『ソワレ』村上虹郎&芋生悠インタビュー【Part 2】
いまもっとも注目を集める若手俳優、村上虹郎と芋生悠がW主演が務め、外山文治監督がオリジナル脚本を映画化した『ソワレ』。豊原功補や小泉今日子らが設立した<新世界合同会社>の第一回プロデュース作品である。
和歌山県御坊日高の美しい自然を背景に若き男女の逃避行を描いた本作で、役者の夢に挫折した岩松翔太を演じる村上と、高齢者施設で働く山下タカラを演じる芋生。インタビュー後編では、撮影中の微笑ましいエピソードからロケ地の想い出、そして外山監督、豊原、小泉との信頼関係、撮影のプレッシャーなどなど、映画『ソワレ』と村上&芋生の特別な結びつきが感じられるはずだ。
「村上:お芝居の話は……してないですね(笑)」
「芋生:漫画やアニメ、本とか小説の話(笑)」
―撮影現場では、どうやってお二人の空気感を作り上げたのでしょうか?
芋生:結構ふざけたりしてましたよね(笑)。
村上:ふざけたりしてたっけ?(笑)
芋生:でも、それも二人だけでしゃべったりとかはそんなになかったかな。打ち合わせとか撮影の合間に、次のシーンどうしよう? とかってのもなかったし。
村上:はしゃいでたのって、賭けごとの瞬間だけでしょ。
芋生:そうそうそう(笑)。
村上:証明写真を撮らなきゃいけないって時に、ぼくが茶々を入れるんですけど、隣にスクラッチがあったんです。全然関係ないですけど、それをやってたっていう(笑)。あの時は盛り上がりましたね。
芋生:負けちゃいましたけどね。完全にボロ負け(笑)。
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―お二人の少年・少女のような表情が素敵でした。
村上:現場に入ってからは、そういう瞬間以外は多く言葉を交わした記憶はないんです。現場に向かう日――クランクインの数日前から和歌山に行ったんですけど、向かう新幹線で同席させてもらえますか? って芋生さんから外山監督経由で連絡をくださって。連絡先も知らなかったんですけど、芋生さんのほうから話しかけてくれたので、それで一緒に行きましたね。
芋生:ずっとしゃべってましたね。
―それはお芝居のお話ですか?
村上:お芝居の話は……してないですね(笑)。
芋生:漫画やアニメ、本とか小説の話(笑)。
村上:文学少女のイメージがあったんですけど、その日を境に(印象が変わった)。その日だけですよね、めちゃくちゃ話したのは。
芋生:そうかな?
村上:一度だけ監督とご飯に行ったのか、新宿かどこかで。
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―撮影に入る前と後で、お互いの印象は変わりましたか?
芋生:けっこう奔放な人なのかなって思ってたんですけど、もっと落ち着いていて、私がやりやすいように気を遣ってくださったり、スタッフさんとかにも細かく気配りされていたり。気の遣いかたもラフで、みんなが張り詰めないようにやってくださってるんだなって。
村上:褒められるのすごい苦手なんです(笑)。一部の身内のスタッフは“はてな”マークついてると思いますよ。
芋生:(笑)。
村上:ぼくはスクリーンではなくて劇場、お芝居の印象ですね。豊原(功補)さんが演出されていた落語のお芝居があるんですけど、そこでヒロインを演じられていたので。
もちろんオーディションでもお会いしているんですけど、しっかり“芋生悠とは?”みたいなものに対峙した瞬間でした。どっちが先だっけ、オーディションのほうが後?
芋生:オーディションが先ですね。
村上:そのオーディションでも「ああ、何かが産まれた」っていう一瞬はあったんですけど、やっぱり向き合っている時の感覚と、ただこちら側から観ているというのは全然違うので。舞台で観たときも、なんて大きな人なんだってビックリしました。その時はまだ映像は拝見していなかったので、これが映像になったらどうなるんだろうっていう。なんか、楽しみでしたね。
役柄もあったと思います。舞台は時代ものでしたし、強い女性の役だったので。でもタカラとは纏っている空気がかけ離れている。演劇で観た芋生さんとは全然違うんですけど、タカラのほうが基本的に繊細な世界にいて、あの大きかったものが凝縮されて残ってるっていう、真逆の表現だったりする。そのギャップがおもしろかったです。全然違うんだなって。
芋生:嬉しいです。
―今回は和歌山が舞台で、様々なロケ地をめぐられたと思うのですが、印象に残った風景や場所はありますか?
