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いまさら聞けない!? 「A24」の基礎知識! 映画ファンが圧倒的に支持する新進気鋭の制作スタジオ

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ライター:#SYO
いまさら聞けない!? 「A24」の基礎知識! 映画ファンが圧倒的に支持する新進気鋭の制作スタジオ

A24――映画ファンの本当に観たい作品がここにある!

ここ数年、日本でも急速にファンを拡大している映画制作・配給会社「A24」(エー・トゥエンティーフォー)。

第89回アカデミー作品賞に輝いた『ムーンライト』(2016年)や、アメリカ最大の映画批評サイト<Rotten Tomatoes>で新記録を樹立した『レディ・バード』(2017年)、日本でも社会現象化した『ミッドサマー』(2019年)など、エッジーな作品を数多く世に放ってきた。

映画好きだけでなく、音楽・アート・ファッション……さまざまな分野のファンを虜にしてきたA24の魅力を、改めてご紹介する。

~会社概要~

A24が設立されたのは2012年。なんと、まだ10年も経っていない若い会社なのだ。映画業界で働いていたダニエル・カッツ、デヴィッド・フェンケル、ジョン・ホッジスの3人によって立ち上げられた同社は、2012年の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』で劇場配給をスタート。

https://www.instagram.com/p/ZqKOILky5-/

『チャールズ・スワン三世の頭ン中』は、巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の息子であるロマン・コッポラがメガホンをとったコメディで、いまやお騒がせ俳優の筆頭となったチャーリー・シーンを起用した“攻め”の1本。

その後、エル・ファニングが出演したサリー・ポッター監督作『ジンジャーの朝 ~さよなら、わたしが愛した世界』(2012年)やハーモニー・コリン監督による『スプリング・ブレイカーズ』(2012年)、ソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』(2013年)を次々と配給し、頭角を現す。

そして2015年に『ルーム』で第88回アカデミー主演女優賞、『エクス・マキナ』でアカデミー視覚効果賞、『AMY エイミー』でアカデミー長編ドキュメンタリー賞、2016年に『ムーンライト』で第89回アカデミー作品賞を受賞。その後も2018年の『へレディタリー/継承』が大ヒットを記録するなど、「品質」「受賞歴」「作家性」「興行収入」の全てで成功をおさめ、今や世界的に名の知られた企業に上り詰めた。

~作品傾向~

A24の作品群を一言で表すなら、「トガッていて面白い」だろう。他のスタジオでは到底観られなさそうな奇抜な作品がずらりと揃い、配給作品と制作作品どちらにも一貫した“攻めの姿勢”が見て取れる。

アカデミー賞に輝いた『ムーンライト』は、ブラッド・ピット率いる制作会社<プランBエンターテインメント>と共同で開発したものだが、「黒人男性の同性愛もの」という当時はなかなか敬遠されがちな題材にチャレンジ。

https://www.instagram.com/p/BPCCAePBtW-/

さらに、世界配給に打って出たのが、“便利死体”でサバイバルに繰り出すコメディ『スイス・アーミー・マン』(2016年)だった――という事実も、同社の特異性を象徴している。この題材で世界進出を図るスタジオが、他にあるだろうか?

https://www.instagram.com/p/BGVLucLky3P/

なんでも、A24のメンバーはかなり年齢層が若いらしく、“新しい面白さ”に敏感な目利きたちが集っているのだとか。確かに、ラインナップを見てみると、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の不条理劇『複製された男』(2013年)やスカーレット・ヨハンソンのヌードも話題を集めたSF『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013年)、ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』(2015年)や『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年)など、設立当初から一貫して強烈な作品ばかりが並ぶ。

~クリエイターの発掘~

A24の“攻めた”ラインナップを形成しているのが、若く才能あふれるクリエイターの発掘だ。『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』アリ・アスター監督『クリシャ』(2015年)や『イット・カムズ・アット・ナイト』(2017年)、『WAVES/ウェイブス』(2019年)のトレイ・エドワード・シュルツ監督『ウィッチ』(2015年)や『The Lighthouse(原題)』(2019年)のロバート・エガース監督らは、「A24組」と呼べる面々。『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(2018年)のボー・バーナム監督は、元YouTuberだ。

各地の映画祭などで「これぞ」と感じた若手監督をピックアップし、配給を行ったのち、新作をバックアップしてさらに育て上げていく。クオリティに関しては差し戻しもあるというが、基本的にそれぞれの創造性を信じ、全権を持たせる。このサイクルが見事にハマり、良質で異質な作品の安定した供給につながった。監督同士が仲良しというエピソードも、A24と彼らの幸福な関係を示すものだろう。

https://www.instagram.com/p/B0BT90XAN8A/

俳優の監督作も多く、『レディ・バード』はグレタ・ガーウィグ、『ディザスター・アーティスト』(2017年)はジェームズ・フランコ、2020年9月4日(金)より日本公開となる『mid90s ミッドナインティーズ』(2018年)はジョナ・ヒルがメガホンをとっている。

https://www.youtube.com/watch?v=498O4WN6mBE&feature=emb_title

~独自のブランド展開~

A24の特長はまだある。大きなものは、自社の“ブランド”をユーザーに認知させるプロモーションの多彩さだ。作品のカラーに合わせ、冒頭に映し出されるロゴを変更するのは名物で、他にもTシャツやキャップ、キャンドルやウォーターボトルなどのオリジナルグッズを発売している。

https://www.instagram.com/p/B0ENiBcAgY_/

さらに、作品の舞台となった町で野外上映を行う“聖地巡礼”プロジェクトや、新型コロナウイルスが流行した際には、真っ先にチャリティオークションを敢行。「観ると別れる」と話題になった『ミッドサマー』公開時には、カップルセラピーを無料提供。

https://www.instagram.com/p/B0O1alkAj6q/

TwitterやInstagram、ポッドキャストやTinderといったソーシャルメディアごとにプロモーションの方法を変えているのも秀逸(オンラインの宣伝に注力し、TVやオフラインをほぼ使わないのだとか)で、若い層にきっちりとリーチできているのも、A24の強みだ。とかく、マーケットのリサーチ力と企画力がずば抜けているのである。

https://www.instagram.com/p/4R5rOsky4w/

~まとめ~

駆け足で振り返ったが、A24は「これまでになかった」作品を送り出す企業でありつつ、既存の映画ビジネスに変革をもたらす存在といえるだろう。

例えるなら、「やたらいい商品ばかりを揃えている」セレクトショップのようなイメージだろうか。この店が選んで売っているものなら、面白いものだと素直に感じられる。そういった信頼をユーザーに抱かせるだけの説得力が、A24にはみなぎっているのだ。

https://www.instagram.com/p/Boe5JdSHGnP/

「まだ観たことのないものに出会える」という期待を常に更新し続けるA24。日本では先述の『mid90s ミッドナインティーズ』のほか、2020年8月7日(金)に『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』(2019年)、同10月2日(金)に『フェアウェル』(2019年)が、同10月9日(金)に『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(2019年)が公開予定。8月現在公開中の『SKIN/スキン』(2019年)『WAVES/ウェイブス』の評価も上々で、この先もA24の勢いは止みそうにない。

文:SYO

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