催!★ 東京@ヒューマントラストシネマ渋谷:10月30日(金)~11月12日(木)■名古屋@シネマスコーレ:11月7日(土)~11月27日(金)■大阪@シネ・リーブル梅田:10月30日(金)~11月12日(木) https://t.co/vrOlvQxdWQ
— シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション (@sitges_fanta) October 18, 2020
そして日本でも、この映画祭で紹介されたホラー系のジャンル映画のいくつかを<シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション>と称して特集上映しており、2020年はその中の1本として『ココディ・ココダ』も上映されることになったわけです。
タイトルの意味はニワトリの“コケコッコー”にちなんだ不気味な民謡
本作のタイトルの意味なんですが、原題は『Koko-di Koko-da』。ただし「Cocococodi, Cocoda」とつづくる“コケコッコー(ニワトリの鳴き声)”の意味で、これが歌詞に伝われているフランス民謡(日本では「夜が明けた」として紹介)が、この映画のテーマ曲になっています。
キャンプに出掛けた夫婦が夜明けに、3人組のサイコキラーと彼らが飼っている獰猛な犬に殺されます。しかし、殺されたと思ったら夜明けのテントの中で目が覚める。夢? と思ったら、またあの3人と犬が現れ夫婦を襲う。これが繰り返されていく。そう、夫婦はこの恐怖が繰り返される時間逆行のループに巻き込まれるのです。
一体なぜ? 実は、この夫婦は3年前、ある悲劇があって8歳の娘を失っていました。その悲しみとトラウマで夫婦仲はぎくしゃくしています。そんな過去がこの怪異と関係があるのか?
殺人鬼ホラー? ダーク・ファンタジー? 不思議な感動を呼ぶ衝撃のラスト
“時間逆行のループ”というと、話題の『TENET テネット』(2020年)やホラーでいうと『ハッピー・デス・デイ』シリーズ(2017~2019年)などを彷彿させますが、僕は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)も思い出しました。ただし本作はキャストになじみがないし、またアメリカのホラー映画とは違う独特のムードがあるので、ポップコーンを食べながらキャーキャー叫ぶようなノリでもない。一体どうなるの? と見入ってしまいました。そして、この民謡が何度も繰り返されるうちに、ちょっと不気味なメロディに聴こえてきます。例えば、山奥で殺人鬼が「かごめかごめ」を歌いながら襲ってきたら。本当に怖いですよね。そんな感じ。
さらにこの3人組が、それこそティム・バートン風というか『悪魔のいけにえ』(1974年)のあの家族というか、「不思議の国のアリス」とかに出てきそうな感じです。そう、リアルな殺人鬼ホラーというよりダーク・ファンタジーです。とても怖いのですが過激なスプラッター・シーンはほとんどなく、雰囲気と異常なシチュエーションでゾッとさせてくれます。これ以上はネタバレになるので詳しくは書きませんが、なぜこの夫婦にこのような事件が起きたのか? が示唆された時に、ああ、そういうことか……と腑におち、妙な感動がありました。
事件が夜明けに起きることと、主題歌がコケコッコー=夜明けの鳴き声に触れていることから。“夜明け”が本作のテーマです。曲の使い方とか、ちょっとアーティスティックな見せ方とかは『ミッドサマー』(2019年)にも通じるものがあります。観終わった後、あの歌のメロディを口ずさんでいました。なんか心にひっかかる、不思議な味わいがある映画です。
文:杉山すぴ豊
『ココディ・ココダ』は2020年10月30日(金)より「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」で上映
『ココディ・ココダ』
愛娘を亡くした夫婦が2人の関係を修復しようとキャンプに出かけるが、3人のサイコパスと人喰い犬に襲われて惨殺される。それもエンドレスに何度も……。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年10月30日(金)より「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」で上映