芋生:梅農家さんかな。
村上:梅の香り、すごかったもんね。
芋生:梅農家さんではロケーションを貸してくださったお宅のお子さんたちとすごく仲良くなって(笑)。和歌山のみなさんは本当に気さくで、大家族だったんですけど、お子さんたちがずっと両脇にいるみたいな感じで。撮影の合間にずっと二人で(笑)。
村上:めっちゃ人懐っこい子がいたよね、男の子。みんな可愛いんだけど、とてつもない子が一人いたんです。
芋生:連れて帰りたい、みたいなね。
村上:僕は撮影している現場の、自分がもがき苦しんでいる時の風景とかあんまり記憶にないんですけど(笑)。すごく印象強いのは、神社の朱色。撮影でも行かせていただいたし、お祓いでも行ったり。やっぱり和歌山らしさって、一発で掴むのは難しいと思うんです。それがむしろ楽しいというか、素敵だなって。僕はまったく知らない状態ではじめて和歌山に触れたので、神社の朱色がすごく印象強いですね。
「この映画を絶対に届けるぞっていう勢いがいまも続いていて、撮影が終わってから一層強くなっている」
―外山監督をはじめ、製作陣からお二人への期待も高かったと思いますが、どのように受け止められましたか?
芋生:監督も村上さんも、プロデューサー陣もみんな同じプレッシャーはあったかもしれないんですけど、現場に入ってからは本当にけっこう怒涛でした。でも、それはどんどん感じなくなっていって、とにかく、いまこの瞬間しかないから撮りきらなきゃっていう感じになってきて、自分たちもどんどん走り出していってるから止まれないし、って。
だから、いま思うとそんなに期待とかに関しては感じてはいなかったんですけど、でも相当なエネルギーでやっていたなっていう感じがします。本当にこの映画を絶対に観て欲しいし、絶対に届けるぞっていう勢いがいまも続いているというか、撮影が終わってからより一層強くなっていると思います。自分で映像も観て、取材などを受けているなかでも、やっぱり特別な作品だなと感じています。
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村上:監督ともプロデューサーとも、もっと言えばテアトルさんとも、今回の座組のほとんどの方々と一度はご一緒しているんです。こんなにも自分が知っている方々ともう一度ご一緒することができて、しかも主演で呼んでいただいて……僕のなかでは新しいことでした。これまでは一番かわいがられちゃうところにいたはずなんですけど、今回はみんな芋生さんを観ている(笑)。これはこれでいいぞ、という感じで(笑)。
いつもは「お前、何してくれてんだ」みたいなところがあったし、それが全然なくなったわけじゃなくて、実は今回もあるんですけど。豊原さんも小泉(今日子)さんも、もちろん監督からも、また一つ先の部分で「お前どうするんだ?」っていう新たなミッションを与えられたという感覚は、最初からずっとありました。でも気負いはあまりなくて。お芝居に関しては本当に“役を生きる”だけだと思うので。いま、この時間が一番それを感じますね。もっとも苦手な瞬間でもあるんですけど、舞台挨拶の締めとか(笑)。これ、なんで役者がやるんだろう? って思ってるんですけど、今回は豊原さんにやってほしいです(笑)。豊原さんを含め、本当にみなさん“熱い”ので。
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『ソワレ』は2020年8月28日(金)よりロードショー
『ソワレ』
俳優を目指して上京するも結果が出ず、今ではオレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼いでいる翔太。ある夏の日、故郷・和歌山の海辺にある高齢者施設で演劇を教えることになった翔太は、そこで働くタカラと出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太は、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラを目撃する。咄嗟に止めに入る翔太。それを庇うタカラの手が血に染まる。逃げ場のない現実に絶望し佇むタカラを見つめる翔太は、やがてその手を取って夏のざわめきの中に駆け出していく。こうして、二人の「かけおち」とも呼べる逃避行の旅が始まった──。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
『ソワレ』は2020年8月28日(金)よりロードショー