• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • ロック映画フェス<UNDERDOCS>開催! 日本初公開『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』など必見音楽ドキュメンタリー大集結

ロック映画フェス<UNDERDOCS>開催! 日本初公開『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』など必見音楽ドキュメンタリー大集結

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#BANGER!!! 編集部
ロック映画フェス<UNDERDOCS>開催! 日本初公開『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』など必見音楽ドキュメンタリー大集結
『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

2020年に「エモい」という言葉を改めて噛みしめる

いまや10代の若者の間にまで浸透している「エモい」という言葉を最初に使い始めたのは誰だろうか。ある一定のジャンルの音楽性を表現するために発明されたであろうこの言葉は、伝言ゲームのようにその意味合いを少しずつ変えてゆき、なんだか非常に曖昧なトーンを持つ形容詞になってしまった。そもそもの由来は1980年代中頃に生まれた「エモコア(エモーショナルなハードコア・パンク)」という呼称が日本まで届き省略されたものだとは思うが、このあたりは世代によって捉え方も様々なのでなかなかに面倒くさい(=どうでもいい)話ではある。

https://www.youtube.com/watch?v=WWUnCoGvz58

とはいえ90年代に入るとグランジやメロディック・パンクと呼ばれる新興ジャンルのバンドが世界規模の成功を収めるようになり、日本でもなかなかのブームを巻き起こした(当時は流行りまくっているような感覚だったが、いま考えると音楽雑誌を毎月買うような層にウケていただけでライト層には浸透していなかった)。1986年結成の“エモい”パンク・バンド、ジョウブレイカーはそんな流れに乗って成功を収めたバンドのひとつであり、映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』は彼らの栄枯盛衰と、解散から約20年を経て再結成するまでを追ったドキュメンタリーだ。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

グリーン・デイのビリーやフー・ファイターズのクリスも激賞! ジョウブレイカーがシーンに与えた影響力

ジョウブレイカーについて「グリーン・デイやニルヴァーナにはない魅力があった」と自ら振り返るのはビリー・ジョー・アームストロング。本作はメンバーのブレイク(Vo./Gt.)、アダム(Dr.)、クリス(Ba.)が当時を振り返る映像とともに、同時代にシーンを盛り上げたバンドや彼らに影響を受けたアーティスト、ツアーマネージャー、レーベル関係者、家族や同級生たちの証言、そして当時の貴重な映像や画像の数々で構成されている(アダムのお姉さんのキャラクターがなかなか強烈)。80~90時代にパンク~ハードコアに夢中だった人にとってはニヤニヤが止まらないショットの連続である。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

1stアルバム「UNFUN」リリース時(1990年)のLAは、自腹を切ってライブをするのが当たり前というほど音楽シーンが奮っていなかったそうで、メンバーも「終わってた」と振り返っている(日本のライブハウスのシステムを考えるとアレだが)。その後、バンドはサンフランシスコに移り住むことになるが、LAにしても場所によっては売れないバンドが気軽に引っ越しできるような街ではなくなってしまったので、90年代への郷愁が募るばかりだ。ともあれ、マッチョイズムとは一線を画すリリシズムを湛えた歌詞も評価されていたことが紹介されたり、さらにツアー中にはバンド存続が危ぶまれるほどの緊急事態に見舞われたりと、地味な見た目とは裏腹にドラマチックな逸話には事欠かないバンドだったようだ。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

ゲフィン、またお前か! メジャー進出のストレスによってメンバー間のわだかまりが爆発……

そして他の音楽ドキュメンタリーと同じく、そんな微笑ましいシーンばかりが続くわけじゃない。解散以後、長らく疎遠だったメンバーが再びスタジオに集まった際の様子などは見ていて喉が渇いてくるほどピリピリしているし(ほぼブレイクとクリスの確執)、それぞれがお互いに抱えていた不満や不安、ストレスを吐露する姿も痛々しい。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

そこからニルヴァーナとマッドハニーのツアーに抜擢されるもファンの反発を買い、有名な「メジャー転向しない」発言後のゲフィン・レコードとの契約などなど、ステップアップとは名ばかりの破滅に向かって突き進んでいった過程が語られる。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

とはいえ、急にリッチになったサウンドとMTVっぽい宣材で不評を買ったゲフィン移籍後の4thアルバム「Dear You」(1995年リリース)から入ったという若い世代のファンも少なくないだろう。同アルバムは後に正当に評価されることになるわけだが、現在のメンバー3人がジョウブレイカーというバンドの存在の大きさをしみじみと噛み締め、米シカゴで開催された<RIOT FEST 2017>の大トリを務めた再結成ライブの映像で幕を閉じる構成には、少しだけ心が救われる(再結成こそ分かりやすい“ビジネス”ではあるのだが、それを責める権利は誰にもない)。

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』© 2019 Rocket Fuel Films

同じく再結成ツアー中で同フェスに出演していたキャップン・ジャズをはじめ、多くの共演者がステージ袖で大いに盛り上がっていたステージを見て、ジョウブレイカーの影響力の大きさを改めて実感した観客もいたことだろう。この日、シカゴの夜空には「Want」や「Boxcar」の大合唱が鳴り響いたのだった(みんな長いこと聴き込んできたからね!涙)。

そんな『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』を含む必見の音楽ドキュメンタリーを一挙に鑑賞できる特集上映<UNDERDOCS>が、シネマート新宿・シネマート心斎橋にて開催される。『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』(2003年)や『アメリカン・ハードコア』(2006年)、『D.O.A.』(1981年)、『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』(2005年)、『バッド・ブレインズ バンド・イン・DC』(2012年)、『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』(2017年)、『ジャームス/狂気の秘密』(2007年)などなど、日本初上映作品や十数年ぶりの上映となる作品が盛りだくさんなので、ライブに行けず溜まった鬱憤をぜひ映画館で解消してほしい。人気ブランドとコラボした<UNDERDOCS>オリジナルTシャツなどイケてるグッズも買えるぞ!

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』は特集上映<UNDERDOCS>にて2020年9月11日(金)よりシネマート新宿、9月12日(土)よりシネマート心斎橋で公開

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』

1986年~1996年まで活動、ニューヨーク出身のバンド、ジョウブレイカーの軌跡を追ったドキュメンタリー映画。90年代に拠点をサンフランシスコに移し、インディーズバンドとして絶大な支持を集めるも、1995年、メジャーレーベルのGeffenからアルバムを発表、凄まじいバッシングを受けて翌年解散、この顛末がすべて描かれている。

制作年: 2017
監督:
出演: