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無敵のおてんば探偵ミリボビに胸熱!『エノーラ・ホームズの事件簿』まるで少女漫画みたいな冒険活劇

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ライター:#野中モモ
無敵のおてんば探偵ミリボビに胸熱!『エノーラ・ホームズの事件簿』まるで少女漫画みたいな冒険活劇
Netflixオリジナル映画『エノーラ・ホームズの事件簿』独占配信中

原作は人気ヤングアダルト小説! ホームズの妹が母親探しに獅子奮迅!!

言わずと知れた名探偵の代表的存在、シャーロック・ホームズ。イギリスの作家アーサー・コナン・ドイルが19世紀の終わり頃から20世紀のはじめに発表し、大ベストセラーとなった推理小説のキャラクターだ。その人気は21世紀に入ってからも衰える兆しを見せず、舞台や映像、漫画やゲームなどでたびたび新しいホームズが世に送り出されてきた。

ホームズという魅力的なキャラクターは、ドイルの小説を原作とした作品だけではなく、別の作家によるホームズを題材にしたパロディやパスティーシュ作品も次々と生み出すことになった。もしホームズに年の離れた妹がいたら、という発想でおてんば少女探偵の冒険を描く『エノーラ・ホームズの事件簿』もそのひとつ。原作はナンシー・スプリンガーによる人気ヤングアダルト小説。日本でも過去に小学館のライトノベル系レーベルから5巻まで翻訳出版されていた作品だ。

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エノーラ(ミリー・ボビー・ブラウン)は、のどかなイングランドの田舎の邸宅で母親ユードリア(ヘレナ・ボナム・カーター)と暮らしていた。父はすでに亡く、兄のマイクロフト(サム・クラフリン)とシャーロック(ヘンリー・カヴィル)は家を出てロンドンにいる。学校には通わずに進歩的な母から教育を受け、毎日楽しく過ごしていたエノーラだったが、16歳の誕生日を迎えた朝、目覚めると母の姿は無かった。はたして誘拐か、失踪か。何も言わずに突然姿を消したのには何かのっぴきならない事情があるに違いないと確信するエノーラは、花嫁修業のための寄宿学校に入れられるのをよしとせず、母の行方を追ってひとりロンドンに旅立つのだった。

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軽く愛らしく、さわやかな味わいの“少女漫画っぽい”冒険活劇風ティーン映画

探偵ものというよりも冒険活劇寄りのティーン映画として、軽く、愛らしく、さわやかな味わいの「少女漫画っぽい」作品だ。主人公エノーラを演じるミリー・ボビー・ブラウンが元気いっぱいによく動くのがいい。Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年~)で脚光を浴びた彼女は、2004年生まれの16歳(※2020年10月現在)。それこそ30年前の宮沢りえを彷彿とさせる無敵感がある。本作品では共同プロデューサーも務めているというから、これからの時代を引っ張っていく才能として要注目だ。テュークスベリー侯爵役のルイス・パートリッジも、この作品をきっかけに人気が出るに違いない。シャープな頬のラインに肉厚な唇が印象的なハンサムで、まるで水城せとなの絵のような17歳だ。

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こうした出演者たちの溌剌とした演技に加え、緑豊かな田園地帯を走る鉄道などの美しいロケーションや、装飾的な衣装に花言葉カードなどの細かいアイテムも乙女心をくすぐる、目に楽しい映画になっている。ヘンリー・カヴィルはホームズという感じがあまりしないけれど、とりあえず胸板が厚くてスーツがお似合い。トラディショナルな “シャーロック・ホームズらしさ” を求める人や、緻密な謎解きを重視する人の期待には添えなさそうだが、女の子の冒険ものとして気軽に楽しめる。

これだけ押さえておけばもっと楽しめる! 19世紀イギリスの社会的背景と力強いメッセージ

また予備知識として、ホームズが活躍した19世紀末のイギリスは、女性参政権どころか男性でもまだ選挙権を持たない人口がかなりいる貴族社会だったということを押さえておくといいだろう。イギリスでは1918年、第一次大戦を経てようやく男性は21歳以上全員、女性は30歳以上で戸主又は戸主の妻である場合に限って選挙権が認められるようになったのだ。男女共に平等な普通選挙の実現は、1928年まで待たねばならなかった。ちなみに日本では、もっとずっと後の1945年である。

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この映画では、知識階級の白人男性であるホームズが、「政治に無関心でいられるのは(現状に満足で)世界を変える気がないから」と、その特権性を指摘されたりする。権力に異議申し立てをする人々の口を塞ごうとする勢力に聞かせたいセリフだ。そんな風にストレートに体制に抗う女性を応援するメッセージを込めて、若く賢く強いヒロインが軽快に活躍する、ヴィジュアルも素敵な映画。ティーンエイジャーの娘がいてもおかしくない世代の中年女性としては、自分が若い頃にもこんなのあったらよかったのになあ、と思ってしまう(知らないだけで無くは無かったのかもしれないが)。たとえば主役がりえちゃん、心優しいお坊ちゃまの役が稲垣吾郎とかで見たかった……。なんて、30年前にできなかったことをいまさら悔やんでも仕方ないので、日本の映画・ドラマ業界のかたがたには、2020年のティーンが輝く作品を本気で作ってほしい。

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秘密を抱えたかっこいい母親を演じているのがヘレナ・ボナム・カーターというのも中年として嬉しいポイント。思い返せば自分がヘレナを初めて見たのは、彼女が今のミリー・ボビー・ブラウンのような“10代の新進スター”だった頃に貴族の令嬢を演じた『眺めのいい部屋』(1986年)だった。いま青春を生きている人たちもあの頃の私たちみたいに映画を楽しんでくれたらいいな、ミリー・ボビー・ブラウンもこれからヘレナみたいに面白い映画にいっぱい出てくれるといいよね、なんて考えると、胸に熱いものがこみ上げてきたりして。若い世代に向けた愉快な娯楽作だけれど、これまでそれなりに長い時間を生きてきたからこそ静かに広がる感慨もあるのだ。

文:野中モモ

『エノーラ・ホームズの事件簿』はNetflixで独占配信中

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