今こそ観ようぜ『ジョーズ』シリーズ全4作!
まさかの最終章にして4DX公開と話題になった『シャークネード ラスト・チェーンソー』。第6弾となり、恐竜の世界で巨大サメが大暴れしたりするほどの乱痴気騒ぎっぷりを見せてくれるわけですが、ちょっと待って! 恐竜&サメといえば『ジョーズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』シリーズの生みの親、スティーヴン・スピルバーグじゃあないですか!
というわけで、今回は少々強引に『シャークネード』シリーズ完結記念! 元祖サメ映画!! 今こそ観ようぜ『ジョーズ』シリーズ全4作! をお届け!
『ジョーズ』(1975年)
本来「顎」という意味の「ジョーズ」と聞いたら、いまやほとんどの人がこの映画を連想するほど一般化しちゃってる作品。物語の舞台は美しい浜辺ぐらいしか取り柄のないアミティ島で、そこで警察署長として働くのが主人公のブロディ(ロイ・シャイダー)。彼は子供の頃に溺れたトラウマから大の水嫌い、といういきなり死亡フラグの立った設定で、早速観客をヒヤヒヤさせてくれるサービス精神の持ち主。
そんなブロディを赴任早々悩ませてくれたのが、ズタズタになった女性の遺体が浜辺に流れ着いたことから発覚したサメ被害。すぐに遊泳禁止の立て看板を設置するも、観光収入を目論む市長らは猛反対。その直後、またひとり、子供がサメの犠牲に遭い、島じゅう大パニック。子供の両親はサメ退治に賞金をかけ、平和な島に荒くれハンターどもが集結してしまう大騒動に! おまけにブロディの息子ふたりは育ち盛り。やたら海で遊びたがるから気が気じゃないし、市長らはブロディに冷たいしで、ブロディ発狂寸前! そんな中、騒ぎを聞きつけた海洋学者フーパー(リチャード・ドレイファス)が島に降臨。孤軍奮闘だったブロディの力強い仲間となり、ともにサメの危険性を訴えてくれるように。そして、豪快ガハハ系漁師のクイント(ロバート・ショウ)も合流。いてもたってもいられない3人は、体長8メートルという規格外に巨大なホホジロサメを退治するため、大海原へと繰り出すのであった……。
シンプルで力強いプロットと、迫り来るサメの恐怖を煽りまくるジョン・ウィリアムズ作の恐ろしいテーマソングは、きっと誰もが知っていますよね。本作は実際のサメ襲撃事件から着想を得たとされている原作小説を基に、当時28歳だったスティーヴン・スピルバーグが監督。撮影で使われたサメ・マシーンは故障が相次ぎ幾度となく撮影ストップ。そのため、当初の予定よりも出番が少なくなってしまったが、結果的にはサメがなかなか姿を現さない焦らし演出が功を奏して恐怖感は倍増。サメ目線の映像や海面で引っ張り回される人間を描いたことによって、サメの存在感をより印象づけることに成功しているという、あらゆる奇跡が多発している作品。
公開されるやいなや大ヒットした『ジョーズ』は、第48回アカデミー賞で作曲賞、音響賞、編集賞を受賞。スピルバーグは一躍若手トップスター監督となり、世界中の映画会社は一斉に柳の下の二匹目のドジョウを狙ってアニマルパニック映画を量産。巨大熊映画『グリズリー』(1976年)、ゴカイの大群映画『スクワーム』(1976年)、巨大タコ映画『テンタクルズ』(1977年)、人喰いシャチ『オルカ』(1977年)、近年リメイクもされた『ピラニア』(1978年)などを相次いで製作し、ブームは数年にわたった。
……もう一度来て!
