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サメ、ワニの次はヘビだ!『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』はアサイラム社の最高傑作?

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ライター:#知的風ハット
サメ、ワニの次はヘビだ!『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』はアサイラム社の最高傑作?

アサイラムの最高傑作か!? チープながらB級パニック映画の基本を押さえた快作

CS映画専門チャンネル ムービープラスでは恒例の「サメ映画特集」に続き、なにやら「ワニ映画特集」なるものが催されていたが、次は「ヘビ映画特集」を期待したい。ワニとヘビ、どちらも低予算パニック映画の世界では、なかなか根強い人気を誇る動物だ。ところで、米国の映画製作会社アサイラムには、そのワニとヘビがどちらも出る、よくばりセットめいた作品が存在する。原題『Mega Python VS. Gatoroid』こと、『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』(2011年)である。

あの悪名高きアサイラム製のパニック映画と聞いて、やや警戒された方もいらっしゃるかもしれない。だが驚くなかれ本作、規模相応にチープでノリはハチャメチャながらも、実は“かなり”面白い。少なくとも普段のアサイラム作品とは一線を画す出来栄えであり、2011年当時のアサイラム作品には珍しい魅力を備えた一本だ。

というわけで今回は、あの『ペット・セメタリー』(1989年)などを監督したメアリー・ランバートが贈るアニマル・パニック、『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』の素晴らしさについて紹介していこう。

巨大ヘビ繁殖! ワニにステロイドを投与し相殺を謀るも双方モンスター化してしまい……

目的のためならば手段を選ばない環境保護活動家・ニッキー博士とその仲間たちは、ある日の夜、どこかの民家から盗み出した数匹のパイソンをエバークルーズ国立公園に放流。ご満悦でその場を後にしたニッキーだったが、彼女が放ったヘビは巨大に成長・大量繁殖し、やがて公園内の生態系を破壊していくのだった。

もともと公園内に生息していたワニの個体数が、突如として増え始めたヘビの影響で減少している──そう悟ったテリー森林保護管は、血気盛んな猟師たちにヘビ狩りを許可。が、あまりに育ちすぎたパイソンの力は凄まじく、猟師たちはおろか公園を訪れていたテリーの婚約者までもを食い殺してしまう。恋人を失った悲しみから錯乱したテリーは、とあるルートから仕入れた新型ステロイドをワニに投与。「ワニをでっかくしてヘビを全滅させる」という、とんでもない解決策に出る。

ステロイドの作用でたちまち筋肉が肥大し、怪物化していくワニ。しかし、そのワニが産んだ卵を捕食したヘビまで同様に怪物化。ほんの短期間で緑豊かな公園は魔物の巣窟と化してしまった。そうとは知らず、それぞれの主張から対立を続けていたニッキーとテリーに、もはや制御の効かぬ殺人マシーンの大群が押し寄せる……。

80年代にライバル関係だった全米No.1歌手たちが競演! 低予算だが見どころ満載!!

この『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』においてもっとも特筆すべき点は、やはりそのキャスティングだろう。80年代を代表するアイドル歌手、デビー(デボラ)・ギブソンとティファニー(・レニー・ダーウィッシュ)の二人が、なんと本作のダブルヒロインを務めているのだ。

それのみならず、かつては女性歌手としてライバル関係にあった二人の間柄を反映してか、本作においてもデビーは“ヘビを愛するエコテロリストめいた環境保護活動家”、かたやティファニーは“ワニをドーピングしてヘビ全滅を目論む森林保護管”の役回りで、バチバチのキャットファイトを繰り広げることとなる。

とはいえ、本作の“良さ”はキャスティング面での一発ネタだけに留まらない。序盤ではヘビと猟師たちによるオーソドックスなパニック映画めいた攻防が、中盤では復讐に燃えるテリーと環境保護思想が先鋭化したニッキーの迷走っぷりが、そしてクライマックスではもはや怪獣映画めいてマイアミ中に被害をもたらすワニとヘビの活躍……そのスケールの大きさが、それぞれ違ったアプローチで私たち視聴者を楽しませてくれる。脚本に対する細かな点でのツッコみどころは多いものの、それをそういうものとして押し通すだけの勢い、パワーもまた十分に持っている作品だ。

さすがに映像面の安っぽさは否めないが、それでもワニとヘビの出番は思いのほか多く、全編通して適切なタイミングで現れては随時暴れ回ってくれるため、鑑賞中の満足度は意外と高い。なにより、作中に登場する“イカれた人物”は最終的にほとんど全員ワニかヘビに食べられてしまうので後味もスッキリ。前半の伏線をきっちり後半で回収しつつ、皮肉っぽいオチもつけてある本作の波乱万丈ドタバタ劇としての完成度は、数あるアサイラム作品の中でもトップクラスに優れていると言っていいだろう。本当は、このレベルのパニック映画をもっとコンスタントに出してくれると嬉しいのだが。

というわけで本作だが、オススメである。低予算なりに見所は満載、ところどころぶっ飛びつつも、ちゃんとお話としての基本は抑えてある、理想的なパニック映画の一本だろう。これ以上なにか茶化すような言葉も必要ない。この手のアニマル・パニックに理解があり、かつまだ本作を未見という方は、ぜひとも鑑賞していただきたい。

文:知的風ハット

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『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』

骨を砕き獲物を飲み込む、獰猛なパイソン。全てを噛み砕く最強の捕食者、アリゲイター。 神をも欺く化学兵器によって巨大化した二種の生物群が、人類を恐怖に陥れる。この未曾有の襲来に終焉は訪れるのか? いま地球生態系の頂点が決まる――

制作年: 2011
監督:
出演: