古臭いスターになりかけていた90年代半ばのスタローン
『デモリションマン』がアメリカで公開されたのは1993年、日本公開は94年のことだった。主演したシルヴェスター・スタローンのキャリアでいうと『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)で世間を大ズッコケさせた後、『クリフハンガー』(1993年)のヒットはあったものの下り坂になっていった時代の作品だ。
その頃、アメリカ映画界はどんな時代だったか。91年の『レザボア・ドッグス』、94年の『パルプ・フィクション』でクエンティン・タランティーノが大旋風を巻き起こした。ティム・バートンもスター監督にのし上がった。スタローンが得意とするアクション、バイオレンスがどんどんスタイリッシュになっていたわけだ。オタク的こだわりも重要なポイントだった。
無骨で無粋で一直線の情熱が武器のスタローンには生きにくい時代。一方でクリント・イーストウッドが『許されざる者』(1993年)、スティーヴン・スピルバーグが『シンドラーのリスト』(1993年)でアカデミー賞を受賞。そのキャリアを更新し、巨匠としての立場を確立してもいた。そんな中でスタローンは“古臭いスター”になりかけていた。
そこに『デモリションマン』だ。冷凍された凶悪犯罪者が未来世界で目覚め、それを追って暴力刑事もカムバック。もちろんスタローンは刑事の役である。犯罪者はウェズリー・スナイプス。そもそもタイトルが“破壊する男”。率直な印象を言えば「頭悪そう」であり、スタローンがSFというのがまた、いかにも食い合わせが悪いように思えた。
2019年に“時代の逆風”を感じずフラットに観てみる
そんな『デモリションマン』、たしか渋谷東急で観たのだったが、いざ始まってみるとダメということは全然なく、なんだかんだあっという間にラストになっていたような気もする。
舞台は2032年、犯罪も暴力も存在しない、徹底的に管理されたクリーンかつ呑気なディストピア。その描写は確かにスタローンとスナイプスの暴れっぷりを際立たせていたし、それはつまりスタローンの“古さ”をうまく活かしていたということでもあるだろう。なんだかよく分からない「トイレの貝殻」も含め、小ネタもキャラクターも楽しい映画だ。2019年の今、“時代の逆風”を感じなくなってフラットに観ると、余計にそう思う。
周りは全然騒いでないけど、ヒットしている様子もないけど「あの映画、面白かったよね?」ってことはある。何年も後になって見返して「イメージと違って意外に面白かったな」ということも。映画の評価なんて絶対じゃないし、時代のノリに合わないことだってある。変な話、自分にとって面白ければそれでよかったりもする。
『デモリションマン』、時間があったら観てほしい。映画史に残る傑作とは言わないが、肩の凝らない2時間弱が過ごせるはずである。
文:橋本宗洋
『デモリションマン』
今や犯罪も暴力もないクリーンな未来都市”サン・アンゼルス”に、36年前に冷凍刑に処せられた狂暴な男が蘇った。20世紀最も残忍な犯罪者として名を馳せたサイモン・フェニックスだ。その残虐さになす術のない未来警察は彼と共に処罰されたもう1人の男、ジョン・スパルタンを解凍する。そう、彼こそが”デモリションマン”=破壊人間と恐れられた危険な刑事!人類の運命をかけて、宿命の対決がいま、はじまる!!
制作年: | 1993 |
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監督: | |
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