大ヒット漫画の実写化作品『キングダム』(2019年)で最強剣士・左慈を演じた現代忍者TAK∴こと坂口拓が宮本武蔵に扮し、77分ワンカットという正気の沙汰とは思えない壮絶な殺陣を披露する時代劇アクション、その名も『狂武蔵』。まるで殺陣を疑似体験するアトラクションに放り込まれたかのような臨場感と緊張感で、1人vs400人の殺し合いをじっくり見せるクレイジーな時代劇だ。
観てるだけで疲れる! 驚異的な77分“殺陣マラソン”
物語の舞台は慶長9年。師範の吉岡清十郎と弟・伝七郎を宮本武蔵との決闘で失った吉岡一門は、門下100人に加え他流派の300人を雇い、何が何でも武蔵の首を獲りにかかるが……というお話。しかし、映画が始まって10分もしないうちに流れるように殺陣に突入し、数え切れないほどの侍が武蔵に斬りかかっていく。思わず「え、これがあと1時間続くの……?」と考えてしまい恐ろしくなるが、出演者たち(=敵)が本気で武蔵を斬りにかかっていることは素人目にもわかるので、没入感が半端じゃない。
もちろんチャンチャンバラバラするだけでなく、所々に中堅剣士との一騎打ちタイムも設けるなど、緩急をつけた演出で緊張感をキープする。しかも坂口の疲労困憊ぶりがビシビシ伝わってくるので、観ているだけで喉が渇くレベル。実際、劇中には流れを損なわないように給水タイムが挿入されていて、さながら殺陣マラソンといった様相だ。そんな中でも敵との因縁を印象づけるセリフが入ったり、しっかり顔面に血糊がついたりするなど、製作陣の創意工夫がしっかり感じられる。ほとんどは9年前に撮影されたものとのことだが、坂口は追加撮影シーンのほうがキレッキレに見えるからスゴい。
山﨑賢人とのバトル再び! 現代忍者TAK∴のキレッキレな殺陣を思う存分堪能せよ
もはや肉体は限界に達し、気力のみで刀を振り続ける坂口の執念が、その後ろ姿からもビシビシ伝わってくる。本作の監督は『キングダム』のアクション監督を務めた下村勇二で、同作で共演した山﨑賢人も物語の起点となる重要な侍をさすがのカリスマ性で好演。『狂武蔵』の舞台裏映像では、まるで師弟のような坂口との関係が微笑ましい。まるで信と左慈の戦いが時代と国を越えて再現されたかのようなラストシーンは必見だ。
多くの映画ファンにワンカット撮影の過酷さを知らしめた『カメラを止めるな』(2018年)を経た今だからこそ、本作の過酷さも伝わってくるはず。坂口本人からは「撮影開始5分で指を骨折」「中盤で肋骨を骨折」「撮影後に奥歯が崩れた」などなど凄まじいエピソードが語られているが、本編の壮絶さを観ればハッタリではないことがわかるだろう。また、坂口がゼロレンジコンバットをベースに開発した格闘術“ウェイブ”がそこかしこで活用されているので、格闘好きの方はそのあたりを凝視してみるのも一興だ。詳しいことは坂口のYouTubeチャンネルでご確認を。
『狂武蔵』は2020年8月21日(金)より全国公開
『狂武蔵』
1604(慶長9)年、9歳の吉岡又七郎と宮本武蔵との決闘が行われようとしていた。武蔵に道場破りをされた名門吉岡道場は、既にこれまで2度の決闘で師範清十郎とその弟伝七郎を失っていた。面目を潰された一門はまだ幼い清十郎の嫡男・ 源次郎殿との決闘を仕込み、一門全員で武蔵を襲う計略を練ったのだった。一門100人に加え、金で雇った他流派300人が決闘場のまわりに身を潜めていたが、突如現れた武蔵が襲いかかる。突然の奇襲に凍りつく吉岡一門。そして武蔵 1人対吉岡一門400人の死闘が始まった――
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2020年8月21日(金)より全国公開