最新作公開間近!クレイグ版ボンドとボンドガールの関係を振り返る
新型コロナウィルスの影響で公開が延期になっていた『007』シリーズ最新作、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が、いよいよ2020年11月20日(金)に劇場公開される。ダニエル・クレイグのボンドもついに最終章を迎えるにあたり、今回はクレイグ版ボンドとボンドガールの関係について振り返ってみたい。
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クレイグのボンド・シリーズは、それまでの歴代ボンドたちに比べるとユーモアが減り、よりシリアスかつスタイリッシュで、ドラマとアクションに比重が置かれている。ひとことで言うなら、「(悲)劇的ボンド」と形容してもいいかもしれない。ボンドガールたちはみな影を背負い、ボンドに心的な痛みを与えるという点が大きなポイント。クレイグは回を追うごとにアクションのハードルを上げているとともに、「幸薄き男」というイメージも加速しているようだ。
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ボンドガールの重要性という点では、プロデューサーのバーバラ・ブロッコリの、現代性を意識した視点が大きな影響を与えている。彼女は、「ボンドガールは時代とともに変化しています。最近は、現代の女性たちを反映してより主張を持った、自立した女性像になっているのです」と答えている。
本気で愛した女性を失った“痛み”がボンドに暗い影を落としたままシリーズは続く
まずはボンドが原点に回帰した、イアン・フレミングの原作1作目を映画化した『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)。ここではヴェスパー(エヴァ・グリーン)とソランジュ(カテリーナ・ムリーノ)という2人のボンドガールが登場するが、本命はヴェスパーだ。
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ボンドをサポートする財務省監査役の彼女を、ボンドは本気で愛するようになるが、ふたりの行く手には悲劇が待っている。このクレイグ版1作目で「悲恋ボンド」が決定づけられたと言っても過言ではないだろう。エヴァ・グリーンは、そのグラマラスな容姿こそボンドガールの伝統を受け継いでいるものの、かつてないほどドラマチックで重厚な存在感を放っている。
続く『007/慰めの報酬』(2008年)のボンドガールは、カミーユ(オルガ・キュリレンコ)とストロベリー(ジェマ・アータートン)だが、家族を惨殺された過去を持つカミーユがメイン。本作は『カジノ・ロワイヤル』の続編という設定で、復讐に燃えるカミーユと、前作でヴェスパーを失ったボンドが、「痛み」という共通項により歩み寄る。やはり暗い影が色濃くついて回るのである。ちなみにモデル出身のキュリレンコは、本作を機に女優として躍進することになった。
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クレイグ3作目、『007 スカイフォール』(2012年)のボンドガール、セヴリン(ベレニス・マルロー)もまた、暗いキャラクターだ。カジノでボンドが初めて目にしたときから、彼女にはどこか影があり、怯えている。結局ボンドに協力したことで、彼女のボスであり元MI6のエージェントにして、今は憎悪に燃えるサイコパスとなったラウル(ハビエル・バルデム)に、ボンドの目の前で殺される。本作ではさらに、長年上司であったM(ジュディ・デンチ)すら、ボンドは失うことになる。
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こうした悲劇的なムードを本作で一段と盛り上げるのが、アデルが作詞・作曲した主題歌「スカイフォール」。「すべては終わり~♪」と運命に翻弄される者たちの姿を歌い上げるアデルは、この曲でアカデミー賞最優秀歌曲賞を授与された。
マドレーヌ続投で『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は再び悲恋ボンド路線の予感
ハビエル・バルデムからクリストフ・ヴァルツに悪役のバトンが渡された『007 スペクター』(2015年)では、ルチア(モニカ・ベルッチ)とマドレーヌ(レア・セドゥ)というふたりのボンドガールが登場する。ここでも、父親を亡くし自身も命を狙われるマドレーヌが、ボンドに大きな精神的影響を与えることになる。とくに本作のラストには、ボンドがヴェスパーを失った喪から明け、マドレーヌを愛し始めるニュアンスがある。マドレーヌは『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に続投するので、再び悲恋ボンドが強調されることになるかもしれない。
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もっとも『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、さらにライバル意識の強い辣腕エージェント、ノーミ(ラシャーナ・リンチ)と、コケティッシュで意志の強いパロマ(アナ・デ・アルマス)というふたりのボンドガールが加わる。ブロッコリが「本作のボンドガールたちはストーリーに深く組み込まれた、なくてはならない存在であり、ボンドは彼女たちによって能力を試されることになるのです」と語っていることからも、ボンドが彼女たちに悩まされることは間違いなさそうだ。
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主題歌を歌うのは、ボンド映画史上最年少のシンガーとなる18歳のビリー・アイリッシュ。まだ十代とは思えない彼女のメロウな歌声と哀愁漂うメロディラインも、一層悲劇性を盛り上げる予感がする。
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果たしてクレイグ版ボンドの最終章は、いったいどんな幕引きとなるのか。いまから待ちきれない思いだ。
文:佐藤久理子
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は2020年11月20日(金)より全国公開
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ボンドは現役を退きジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。しかし、CIA出身の旧友フェリックス・ライターが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者を救出するという任務は、想像を遥かに超えた危険なものとなり、やがて、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになる。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
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2020年11月20日(金)より全国公開