この俳優に大注目!ノスタルジック青春コメディ『きっと、またあえる』& 祝「インディアンムービーウィーク2020」開催

90年代の名門工科大学を舞台にしたノスタルジックな青春ドラマ
『きっと、またあえる』は、『ダンガル きっと、つよくなる』(2016年)のニテーシュ・ティワーリー監督が送りだした2019年作品。前作とは打って変わって、こちらはノスタルジックな学園ものです。ストーリーは1992年の学園と現在とを行き来しながら展開します。
現在のムンバイ、暮らし向きも悪くないアニは一人息子ラーガヴの大学受験を応援しますが、その甲斐もなく息子は不合格となり、失意のどん底に沈みます。そんなラーガヴを励ますために、アニは自らの大学生活の思い出を語り出します。1992年、名門のインド工科大学ボンベイ校(IIT)に入学したアニは、自分の意志とは無関係にボロボロの4号寮に振り分けられます。4号寮は老朽化しているだけでなく奇人変人の巣窟でした。
IITでは寮は単なる居住スペースではなく、学内で毎年行われるゼネラル・チャンピオンシップ(GC。スポーツやボードゲームなどで競い合う行事)の参加単位です。4号寮は15年も最下位キープで「負け犬」と貶められているのですが、エリートが集まりGCでも常勝の3号寮と対立を深め、アニたちはその年のGCでの優勝を目標として掲げるに至ります。
ティワーリー監督の前作『ダンガル きっと、つよくなる』では、アーミル・カーン演じる主人公は「銀メダルでは記憶に残らない。金メダルなら人々のロールモデルになる」という意味のことを言ってレスラーの娘に奮起を促しますが、『きっと、またあえる』でもその考えは受け継がれるのでしょうか。そして万年最下位の「負け犬」4号寮に勝利への秘策はあるのでしょうか。
ヒンディー語もテルグ語も! フレキシブルな俳優ナヴィーン・ポリシェッティに注目
青春群像映画でもある本作、リードペアであるスシャント・シン・ラージプートとシュラッダー・カプール以外にも、存在感のある脇役が多数出演しています。特に本国で注目を浴びたのが、グルミート・シン(通称セクサ)役のヴァルン・シャルマの愛嬌のある演技でした。日本語の公式予告編でもヴァルンの顔ばかりが目立ちます。
しかしここでは、ヴァルン以外の俳優にスポットをあてたいと思います。南インド映画に関してご紹介することをメインにしている筆者が注目するのは、セクサと同じくアニの上級生にあたる「アシッド」を演じる、テランガーナ州出身のナヴィーン・ポリシェッティです。
「アシッド」(酸という意味ですが、インドの文脈からすると劇物である硫酸を想像させるかも)という綽名はその口の悪さから来たもの。切れのいい罵り言葉をハイテンションにまくしたてる痛快なキャラクターです。
ナヴィーンについてはまだそれほど多くの情報が出てきていないのですが、1989年にアーンドラ・プラデーシュ州の州都(当時)ハイダラーバードで生まれたそうです。エンジニアを輩出する堅実な中産階級の家庭で、映画界との繋がりは一切ありませんでした。子供の頃から演技者になることに憧れを持っていましたが、家族の勧めでマディヤ・プラデーシュ州ボーパールの工科大学で学び、卒業後はマハーラーシュトラ州プネーのIT企業に就職します。しかし程なく退職して、ヒンディー語映画産業の中心地ムンバイに行き、演劇界・映画界への足がかりを掴もうとしたそうですが、うまくいかず、今度はロンドンで通信企業に勤めます。
けれどもやはり演技への夢が諦めきれず帰国し、カルナータカ州バンガロールで演劇のワークショップに参加。2014年ごろムンバイに舞い戻り、オーディションを受けまくりながら、スタンダップ・コメディアン、CM俳優、声優、司会者などを兼業し、その傍らYouTube配信の短編コメディー・シリーズに出たり(これはかなりの反響を呼んだそうです)と、下積みを経験します。長編劇映画の初出演は『Life Is Beautiful』(テルグ語、2012年/日本未公開)で、メインの悪役でした。
ここでの悪役仲間に、今をときめくヴィジャイ・デーヴァラコンダ(デビュー第二作目)がいたというのにビックリです。同作はそれなりに評価されたものの、ナヴィーンをブレイクさせるまでには至らず、その後も目まぐるしい兼業を続けていたのが、この『きっと、またあえる』での重要な脇役、テルグ語映画『お気楽探偵アトレヤ』(2019年)での主演によって一気に注目を集めるようになったのが2019年だったのです。
そして絶妙なタイミングで、『お気楽探偵アトレヤ』が<インディアンムービーウィーク2020>で上映されることが発表されました。下積みの苦労が実ったナヴィーンの出世作2本を、ぜひとも劇場で楽しんで欲しいと思います。
#IMW 2020 上映作品紹介7作品目をご紹介します。
— 【インド映画上映】インディアンムービーウィーク/ SPACEBOX (@ImwJapan) August 11, 2020
Agent Sai Srinivas Atherya(テルグ語/ 2019年)
アーンドラの地方都市ネッルールで営業する私立探偵にして自称FBIのアトレヤは、形から入る奴。可愛くて冷静な助手のスネーハとともに、鉄道線路脇で次々と死体が見つかる不可解な事件に挑む。 pic.twitter.com/9yeF3aJcvF
『きっと、またあえる』は2020年8月21日(金)よりシネマート新宿ほか公開
『きっと、またあえる』
受験生の息子が病院に担ぎ込まれた! そこに集まった、今は親世代になったかつての仲間たち7人。年を重ねて、太ったり容姿もだいぶ変わったけれど、学生時代に泣いて笑ってバカをやったあの日の友情は変わらない。親友アニの受験に失敗した息子を励ますため、悪友たちは「負け犬時代」の奮闘を病室で語り出す――。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年8月21日(金)よりシネマート新宿ほか公開