ナタリア・ダイアーが性の目覚めに翻弄される少女を好演!
Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年~)を見ていたので、この『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』で主演を務めるナタリア・ダイアーのことは知っていましたが、学園モノの映画が好きなので、少し邦題にたじろぎつつ鑑賞しました。原題は『Yes, God, Yes』で、実際に映画を見た印象だとニュアンス的に「はい、神様、わかります」というような、神様への懺悔の意味合いを含んだタイトルなのかなと思いました。
本作はカレン・メイン監督の半自伝的な作品で、はっきりと年齢は示されていませんが2000年前後、監督がカトリック系のハイスクールに通っていた頃の体験を基に描かれています。当時はインターネットがやっと一般家庭に普及し始めた時期でした。
16歳の主人公アリスの携帯電話はインターネットに接続できないタイプのものだったり、家にあるパソコンのディスプレイには原始的なチャット画面が出てきたりと、冒頭から2020年現在とは違ったネット事情の描写が続きます。ちなみに自分はその頃中学生で、今より情報がすぐには手に入らず、いま思い返せばわからないことが解決しづらい時代でした。
ネット黎明期の“信仰”と“性”を赤裸々に描く学園コメディ
カトリックを信仰する両親に育てられ、カトリック系の学校に通うアリスは、ほぼ無意識的なレベルで神の存在や規律というものを気にしながら生活しています。そして、授業でも淫らなものは罪という教えを受けていました。ですが、やはり思春期を迎えた学生の中での会話や、交際を始める同級生が出てきたりで、周囲も自分も自然と性について関心が向いていきます。
人に聞けないことをインターネットで気軽に調べたりもできず、また性に関心はあっても信仰が頭にあるので、現代の若者にはなかなか理解し難いであろう悩みにアリスは苛まれます。信仰と心の間で葛藤する描写はとてもリアルですが、自分はカトリックの学校に通っていたわけでもないので、ここで初めて知ることができてとても興味深かったです。
教職員ら大人たちや、ハイスクールの年長者の信仰に反する行動を見て矛盾を知り、自分の中で結論を導き出していくことで、アリスが大人に近づいていく姿が描かれます。80年代風の邦題に惑わされず多面的に見ることで、誰もがティーンエイジャーの頃に通る道をコメディタッチで描いた成長日記として楽しめると思います。
文:川辺素(ミツメ)
『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』はヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦」で2020年7月24日(金)より公開
『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』
2000年代始め、アメリカ中西部。16歳のアリスは、学校でも日常でもカトリックを真面目に信仰する女の子。ある日、パソコンでチャットをしていたら、エッチなやりとりに発展。罪悪感を抱きつつも、興味は湧くばかり。そんな自分の衝動を抑えようと教会の合宿に参加するが、そこでイケメンの年上男子と出会ったり、男女が仲良くしている様子を見るだけで変な妄想が広がってしまったりと、アリスの感情はどんどんエッチな方に向かってしまう。そして、アリスがとった行動が周りを巻き込み、大変な事態に発展していく……
制作年: | 2019 |
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監督: | |
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ヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦」で2020年7月24日(金)より公開