『ジョーズ2』(1978年)
前作から3年、満を持して続編が公開! 内容も、前作から3年が経過したアミティ島で、またしても巨大ホホジロサメが浜辺を襲来し、またしてもただひとりサメの危険を訴えるブロディ。しかしやっぱり誰にも取り合ってもらえず……。そんなときに見張り塔から海中に漂う黒い影を発見! 民衆を避難させるためにおおいに取り乱しモードのままビーチで拳銃を乱射! 市民を大パニックに陥れ、おまけにサメだと思った黒い影は小魚の群れだった……。そのことからスパッと警察を解雇されちゃったブロディ。そんな中、息子ふたりが海に遊びに行くと、そこには巨大サメの姿が忍び寄る……。
監督は1975年に昆虫パニックホラー『燃える昆虫軍団』を手がけたヤノット・シュワルツに交代。おなじみとなったジョン・ウィリアムズのテーマ曲は音数も増えて若干のアレンジが加えられたりと、至る所で1作目のスケールアップを狙っているかと思いきや、今回サメに立ち向かうのはブロディただひとりという苦境具合! しかし全世界でありえないほどの大ヒットを記録し、2作目でブロディ一家に焦点を絞ったことで今後の流れが決定づけられることに。
『ジョーズ3』(1983年)
80年代に入り、いまでこそ当たり前となっている3Dブームが到来。3Dマカロニ・ウエスタンという天才的なアイデアの『荒野の復讐』(1981年)を皮切りに、『悪魔の寄生虫・パラサイト』(1982年)や『13日の金曜日PART3』(1982年)などの“飛び出す3D残酷映画”が相次いで公開された。そんな中、サメも飛び出しちゃいなよ! ということで、なんと『ジョーズ』も3D業界に参入。冒頭からサメに下半身を食べられたウツボがプカプカ浮かぶ様を3D効果で見せつけるなど、気合は十分だ。
シリーズ3作目となる本作は、1、2作目では子供だったブロディの息子マイケルがすくすく育って主人公を担当。海と繋がった海洋娯楽施設で働くマイケルとその彼女とのイチャつきっぷりを丁寧に描きつつ、やっぱりサメが登場! しかしマイケルら施設職員たちは退治するのではなく、まずはサメを捕獲。それを知った施設社長は見世物としてサメを飼育することにしたからさぁ大変。実は捕獲されたサメは子供サメで、隠れて紛れ込んでいた母サメは怒り狂っていた!
というわけで、水上アクロバットスキーやイルカショーなどをやっているところに母サメ降臨の大パニック! ということなんですが、案の定な展開と激安具合で評価も散々な本作。しかし今観返すと『ジュラシック・ワールド』(15年)がかなり影響を受けていることがわかる1本になっております。
『ジョーズ4 復讐篇』(1987年)
最初の2作だけならともかく、3作目でとことんサメに呪われていることが判明したブロディ家。もう山奥に住みなさいよ、と誰しもが思いつつもまだ海の側で暮らしているから驚き! そして本作では、2作目までの主人公でブロディ家の大黒柱マーティンはすでにこの世を去っているという設定。ですが、ブロディ家の次男坊ショーンは父親の跡を継ぎ警察官に! ついに次男坊が主役かぁ~と感慨にふけっていると、ショーンは冒頭でいきなりサメの襲撃に遭い死亡! ブロディ家の未亡人エレンは「もう海はイヤ!」と、悲しみに暮れるばかり……。そんな母の姿を見かねた長男マイケルは、自身が暮らすバハマにエレンを呼び寄せる。……また海だ!
というわけで、観客の予想を一切裏切ることなくサメさんはバハマに襲来! ブロディ家を追ってきたサメの執念深さに決着をつけるため、エレンはたったひとりで海へと出陣するのだった……。
クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』(1992年)にも影響を与えた、地下鉄を舞台にしたスリラー『サブウェイ・パニック』(1974年)の監督であるジョセフ・サージェントがメガホンを取ったシリーズ完結編。やはり見所は最後のサメバトルで、なんと本作のサメ……ラストでゴジラ並みにシャウトします。これがもう、まったくわけがわからないのですが、それゆえにとてつもなく感動的で、そこだけのためにも観る価値のある1本!
ちなみにクリストファー・ノーラン版『バットマン』シリーズでの執事アルフレッド役でおなじみ、マイケル・ケインが未亡人エレンの新恋人として出演しているのもポイント。しかもマイケル・ケイン、前年に出演したウディ・アレン監督作『ハンナとその姉妹』でアカデミー賞助演男優賞を受賞しているのですが、本作の撮影のために授賞式を欠席してるんですよ。授賞式の辞退理由が「『ジョーズ4 復讐篇』の撮影だったから」って……ちょっとカッコよすぎませんか?
というわけで、シリーズが進むごとにサメ一族VSブロディ一族の戦争のようなものになってるわけですが、実際立て続けに観ていくと“因果”みたいなものを感じて恐怖感は倍増! 1作目以外は駄作! なんて切り捨てられることがある『ジョーズ』シリーズですが、今こそ観かえすのもアリなのではないでしょうか!?
そして正統派サメ映画の後は、『シャークネード』シリーズでサメ映画の進化を見届けるべし!
文:市川力夫