ソ・イェジ&チン・ソンギュ共演! 映画愛あふれる韓国産ホラー
新人映画監督のミジョン(ソ・イェジ)は、プロデューサーから新作ホラー映画の脚本執筆を急かされていた。そんな中、ミジョンはシナリオの手がかりになりそうな恐ろしい噂を聞きつける。それは、とある大学の映画学科の生徒が卒業制作として製作したホラー映画の存在だった。
上映では半数以上の学生が逃げ出し、ひとりは心臓麻痺を起こして死亡。そのホラー映画を撮った監督は「これは亡霊が撮った映画だ」と言っていた……などと都市伝説的に一部で存在が囁かれていた。そこでミジョンは独自に、そのホラー映画の存在を確かめるため脚本そっちのけで調査を開始する。しかし、それと同時にミジョンの周囲で不可解な出来事が起こり始める……。
というわけで映画『ワーニング その映画を観るな』は、ホラー映画好きならお気づきかと思うがストーリー自体はジョン・カーペンター監督の『世界の終り』(2005年、出演:ノーマン・リーダス、ウド・キアほか)と心配になるほどほぼ一緒。呪われたホラー映画を描いたホラー映画となっていて、いろんな意味でホラー映画に狂わされた人間が登場する。そんな作りだからか、恐怖描写も『エクソシスト』(1973年)や『リング』(1998年)、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)などからの影響を隠さないスタイルだ。
ミジョン役にはドラマ『サイコだけど大丈夫』(2020年)で、感情を失った童話作家を演じたソ・イェジ。『サイコだけど大丈夫』同様、過去の傷を隠すかのようにクールな態度をキープしている役柄で、文句なしの存在感。映画の格調をめちゃくちゃに高めている。共演は『犯罪都市』(2017年)『エクストリーム・ジョブ』(2019年)のチン・ソンギュだ。
Jホラーやアニメも大好き! 韓国ホラー映画界の新鋭監督の活躍に期待
さぞかしJホラーの影響も受けたんだろうな~と感じさせる本作なのだが、実際監督であるキム・ジンウォンは日本のポップカルチャーからの影響を公言している。学生時代は学校をサボって『機動警察パトレイバー2 the Movie』(1993年)や『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年)を観続け、塚本晋也や鈴木清順、松本俊夫などの映画監督をお気に入りに挙げている。
ちなみにデビュー作である『The Butcher』(2006年)は「拷問される被害者に付けられたハンディカメラ付きヘッドギアで撮影されたもの」というテイのファウンド・フッテージ系POVトーチャー・ホラーで、もちろん『Guinea Pig ギニーピッグ/悪魔の実験』(1985年)も大好きなんだとか。しかし色モノな『The Butcher』の勢い重視の作りとは真逆で、本作はかなり丁寧に作れている印象。
おそらく監督自身もそのあたりは計算済みで、「俺はちゃんとした映画も作れる!」というアピールをビシバシ感じる。韓国ではホラー映画ばかり撮る監督というのは珍しいので、キム・ジンウォン監督の今後が楽しみになる1本だ。
文:市川力夫
『ワーニング その映画を観るな』は2020年8月21日(金)より第7回『夏のホラー秘宝まつり2020』で上映