• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • ジェームズ・ボンドのキャラをつくりあげたショーン・コネリーに“紳士”を教え込んだテレンス・ヤング監督

ジェームズ・ボンドのキャラをつくりあげたショーン・コネリーに“紳士”を教え込んだテレンス・ヤング監督

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#イナガキシンジ
ジェームズ・ボンドのキャラをつくりあげたショーン・コネリーに“紳士”を教え込んだテレンス・ヤング監督
UNITED ARTISTS / Allstar Picture Library / Zeta Image

『007』はシリーズを重ねるたびに制作費もUP!

100万、200万、300万、900万、950万。『007』シリーズの第1作『007/ドクター・ノオ』(1962年)から5作目の『007は二度死ぬ』(1967年)までの製作費(単位ドル)の推移だ。24作目の『007/スペクター』(2015年)が約3億ドルとも言われているので、物価の上昇を鑑みても、初期の『007』シリーズの製作費はカワイイものだ。

https://www.instagram.com/p/B3Pl4oXArYx/

額は少ないが、これらの数字で注目すべきは、1作ごとに製作費がアップしていることだ。最初のうちは100万ドルずつ、4作目の『007/サンダーボール作戦』(1965年)にいたっては、前作『007/ゴールドフィンガー』(1964年)の300万ドルから900万ドルへと、3倍にも跳ね上がっている。

すべてこれは、シリーズがいかに順調に観客動員を伸ばしていったかを裏付けている。ちなみに1作目からの世界興行収入は、5956万ドル、7890万ドル、1億2490万ドル、1億4120万ドル、1億1160万ドルで、5作目の『007は二度死ぬ』ではやや前作を下回った。

https://www.instagram.com/p/B_hMZrTJmbz/

とはいえ、製作費に対しての回収率は素晴らしく、3作目の『ゴールドフィンガー』は、製作費300万ドルで1億2500万ドル近い興行収入を稼ぎ出し、その年の世界興行収入でも第1位にランクされている。次回作の製作費が、一気に3倍となったのも充分にうなずける。

https://www.instagram.com/p/BuE8DzngIIG/

この回収率の良さに味をしめたのか、初期の『007』シリーズは、4作目と5作目の間が1年半ほど空くが、ほぼ1年刻みで新作がつくられている。イギリス人作家が執筆したスパイ小説に目をつけたカナダ人とアメリカ人のプロデューサーにとっては、その後も25作目まで続く、まさに打ち出の小槌のようなシリーズとなったわけだ。

https://www.instagram.com/p/Bv4UiDSlBFF/

この『007』の人気を決定的にしたのが、初代のジェームズ・ボンド役に抜擢されたショーン・コネリーだということに、異論を挟む者はいないと思う。そして、その後も5人の俳優によって引き継がれることになるジェームズ・ボンドのキャラクターをつくりあげたのも、ショーン・コネリーだと言っても間違いではないだろう。

https://www.instagram.com/p/B1llVzugxAT/

テレンス・ヤング監督がコネリーに「紳士」を教え込む

ショーン・コネリーは、実はいわゆる「英国紳士」ではない。1930年にスコットランドのエディンバラで、アイルランド系の労働者階級の家に生まれた。トラック運転手など主に肉体労働に従事しながら、ボディビルにも勤しんでいた。そして、ミスター・ユニバースの大会で入賞したことをきっかけに役者の道に進むが、『007』シリーズに出演するまではほとんど無名の存在だった。

https://www.instagram.com/p/BpuixQLg18k/

原作者のイアン・フレミングから『007』の映画化権を譲り受けた2人のプロデューサー、ハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリは、当初、ボンド役にはケイリー・グラントや3代目ボンドとなるロジャー・ムーアなどを考えていたという。しかし、本命のグラントにはシリーズものには出ないと断られ、ムーアはテレビ出演で忙しくスケジュールが合わなかったため、労働者階級出身のスコットランド人がボンド役へと抜擢される。

https://www.instagram.com/p/Bm5T6pOgGD6/

国会議員の家に生まれ、陸軍士官学校に学び、ロイター通信や英国海軍の情報部にも勤務していた原作者のイアン・フレミングとっては、当初、この起用はあまり好ましいものではなかったようだ。

https://www.instagram.com/p/Bn6gQ2MgguC/

鍛え上げた肉体が売り物のショーン・コネリーを、洗練された英国紳士のジェームズ・ボンドに仕立て上げたのは、第1作『ドクター・ノオ』の監督でもあったテレンス・ヤングだと言われている。彼はその後、2作目の『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)と4作目の『サンダーボール作戦』も監督することになる。

https://www.instagram.com/p/CBnLSeyJQJ-/

テレンス・ヤングは、父親が英国警察長官でエリート階級の生まれ。ケンブリッジ大学を卒業後、脚本家を経て映画監督となる。ヤング監督はまだ野性味が優っていたコネリーを、自らが通う高級テイラーに連れて行きスーツをつくらせたり、一流レストランに一緒に出かけて食事のマナーやワインの嗜好などを教え込んだりしたという。

https://www.instagram.com/p/BeLc28-nGRv/

颯爽とタキシードを着こなし、ゴージャスなカジノクラブに出入りし、飲む酒にもこだわりを見せるコネリーのボンドは、この典型的な英国紳士であるヤング監督を教育係として誕生したのだ。もし1作目の監督に彼が起用されなかったら、その後の『007』シリーズはまったく違うものになっていたかもしれない。

https://www.instagram.com/p/Brp7QacApQX/

文:イナガキシンジ

『007』シリーズはCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年7月ほか放送

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook