本格復活の狼煙を上げたスタローンがキャリアを懸けて招集した、超豪華アクションスター大集合映画『エクスペンダブルズ』シリーズ、そしてスライことスタローンが成し遂げた偉業を、格闘ライター・橋本宗洋氏が振り返る!!
俺たちが生きた、あの時代を忘れたわけじゃない
『エクスペンダブルズ』1作目(2010年)の情報が入ってきた時の率直な気持ちは「こんな夢みたいな映画があっていいのか」だった。
シルベスター・スタローン監督&共同脚本&主演。共演はドルフ・ラングレンにジェット・リー。ナイナイ岡村風に言うなら「ジェット・リーことリー・リンチェイ」である。さらにミッキー・ロークにブルース・ウィリスにアーノルド・シュワルツェネッガーも。なんだこれは。1980年代の<ロードショー>読者(中学生男子)による“僕が考えた最高の企画”か。それじゃバカみたいだけど、でも中学生の夢はだいたい正しい。この人たちの映画を観て育った世代というのが、間違いなくいるのである。たとえば筆者とか。
スタローンは『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)と『ランボー 最後の戦場』(2008年)で、シリーズと自身のキャリアにきっちりケジメをつけた。それだけでも大変なことなのだが、スタローンは『エクスペンダブルズ』で自分の最盛期だった時代、80年代と“筋肉アクション”全体にもスポットを当てた。「あの時代を俺たちは生きた。あの時代を忘れたわけじゃない」と。
それだけでも充分すぎるくらいなのに、スタローンは“同窓会”では済ませなかった。準主役として登場するのはジェイソン・ステイサム。ランディ・クートゥアなど格闘技界からも新顔を招いた。自分たちの時代への思い入れだけでなく、次代への継承を意識しているところもスタローンの偉大さだろう。
正直に言えば雑なところも多い映画なのだが、動力源がスタローン自身、アクション映画への思いそのものなのだからケチをつける気など起きるわけがないのだった。主人公たちの役柄は「使い捨ての消耗品軍団」を自認する傭兵部隊。もちろん隊長がスタローンである。シンプル・イズ・ベスト。ストーリー上のひねりみたいなものもあるのだが、むしろそれが余計に思えてしまうくらいだ。
ぜひ『4』もお願いします!!
『エクスペンダブルズ2』(2012年)では(1作目にもオファーされていたという)ジャン=クロード・ヴァン・ダムが悪役として参加。さらに筋肉アクション界のレジェンド、チャック・ノリスも合流するという大盤振る舞い。『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年)になると、ついにメル・ギブソンが悪役である。マックス・ロカタンスキーもしくはマーティン・リッグス対スタローン。これまた夢の対決だ。ハリソン・フォードもウェズリー・スナイプスもいる。次世代枠には女子MMAファイター→プロレスラーのロンダ・ラウジー。満腹にもほどがある。
この手の映画は、何も考えずに見るのが正攻法。『エクスペンダブルズ』シリーズもそうだ。ただ、映画ファンとしての自分がスタローンたちと“同窓生”だと感じる人間にとっては、感じるものがとにかく多いのである。そしてこのシリーズについて今最も言いたいのは「『4』もよろしくお願いします」ということだ。
文:橋本宗洋
『大脱出2』は2019年3月29日(金)より公開