囲碁バトルとストリートファイトを繰り広げる異種ノワール!
韓国映画『鬼手(きしゅ)』は、2014年のヒット作『神の一手』のスピンオフである。ジャンルは“囲碁バイオレンス・ノワール”。いや、見てない人は「何それ?」って言うだろうけど、本当にそういう映画なのだ。しかも、すこぶる面白い。
舞台は『神の一手』より少し前。地獄のような過去を持つ少年が、地獄のような特訓を経て囲碁の腕を上達させていく。目的は復讐。姉を死に追いやった大物棋士に自分以上の地獄を見せるため、クォン・サンウ演じる主人公が数々の囲碁バトルとストリートファイトの修羅場を潜り抜けていく。
分かりやすく言うと、麻雀劇画の世界プラス韓国の裏社会もの。突飛な設定ではあるものの、それをスピード感と映像の迫力で押し切ってみせる。
占い師との、自分の腕を賭けたオカルティックな囲碁対決。負けたら即、死を意味する鉄橋でも囲碁で闘う。バトルの設定も演出もケレン味たっぷり。画のパワーとしてはSF映画ばりと言ってもいい。もしくは『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(1999年)の頃の三池崇史ばり。
クォン・サンウの快&怪演を見よ! リアリティを大盛りのケレン味でなぎ倒す
クォン・サンウは地獄に生きる男を快演かつ怪演。劇中ほぼ感情を見せないのだが、描かれている過去からすればそれも納得だ。その寡黙さと短髪もあって、高倉健のような趣もある。それでいて目的のためには手段を選ばず、悪党のような行動に出ることも。
この非情さ、「でも本当はいい奴」的なエクスキューズをきっぱり捨て去ったことで、映画の魅力も増している。まさに<神>に対する<鬼>なわけだ。アクションシーンはトイレに路地裏と“狭さ”を活かした闘いで、それが凄惨さ、主人公の行き場のない生き方にマッチ。碁石を武器に使うあたりもうまい。
ダークではあるが、勢いがあって一気呵成。リアリティをなぎ倒すケレン味をたっぷり味わってほしい。
文:橋本宗洋
『鬼手』
父が自ら命を絶ち母にも捨てられた貧しい少年グィスは、最愛の姉まで失って天涯孤独の身になってしまう。そんなグィスが地獄のような現実を生き抜く唯一の術は、生前の父から伝授された囲碁だった。ある一匹狼の棋士にその才能を見込まれたグィスは、山寺での猛特訓によって類いまれな潜在力を開花させ、 心身共にたくましい大人へと成長。やがて下山し裏社会のスゴ腕棋士たちと次々と死闘を繰り広げ撃破していく。そしてついに、姉を死に追いやった冷酷な最強棋士ファン・ドギョンへの復讐を果たすため、人生のすべてをかけた最後の闘いに身を投じるのだった。
制作年: | 2019 |
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出演: |
2020年8月7日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー